第14話 夏休み前におけるお昼休みの1コマ
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「ふーん、なるほどねえ? そんなことがあったんだ」
休み明けの教室のお昼休み。
私はいつものように愛花と一緒にお弁当を食べるタイミングで昨日あったことを打ち明けた。
結月と友達になったこと。
結月は武藤を異性として見ていないこと。
そして――私が武藤を好きなことを。
「そんな面白いことになっているなら、彼氏と一緒に行けばよかった」
「いや、一緒に来られても迷惑でしょ。せめて一人で来い」
「うーん無理!」
爽やかな笑顔で愛花は言い切った。
こいつ、本当に彼氏のこと好きだな。
一回だけ会ったことあるけど、特に顔が良いわけでもないし、勉強もスポーツもできるわけでもない。
どこがそんなに好きなのだろう?
「えーと、全部?」
「全部ときましたか……」
「実際そんなもんでしょ? 本気で好きになっちゃったらさ」
「……確かにね」
私も現在絶賛経験中だから言いたいことはよくわかる。
武藤のどこが好きとかここが好きとか、そんな細かいところいちいちカウントしてられない。
彼の良いところも悪いところも、全部ひっくるめて丸ごと好きとしか言いようがない。
「………………」
チラリ――と、私の好きな人に視線を送る。
すでに食事を終えた彼は、仲の良い男女数名と会話しながら、スマホゲームで対戦をしているようだ。
「あ」
「あ」
目が合っちゃった!
嬉しいけどドキドキしてきた!
私の気持ちなんてこれっぽっちも気づいていない彼は、無邪気な微笑みを浮かべつつ近づいてくる。
「宿木さんもやる? 大谷に勧められたんだけど、結構面白いよこのゲーム」
大谷と言うのは、彼と特に仲の良いオタク系男子だった気がする。
昔の自分と同じ属性なので、どこか親近感を覚えるのよね。
「え、えーと……私は――」
「琴乃がそんなオタ臭いもんやるわけねーだろ」
「武藤、あのさぁ……誰とでも仲良くなれるのがお前のいいところだけど、相手を見て誘った方が良いっていうか……」
「お前のコミュニティに琴乃が行っても空気悪くなるだけだろ。棲み分けってもんを考えようぜ」
何だとコンニャロ!?
私がどうしようかためらっている間に横槍が入った。
袴田淳、桧山健司、岡野聡の男子カーストトップにいる陽キャ軍団だ。
女子カーストトップにいるのは私と愛花なので、自然と最も話すクラスの男子なのだが――正直言うと私は好きじゃない。
今の会話から分かる通り、他の男子を基本見下すのだ。この三人は。
見た目や趣味で他を見下し「キモい」とか、平気で心ない言葉を投げつける典型的なイキり男子。それがこいつらだ。
ただ、コミュ力だけは高いし、男子カーストトップに君臨しているのも事実なので、私の立ち位置的にも関わらない訳にもいかず、苦手だと思いつつも適度な距離感で付き合っているのだが、それが今回裏目に出た。
武藤……気を悪くしていないかな?
「えーと……誰?」
「お前、何で俺らの名前知らねえんだよ!? 同じクラスだろうが!」
「いや? 同じクラスでも普段関わらないと名前とか覚えなくない?」
「……ッ!」
あははははは!
さすが武藤! 良い気味! さすむと!
どうやら私の好きな人は、この三人のことなど眼中になかったらしい。
そうよね。
普段交流なかったら名前なんて覚えないわよね(笑)
私が心の中でそう笑っている間も、袴田たちの頭は沸騰していく。
「ごめんごめん、今度はなるべく忘れないから自己紹介もう一回いい?」
「知りたきゃ誰かに聞いておけ! ……健司、聡、行こうぜ」
「お、おう……」
この空気に耐えられなかったのか、 三人は教室を出て行った。
「あ、行っちゃったよ。宿木さん、悪いんだけどあの三人と親しそうだったから、三人の名前教えてくれない? 誰かに聞いとけって本人たちも言ってたし」
「袴田淳、桧山健司、岡野聡よ。まあ、覚えなくていいんじゃない? どうせ平常関わらないしね(笑)」
「それもそっか。ところでさっきの話に戻るけど、やる? やらない?」
「やる! やり方教えて!」
私は愛花にウインクで意志を伝え、武藤たちの輪の中に飛び込んで行った。
一緒にいる男女――特に男子の空気が私本来の空気に近いおかげですっごい落ち着く……
――キーン、コーン
――カーン、コーン
彼&彼女らと楽しく遊んでいる間に時間は過ぎてお昼休み終了。
チャイムが鳴り終わって一分も経たない間に先生が来て教壇に立った。
今日の五時間目は夏休み前の特別授業。
「はーい、席に着け。お前らお待ちかねの時間だ」
つまり――
「林間学校の班決めするぞ。男女比的にそうだな……男は三人、女は二人一組を作って男女五人の班を作れ。あぶれたやつは適当に決めるから、仲の良いもの同士で組みたければさっさと決めるんだな」
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