25話 恵
恵は、中学2年生だった。
恵は、お母さんの養育困難で児相に保護された。
母は、施設に入所することを拒んだ。
母は、精神的に不安定で、仕事も出来ない…
児相は、生活保護を受けるように言ったが…
それも母は拒んだ。
恵は、水道も止められ…
トイレも…公園で行ったり
公園の水を飲んでいたほど…困窮していたそうだ…
児相も、そんな生活に恵を戻すわけにいかなかった。
だから、児童福祉法の28条の審判が進められていた。
それが成立すると…施設に入所措置をとることが出来る。
恵が施設で最初にご飯を食べた時に…
「ご飯が美味しい…こんなに美味しいご飯が毎日食べられるなんて…嬉しいです」
そう、言ったことが忘れられない…
母は、離婚後…
精神的に不安定になり…こうなったようだ。
恵には、兄がいたが…
兄は、そんな母に嫌気がさして家を出ていた。
恵は、学校にも行ってなかったらしく…
友達付き合いが苦手だった。
恵が来るまえに、詩が来ていたから
詩が恵と仲良くしてくれた。
学校も苦手だったけど、恵は頑張って学校に行った。
恵は、母に会いたいといつも言っていた。
恵は、母が大好きで…
いつも、ここを出たらお母さんの手助けをしたいと言っていた。
お母さんとは、会えないけど…
母からFAXが来るようになって…
児相を通じて、手紙を送ってもいいということになっていた。
だから恵は…
母に、生活保護を受けて欲しいと手紙を書いた…
手紙を出した後で、そう、書いてしまったことを…心配していた。
「困ったことがあったらいつでも話しにおいでね」
そう、言ったら恵は…
「先生、人気だから…いつも忙しそうで…」
「それでも、聞くから言って来てね」
そう、言ったのだけど…
もっと…
注意すべきだった…
私には、後悔しかない…
恵は、自ら命を絶った…
それを見つけたのは、私だ…
恵は、母に会えないこと…
友達や先輩とうまく付き合えないこと…
悩んでいたのに…
いまだに、もっとこうしていたら…と思う。
恵と一緒に通院や児相に行った時に色々な話をした。
「免許を取って、お母さんの役に立ちたい…」
そう言って笑っていた笑顔は、すごく可愛かった。
私が、勤務中の夜中にお風呂に入って
部屋でドライヤーをしていると言ったら
「えー!先生、夜中にドライヤーしてるんですね。全然知らなかった…先生の知らない一面が分かって嬉しい…」
そんなことさえ、喜んでくれて…
二人で泣きながら話したこともあったね…
あの日、声を掛けていたら何か変わっていたかもしれない。
本当にごめんね…
もっと、話を聞いてあげていたら…
もっと私から細目に声を掛けていたら…
どんなに後悔したって…
あなたは、戻ってこない…
恵が、学校でもホームでも頑張っていたこと
知っているよ。
頑張ることに疲れた恵は
楽になれたのかな…
それでも、生きて欲しかった
そう思っているのは…私だけじゃない…
母は、どうしているのか…
恵がどんなに母を想っていたのか…
体育祭で頑張ってたこと…
話したかったけど、それは叶わなかった。
恵も、愛されたかっただけだ…
ただ、お母さんと暮らしたくて…
お母さんに愛されたくて…
頑張っていただけなのに…
恵の笑顔も、あの日の恵の顔も…
私は、絶対に忘れないからね…




