特別捜査本部 その二
ーーーよって君たちには研究所に潜入してもらう」
「承知しました」「了解です」
私は森さんと詳しいことを探るために沢渡研究所に潜入することになった。会議でのあの説明の後、作戦を伝えられ、それぞれの持ち場が決定した。私たちの部署は頭脳というより身体能力を見込まれた人間が集まっているので当然といえば当然の配役だ。”第五特殊捜査課” それが私のいる部署だ。
『潜入は一週間後だ。それまでにコンディションを整えておけよ』
「はいっ!そうだ、森さん。今回の任務ではどの道具の使用許可が下りているんですか?」
『潜入捜査だからな、隠密系は自由に使っていいそうだ』
「ほんとですか!やったー!任務で使ってみたかったんですよね」
『遊びじゃないんだ。あまりうかれるなよ。それと今回は自衛のために銃の使用許可が出ている。ちなみにF082型だ』
「えっ、それってたしか」
『ああ、例の最新型だ』
F082型は弾丸の補充を必要としない。なんでも空気と太陽光の力を利用しているとかで弾丸は圧縮された空気のためそもそも補充する物がないんだそう。
『早めに道具の利用者登録を済ませておけよ』
「はぁーい」
砕けた返事にはぁ、先が思いやられるとため息を吐き森さんはさっさと仕事に行ってしまった。私も仕事しないと。とはいっても今日は担当任務ないんだよね。忘れないうちに利用者登録(登録した人しか道具は使用できないよう設定されている)を済ませよう。
ーーーー第二会議室。
ほとんどが出払って指揮官と副指揮官、そして研究者らしき男のみが残っている。
「本当に彼女を捜査に加えて良かったんですか?この任務は新人には荷が重いでしょう」
副指揮官は指揮官の方を見た。だが解答は別のところから返ってきた。
『むしろ彼女以上に適任はいませんよ』
不敵な笑みをこぼし白衣を揺らした。
ーーーー「…よっし、登録完了!」
やること終わったし部署に戻って誰かの手伝いでもしようかな。
『なっちゃん!』
この声は、、
「美咲さんっ!なんでここに」
この人は精神科医の山村美咲さんだ。
『定期検診みたいなものよ。職業柄精神を病んじゃう人も多いから導入されたみたいよ。まだ試験的なものだけどね』
「そうなんですね、お疲れ様です」
『ふふありがとう。それより最近はどう?』
実は私には幼い頃の記憶がない。そのせいかたまに断片的な映像が脳内に流れるが、その時、激しい頭痛に見舞われるのだ。
「最近は全然ですね。きっと仕事で脳もそれどころじゃないですよ」
『そうなの、無理はしないでね。何かあったらすぐ受診するのよ!じゃあ私はそろそろ行くわね』
美咲さんを見送った後、部署に行くと桐谷さんがいたのでしばらく手伝った後帰路についた。
ーーー「っはぁーー、つっかれたぁ」
一日の終わりにベットにダイブしながら昔のことを考えた。私ってなんで記憶がないんだろう。記憶がない理由まで綺麗さっぱり忘れているため思い出す糸口さえ掴めない。まぁそのうち思い出すよね、、、
ーーー1週間後。
とうとうこの日が来た。私と森さんは指定の制服に身を包み準備を整えている。
「準備できたか?」
私は腰に装備した銃をチラと見て軽く深呼吸した後、緊張を抑えながら『はいっ』と勢いよく返した。
「よしっ、行くぞ」
ーー道中私達は最終確認を行なった。
「今日の任務は奴らの普段の行動を確認することだ。それを元にこれからの動きを決める。不確定要素が多いから今日はあまり踏み込まず、慎重にいくぞ。潜入方法はわかっているよな?」
『基本、姿は同化させておき行動して入り口では研究所の人間が入る隙を狙って一緒に行けばいいんですよね』※同化…周りと同化し姿を消す。≒透明化
「そうだ、一様確認だが同化の操作方法はわかるよな」
『はいっ、研修でも散々やったしバッチリですよ』
言いながら同化用の装置を取り出した。
『モクテキチニトウチャク。ニンムヲスイコウセヨ』
車が止まり到着を知らせた。
「行くか。同化させておけ」
私は車と自分の姿を同化させ研究所へ向かった。(同化していても専用のコンタクト型機を付けていれば目視できる。二人は装着済み)
予定通り建物内に入ることができた。私達は事前に入手していたマップを元に探索を開始した。一通り回り終わったら
『こんなものだろう。戻るぞ』と腕時計にメッセージが届いた。それを見て踵を返し来た道を戻る。
「っはは、それでさー」人の気配に気づき動きを止めた。声は徐々に大きくなっていく。
「そうそう、、、た、でな、、から、、今日も、、有人機、、験するってよ」
有人機実験っ!聞こえた言葉に驚く。こいつらを追いかければ決定的な証拠が得られるかもしれない。これはチャンスだ。次の時こんな機会が訪れるとは限らない。どこかへ向かい遠のいていく研究員たちを追いかけようとする。
「待て、忘れたのか。今回は下調べのみだ。勝手な行動は慎め」
小声だが森さんの声は怒気を含みかなりの圧だった。
『だけどっ、こんなチャンスもう来ないかもしれない!早く証拠を掴んで実験を止めれるならその方がいいに決まってます』
私は制止を振り切り彼らを追った。「っんの馬鹿!」森さんの声が静かに響いた。