11話 詩
詩は、中学2年生…
詩は、私が入ってすぐの4月に施設に来た。
初めての新しい子で…どうしていいか分からなかったけど…
私は、詩と共に成長した。
詩は、母が離婚後…育児放棄で、ご飯を食べさせてもらえず
4歳下の妹と一緒にスーパーに助けを求めて
保護された後に、施設に来た。
姉がいるが、姉は家に残った。
詩は、離婚後引っ越してから学校に行ったものの
馴染めずに不登校になっていた。
施設では、併設の学校に行かなければいけない規則になっている。
詩は、嫌だったけど…行くしかなかった。
詩は、緊張すると吃音が出る。
それをすごく気にしていた。
最初は、私と話をするのも吃音が出ていたけど…
慣れてくると…吃音があまり出なくなっていった。
施設は、先輩が怖くて…
少しのことでも、文句を言われたりする。
昔は、もっと酷かったらしく…
隠れて暴力もあったらしい。
最近の子は、そこまでのことはしないけど…
つるんで文句を言ったりする。
そんな生活に怯えながら…
新しい友達が出来たりして…
少しずつ馴染んでいった。
詩は、よく愚痴を言いに職員の部屋にやって来た。
それでも、詩は機嫌が悪いと…
少しのことでも怒って…
「くそババア」
と捨て台詞をはいて去っていくこともあった。
それでも、次に会った時に
「おはよう」とか「お帰り」
と話し掛けると…
何もなかったように話し掛けてくれた。
本当は、怒らなければいけない立場なんだけど…
私には、それは出来なかった…
詩が、家にある本を送ってと母に言って欲しいと言ったから
児相に連絡をして、頼んでみたけど…
「あの家の中から、探しだすのは無理だと思います。家の中はすごい状態なんで…」
そう、言われた。
その言葉で、なんとなく分かった…
家では、何匹も猫がいるらしく…
詩も、猫のことは心配していた。
児相は、離婚した父に連絡をして父に親権者にならないかと
持ちかけ…父は、裁判をして親権を父が取った。
それから、父との交流が始まった。
電話から始まり、外出…
そのうちに帰省をして、父の元に戻る予定だった。
でも…
父が、自〇したと…児相から連絡が入った…
父は、家の中が汚いから綺麗にしてから帰省させるようにしたいと言っていたのに…
父の家は、父が頼んだ業者によって綺麗にされていた。
父が、迷惑をかけないようにと頼んだ…
詩と妹は、すぐ葬儀場に駆け付けた…
母と祖父が葬儀を手配していて…
そこで、母と姉、祖父に久しぶりに再会をした。
ショックを受けた子ども達のために
母は数日間、母の元に泊まらせて欲しいと申し出た。
児相は、それを許可した。
それから、母の元に帰省が認められるようになった。
詩は、帰省はいいけど、母の所には絶対に戻りたくないと言っていた。
詩は、高校受験の時に吃音が出ないかと心配していたけど…
中学校が配慮してくれた…
それでも、詩は面接の練習を頑張り…
無事に公立高校に合格した。
そして、高校入学と同時に、高校生のホームに移った。
後の詩は、ホームの先生と合わずに…
児相に訴えて…
里親さんの所に移ったと聞いた。
施設より、気が楽で…楽しいと言っていたと…
詩とは、高校入学の説明会に一緒に行った。
その時に、先生で良かったと言ってくれた…
そして、ホームを移る前に詩は、手紙をくれた…
涙が出るほど…嬉しい言葉が沢山ある手紙だった。
もうすぐ、卒業…
進路は、どうするのか分からないけど…
どうか、詩が母の元に戻らなくても自立して生きていけますように…