アメリカ旅行!?いやいやいや!!
俺、賀川亮はゲームに熱中になり過ぎ1週間ぶりに文香学園に行った。そうしたらクラスでは修学旅行の話でもちきりだった。
「おう、亮久しぶり。またゲームか?」
俺の隣の席で親友の秋庭亜紗が声をかけてきた。こいつは俺に声をかけてくれる数少ない奴だ。
「おつー。まあレベル上げに毎日毎日が過ぎて行ってしまった」
俺は悪びれる事なくくふふと笑い席に着いた。
「まあ、程々にな。でだ」
「おう、修学旅行の件だな。で、どこになったんだ?」
「何と驚け。何と、アメリカになったんだ!」
「アメリカかーー……」
「ん、なんか不服そうだな」
俺の歯切れの悪い返事に亜紗が少し眉を動かす。
「あ、いや。不服……というか面倒なんだよ。パスポートとか取るのに」
「あー、まあ普通パスポートなんて持ってないわな」
「そうそれ。それにゲームしようと思ってるとどうしても変圧器必要だしWi-Fi無理だし」
「何よりゲーム機なんて持って行ったら盗まれるかもしれないわな」
「そうそれ!」
「なら行かないのか?」
亜紗の何気ない一言に考え込むでしまう。
「……行かないという選択肢があるのか。なら別に旅行に行くか。隣の県の福岡博多にしよう。よし、そうとなれば夕に声かけるか」
思い立ったら即行動。時間がないからLOneで幼馴染の那須川夕 にメッセージを送った。
「おいおいマジかよ。……まあ、僕も出来たらアメリカ行きたくないけどな〜」
「なら一緒に博多旅行に行くか?」
俺は無理だと分かっていながらも念の為亜紗に声をかけた。
「うんや。手児理姉さんが不登校だからこれ以上親に心配かけられないかな」
「おお、てこなら毎晩世話になったぞ」
「何っ!?……ってどうせゲームのフレンドでアイテム集めしてたんだよね」
「おう。いつも引きが弱いから数こなすしかないからな」
「うんうん。姉さんのことよろしくね」
「……なんか意味深に聞こえてきそうなんだが」
「気のせい気のせい」
「そうか?お、夕からの返事きた」
「なんて。まあ、亮とのやり取りなら……」
亮のLAANEには一言「行く」と書いてあった。
「……うん、まあ分かってたことだけど」
「漢なんだよな〜」
「見た目美女なのに漢なんだよねー」
「むしろ漢気があり過ぎて親衛隊がいるしな」
「あはは、そんな人と2人で旅行なんて知られると大変なことになるね」
「ほっとけ。まあ、その時は俺は実家に戻るよ」
「まあ亮の家からでもここまでそう遠くはないからね」
「おう。まあ、でも……」
「うん、もしそうすると夕も「私も寮を出る!」なんて言い出しそうだよね」
「おう、もう目に浮かぶよ」
俺がへらへら笑ってると教師が入ってきた。
「あ、ホームルーム始まるよ」
「おう」
亜紗に返答してホームルームを受けた。大まかな内容はアメリカへの修学旅行の件。1ヶ月以内にパスポート取る様に言われた。まあ俺は行かないから取らないけど。さてとホームルームが終わってからが授業だ。まあ、内容は……うん。
「普通だ……」
俺は日々勉強も部屋でしてるから既に授業受けなくても理解はしている。授業内容は自主勉の復習にしかならなかった。それでも授業を真面目に受けている態度を取りながらお昼を迎える。
「よー亮!1週間ぶりだな。よし、ご飯食べようぜ。あ、ごめんよ。ここ借りるよ」
お昼になり夕がクラスにやって来てすぐさま前の席を借りに来た。夕は身長170センチと女の子にしては長身で黒髪ロングのイケメンだ。多分俺が女の子なら惚れてたかもしれない。
「あ、はいっ!」
現に夕にホの字の前席の女子からイスを借りて机を挟んで俺の前に座った。
「さーて、今日のご飯はーー、唐揚げだー!いっただきまーす!」
「うん、何か……うん」
夕の御飯時のテンションに俺は残念な人を見た。
「ん?んなぁんだろお」
「ん、なんだよは分かるからちゃんと飲み込んでから喋ろうな夕」
俺の言葉にコクコクと頷く。うん、ちゃんと喋らなかったな。小学生の頃には食べながら喋られて俺の顔にご飯つぶが飛んだんだったなー。成長したなー。お兄ちゃんうれしい。
「なあ亮。お前時々、親が私を見る時と同じ様な目で見てる感じがするんだが……気のせいだよな」
「うんうん。気のせいだよ」
「……絶対に嘘だな」
「うんうん。気のせい気のせい」
俺はそうしながらお昼を夕と過ごした。話はもっぱら俺との博多旅行のことだ。亜紗はと言うと他の男子達と一緒にお昼を食べに行っていた。
「ごちそーさまー!さてと、ご飯も食べた事だし、最後に博多旅行の日取りを決めよう。もう2月にしちゃおう」
「うぉい!」
夕の突拍子のない決定に一応ツッコミを入れる。
「ん?だめか?2月だと寒いからスキー場以外なら閑散期のはずだし、3月だと卒業シーズンで高いぞ。それに〜……」
「そ、それになんだよ……」
「SNSでの相互フォロワーさんと会えるかもしれないんだよね?」
「ぐっ!」
俺は否定できなかった。遠くの他人より近くの知人を頼るのも大事だが、今の時代会ってみるのも悪くないと思ったからだ。何より話が合って面白い奴だからだ。因みにそいつが2月にちょっとした用事で博多にも行くことを教えてもらっていた。
「えっと、麺好きぶたさんだっけ?」
「そう。多分オタクの男子だ」
「でも会ってみたいんだよね」
「おう!話が合うのに気が合わない訳がない。それに遠くの人と友達になれるなんて面白いじゃん」
「まあ、事件にならなければ良いよね。一応私はボイスレコーダーを忍ばせておくよ」
「お、おう……って、2月に行くとかまだ決めてねーよ!」
「ん?じゃあ行かないの?私との博多旅行?」
「いや、行くけど……何か掌で踊らされてる感じがしてグググってなる」
「あはは。掌で転がされてる位が男として可愛いんだって」
「お前がそれを言うと「ぶひっ!ご主人様!」ってなる人達が多そうだな」
「あーー、そう言えば去年のクリスマス頃に「私に首輪を着けてくださいお姉様!!」って言われたわー。いや同い年やんっ!ってなったけど」
「お姉様、変な男と連まないで私たちと一緒に百合を育てましょう」
「おう亮、はつられたいのか。ならお姉様直々にはつってやろう。……そこに直れ!!小童!!」
「失礼しましたーー!!」
俺は脱兎の如くその場からトイレに逃げたのだった。そうしながらお昼を終えてクラスに戻ると机に置きメモで「じゃあ2月な。宿はこっちで取っておく。お金は後日もらうからな。 夕」とあった。おのれ夕め。もしかしたらこうなる事も想定してあんなことを言ったのかもしれないと思ってしまった。




