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24話 愛

(あい)は、小学4年生だった。


愛は、お母さんの入院で、父が面倒を見られないと…

母が、入院している間だけ施設に来ることになった。


愛が、来る日は私は夜勤明けで…

準備に追われた。


部屋の掃除をして…

布団を出して…シーツを掛けて…

手拭きタオルに名前の刺繍をして…

コップを用意して…

体操服を用意…


愛の出迎えをして…

児相の人の話を聞いて…


初めて会った愛は、顔が隠れるほど…前髪を伸ばしていた。

何を話し掛けても、うなずくだけ…

そんな子だった。


部屋に案内して…

荷物を全部出して…

写真を撮っておく。

これは、帰る時に物が無いとかのトラブルにならないためだ。

そして、刃物やルールで持っておくことが出来ない物があれば職員の部屋で預かる。


記録のために、本人の写真も撮っておく。


愛も、低学年のホームの空きがないから

高学年のホームに来た。


その日は、夜勤明けだったから

夜勤で入った同僚にお願いして帰った。


そして、翌日

夜勤で入って、引継ぎを聞くと…

全然、喋らないと言う。


愛は、大きな子達が怖くて…私の後ろを着いてまわった。

少しずつ話をするけど…

ほんとに一言…


大きな子たちは


「あの子、暗い…」


と口々に言った…


学校でも、ほとんど喋らないと聞いた。


愛の髪が目にかかるからと注意されたから

同僚に前髪を切って貰った。


そうしたら、目が見えて…


「可愛いじゃん!愛ちゃん、この方がいいよ」


そう言うと、愛は照れながら微笑んだ…


本当に、少しずつ打ち解けていって…

全然、外にも出なかった愛が低学年の子と遊びに行くようになった。


愛は…


「家に帰りたくない…お父さんが怖い…お母さんが怖い…」


そう、話すようになった。


それで、児相の人に来て貰い、愛と話をして貰った。


児相の人の話だと…虐待の傾向は見られないと…


愛は、それでも帰りたくない…

ここにいたいと言った…

ショートの子で、そんなことを言う子は珍しい…

みんな、いつ帰れるのかと、そればかり聞くのに…



それからも、児相の人が来て話をしたけど…

なぜ、愛が帰りたくないと言うのか分からなかった。


少しして、愛のお母さんが退院した。


児相は、これからも両親と愛の話を聞いていくけど

とりあえずは、児相に戻るということになった。


愛が、帰る前日に…

低学年の愛と仲良くしていた子たちが

愛に手紙をくれた。


愛は、その子たちに一生懸命返事を書いた。


「先生、これ渡しておいてね」


「うん、分かった。元気でね。ちゃんと言いたいことは言うんだよ」


「うん」


愛は、みんなが学校に行っている間に

児相の人が迎えにに来て…

帰っていった。


それから、少しして…

児相の人から、愛は家に帰ったと聞いた。


愛は、笑顔が可愛い子だった。

全然、喋らなかった愛が、冗談も言うようになって…

明るくなった。


私の事は、もう忘れてしまっているかもしれないけど…


元気でいてくれるといいな…


どうか、愛が両親の元で…

明るく生きていてくれますように…



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