第10話 ライバル出現!?
読み終わったら評価ポイントをポチっていただけると励みになります。
気軽にポチっていただけたらと。
「ねえ琴乃、メチャメチャ機嫌が良さそうに見えるけど何かあったの?」
「えー、そう? やっぱ分かっちゃう?」
週明けの朝の教室。
私を見つけるなり、親友の愛花がそう尋ねた。
「もしかして武藤くんと何かあった?」
「え? あったと言えばあったし、なかったと言えばなかったかな?」
「おいどっちだよ? もったいぶらずに教えろコノヤロー。さもないと……」
「ちょっ!? 分かった! 教える! 教えるからスカートを捲ろうとするな!」
スカートを掴んだ愛花の手を必死に抑える。
「で、何があったわけ?」
「武藤と釣りをしたの」
「釣り? 運動嫌いのあんたにしては珍しいわね」
「先約に合流させてもらった形だからね。妹さんの友達と遊ぶ予定だった武藤に声かけられて、なりゆきでご一緒させてもらったって感じ」
「ほうほう」
ニヤニヤしながら愛花が相槌を打つ。
まだ何かあったんだろ? 隠さず話せと暗に言っておられる。
言うからそのニヤニヤ止めろ。何かムカつく。
「武藤と妹ちゃんの友達と一緒に釣りをして、そこでね……その……」
口籠ってしまってなかなかこの先が言えない。
昨日の釣り、思い出すだけで顔が熱くなる。
だって、告白じゃないけど武藤に好きって、初めて好きって言われた訳だし?
正確には好き「かも」だけど、好意を向けられたことには変わりないし?
「鮭が釣れてね……えーと……そこで武藤にね……」
「早く何があったか聞かせ――って鮭釣れたの!? え? え? 何で!? 川で!? ここ関東なのに!? 何かそっちも気になってきた!」
あー、うん。分かるわー。
鮭とか釣れるなんて思わないしね。
でもまあ、それはとりあえず置いといて。
「少し好きになったかもって言われたの。初めて武藤から好意を向けられたから機嫌がいいってこと。まあ、ほんの少しだけだけどね」
「へえ、良かったじゃん」
「うん、ホント良かった」
「これで雨鏡の呪いを解除できる可能性が上がったってわけだ」
「え? あ……うん! そうね!」
「おやおやぁ? もしかして琴乃サン、雨鏡のことすっかり忘れてたのかなぁ?」
「わ、忘れてないし!」
急に雨鏡のことを言われたから出てこなかっただけだし!
「べ、別に武藤のことなんてどうにも思ってないから! ただの友達だから!」
「ふーん、まあいいけどね。しかし、これは好きになるのは時間の問題かなー?」
「違うって言ってるだろ! こら待て!」
「わーっ! 琴乃が怒ったーっ!」
逃げた愛花を捕まえ梅干を決める。
「痛たたたたた! 分かった! ギブ! ギブします! もうこの件で茶化さないから!」
「次やったら脳天じゃなくて頬にやるからね! 頬骨砕く勢いでグリグリするから!」
「分かった分かった。お? 噂をすれば武藤くんじゃん」
窓の外から身を乗り出す。
愛花の言う通り、件の武藤清彦が歩いているのが見えた。
知らない美少女と一緒に。
私とは正反対の清楚系お嬢様って感じの子だ。
「愛花……あれ、誰?」
「んー? ああ、幼なじみだよ。武藤くんの。名前は天峰結月。隣のクラスの委員長やってる子」
「ふーん」
天峰結月か。
どんな子なんだろう?
すっごく仲良さそうだし、武藤くんのこと……好きだったりするのかな?
うぅ、気になる……
もし武藤のこと好きだったらどうしよう!?
強力なライバル出現だよ……
「ものすごく仲良さげだし、やっぱ武藤のこと好きなのかね?」
「そっ!? そ、そうかもね、うん! で、でもさ……幼なじみなんでしょ? 幼なじみって負けヒロインだから、私のライバルにはなりえないわよね……?」
「おいおい琴乃さんや、ここが三次元だと分かっているかね? 二次元の話をしてどうする?」
愛花の冷静なツッコミが私の胸に突き刺さった。
現実逃避をさせてくれそうにない。
「リアルの幼なじみなんて最大のライバルに決まってるでしょ。仲が悪かったり疎遠ならともかく、あの通り仲良しだからね。高校生になってまで仲の良い幼なじみとか、お互い好きになる一歩手前よ」
いつ恋人に発展してもおかしくない。
ラブラブ彼氏のいる愛花先生の容赦ない上から目線考察――私の心は激しく動揺した。
「ど、どうしよう愛花……このままじゃ武と――雨鏡が……」
「安心しなよ。二人はまだ付き合ってないんだからチャンスは充分あるって」
確かにそうだけど、秒読み始まってない?
リアルな男女の幼なじみは付き合う一歩手前ってさっき言わなかったっけ?
安心できる要素が見当たらないんだけど!?
「まあ落ち着けマイフレンド。彼氏持ちの私が直々に策を伝えようじゃありませんか」
「ホント!?」
「うむ。バーキン一回で手を打とう」
愛花のアドバイスはタダじゃなかった。
少々軽くなった財布を胸に、私は武藤を待ち構えた。
ご意見ご感想もお待ちしています。