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10話 咲

(さき)は、出会った時中学2年生だった。

私が、ホームに配属された日に

初めて手紙をくれた…そんな可愛い子だった。


咲は、父子家庭で小学生の弟がいる。

父が、弟に虐待をしていたから施設に来た。

父は、咲を溺愛していた。

でも、弟には発達障害があり育てにくかったようだ。

はっきり言って咲は、施設に来なくても良かったような気がするけど

児相は2人を保護した。


施設では、週に1回10分間だけ電話ができる。

私が入った頃は、咲の家は児相から電話をすることしか許可が下りてなかった。

父は、咲には絶対に電話をしてくる。

そして、10分間きっちり電話をする。

10分以上話そうとする父に、咲は電話を切らせようと必死だった。

でも、弟のホームには電話を掛けない…


そのうち、父と外出の許可が下りてからは

月に一回会いに行っていたのだけど…

感染症が流行った頃に、外出も制限された。

その時に、父はすごい剣幕で怒った。

それをなだめるのが大変だったけど…

ひたす謝るしかない。

父は、刺青も入った人で文句も半端ない人だったけど…

色々、話をしているうちに穏やかに話してくれるようになった。


咲は、職員の言うこともちゃんと聞いてくれる子だった。

ただ、小さい頃から母がいなくなり…

新しいお母さんが来ても、仲良くなれなくて

寂しい思いをしていたからか…

かまって欲しかったのだろう。


リストカットが癖になっていた。

施設では、ハサミやカッターは職員が預かって自分では持てない。

リストカットをしては、私に見せる。


どうやってやったのかと聞くと…


「折れた定規を使ってやった」


と笑顔で言う。


咲は、1歳上の(みお)と仲が良くて、2人揃ってリストカットをしていた。


なぜ、リストカットをするのか?

と聞いたことがある。

咲は、「スッキリするから」と答えた。

それで、スッキリしたのかと聞くと…


「スッキリしなかった…でもなんか落ち着く…」


咲は、そう言った。


眠れず、心療内科に通って睡眠薬を貰っても

眠れないと言っていた咲…

周りの友達によれば、よく寝てると…


咲は、みんなから嫌われている子からも好かれていた。

本当は、触られるのが嫌いなのに

その子は、腕を組んで来たり、手を繋いでくる

それが、本当はすごく嫌だったのに

それを言えない子だった。


それで、よく愚痴をきいた。


父が、うるさく児相に訴えて…

家庭訪問を経て、外泊も出来るようになった。

その時は、当然弟も一緒に帰る。

咲も、すごく喜んだ。


咲は、高校を決める時に迷わず…

工業高校を選んだ。

理由を聞くと…

父が、工業系の仕事だから

いつか一緒に仕事がしたいと…


咲は、推薦入試で工業高校に受かった。

高校は、男子が多いから

咲は、すぐ彼氏が出来たようだ。

お父さんに言ったら怒るだろうからと


「先生、内緒ね」


可愛く…そう言っていた咲も…

来年3月、卒業だ。


資格を取るために、頑張って勉強していたから

沢山の資格を取って…

就職できるだろう。


咲は、ずっと父のもとに帰りたかった…

弟は、まだ帰るのは無理かもしれないけど…

咲は、高校を卒業したら帰れる…


咲は、父が大好きだ。

でも、父のもとに帰っても…

父に縛られずに…生活できますように…



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