序章
更新のんびり、作者自身着地地点の見えていない連載ものですが、暖かく見守って頂ければと思います。
一応似たような作品がないか確認はしましたが、もしも似たような作品を見たという方がいらっしゃいましたらご一報頂ければと思います。
『貴方の名前は何ですか?』
そう書いた紙を目の前に座った男性の前に置く。今日の仕事はこれで終わり。なんて楽な仕事なんだと思われるかもしれないが、そんなことはないと力の限り否定させてもらおう。なんてったって私の所属するこの部署は官庁の中でも一番忍耐の必要な職場なのだ。
今、目の前に座っている男性をここに連れてくるのだってどれだけの時間を費やしたことか…
ゆっくりと瞬きをしている最中のこの人には瞬間移動したように感じているのだろうけど、こちらからしたら3人がかりで丸々一日使ってようやくここまで連れて来た。
しかも、だ。この人がこの紙をみて内容を理解してくれるまでに後2日はかかるだろうって予測が時刻管理寮から来たもんだからその間こちらはいつ呼び出しがかかるかと思うと気が気じゃない。紙に書かれるのを待ってたんじゃ一年なんて余裕で経ってしまう。それよりはまだ声を拾った方が早い。とはいえそれでも名前が長ければ半年は覚悟しなくちゃいけない。私の所属する迷人対策署とはそんな所だ。
そうこうしている間にも時間はどんどん進み、もうすぐ一日が終わろうとしている。もちろんそれは時計という名を持つ全ての時計においてのみ…だけれど。現に太陽はまだ昇ったばかり。黒昼が終わったと思えば今度は白夜。
「ま、明るいほうが好きだから良いけどね…それじゃ、お先に失礼しまーす!」
まだお仕事中な同僚たちにそう声をかけるとまだまだ明るい夜の中へと私は飛び出した。