時空間移動
この部屋で時空間移動実験が行われているのか?
研究員達を追いかけていくと彼らは廊下の突き当たりにある部屋へ入って行った。さすがに部屋の中へは入らなかったので彼らが出てくるのをドアに張り付いて待っている。しゃがんで耳をドアに当てながら声が聞こえないか耳をすました。ビクッ、後ろから肩を触られ驚いた。
「もう十分だろ。戻るぞ」
『せっかく研究室を見つけたんです。私は彼らが出てくる隙を狙って中に侵入して証拠を持ち帰ります』
「いい加減にしろ。これ以上勝手な行動は、っ」
研究員達がドアに近づいてきた。ガチャッ、開いたっ。「おーい、帰るぞ」「あ、待ってくださいよー」トコトコトコ。今だっ、研究員達が出ていく隙を狙って中へ入った。部屋の中心には大きな装置が置かれている。これで時空間移動をするんだろう。右壁はガラス張りで隣の部屋から状況が見えるようになっている。この装置のデータを複製して持ち帰ればこれ以上ない証拠になるはず。私は装置に近づいた。「待て!」っ!まさか誰かにバレて。焦って後ろを向いた。『って、森さん!いつのまにか入ったんですか』
「お前一人にして暴走されたらたまらんからな。それで、どうするつもりだ」
私は装置の電源を探しながらウロウロしている。
『この装置からデータを取るつもりなんですけど、電源が見当たらなくて、あっ、あった!』
電源マークがあるボタンを押した。
「おい待て、慎重にっ、なっ」
森さんの言葉をかき消すように突然当たりが真っ白に光った。「っっ、なに、これ」装置の方に引っ張られる感覚がして咄嗟に森さんの方へ手を伸ばした。森さんも私の方へ手を伸ばし、指が微かに触れたがすぐに離れてしまった。私は引っ張られた衝撃でその後徐々に意識が薄れていった。
「っくそっ!、、」
研究室に一人残され顔には悔しさが滲んでいた。
ザワザワザワザワ
なんだ、人の声がする。賑やかでお祭りの屋台のような感じだ。人が歩く音に砂利が擦れる音が混じっている。眩しさを感じながらゆっくり目を開けると見慣れない光景が飛び込んできた。
「っっはっ?、なんだ、これ、」
思わず唾を飲み込んだ。
歴史の教科書で見るような城下町が目の前に広がっていた。道行く人はみんな着物を着ている。状況が理解できずその場から座り込んだまま立つことができなかった。