使用人の話
この家のお嬢様、「アレ」とか「コレ」とか言う人がいるけど、雇い主の娘なんだから、お嬢様と呼ばせてもらう。
最低限の礼儀は守らなねば。
この家ではお嬢様のお世話係に選ばれるのは最悪だ。
仕事は、部屋の掃除と着替えと食事の配膳だ。
我儘とか意地が悪いとかの問題では無い。
お嬢様と居ると、気が滅入る。
お嬢様には「魔力」が無いこれはこの国の貴族にしたら致命的だ。
「宝玉」に「魔力」を捧げ、この国を守る事が出来ない。
なので、大抵は平民に養子に出してしまうらしい「平民」は低魔力か魔力無いのが多いから、同じ境遇なのが良いだろう。
だが、病弱だった為に離れで療養というより軟禁していると聞いて居る。
出入りして居るのは世話係に選ばれたものと、御曹司だけだ。
御曹司は、お嬢様を鍛えようと、走らせたり、体操をやらせようとしたりと色々やられては居るが、効果は無い様だ。
大量の食事を食べさせようともしたが食べきれず大半を下げ渡しもせず捨てた。
勉強をさせようと大量の本を持ち込んでおられたが読みきれなかった様だ。
お嬢様を何とかしようとして居るのは御曹司だけだ。
お嬢様は、何もしないし、何も出来ない、体を動かすのも億劫そうなのだ。
着替えさせたときも腕を動かすのも難しそうだった。
一日中椅子に座ってぼっと外を見て居る。
たまに庭に出て居ることも有るが御曹司に連れ戻される。
一度医者に診せてみればと進言したが
「こんなのは怠けて居るだけだ!どうとでもなる」と聞き入れてもらえなかった。
お嬢様は「申し訳ございません」「私は無能です」と言うばかり
暗い顔でこんなこと言われ続ければ気が滅入る。
世話するもののやる気も萎える
心なしか周囲の草木も枯れて居る。
部屋は毎日掃除はして居るが、埃が取れず部屋が暗い。
お世話が続かないのが分かる。
本人にやる気がなければ何にもならないと思う。
「魔力」が無いと言うことでこんなになるものなのか?
平民たちは呑気にへらへら生きて居るし、
あのお嬢様の暗い血の瞳に埃みたいな髪とか見て居ると気が滅入る。
あの連れて来られた聖女様が何とかしてくれると良いが。