表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/61

8.いや待って。なんでそうなるんですか??


 高校生の頃、所謂陽キャと呼ばれる分類に値する、同級生男子に話しかけられたことがある。


「ねえ、いつも何を見てるの?」


 多分、興味本位だったのだろう。彼は学年カーストで言うとトップに君臨する人。私は最下層に分類されるぼっちのオタク。そんな真逆な奴が、授業の合間に何を見ているのか気になったのだと思う。

 ひょいとスマホをのぞき込まれ、その時たまたまナイトライブを開いていた私は、そのまま固まった。

 その男子はナイライの画面を見たあと、苦笑いをして「へえ」と一言だけ言って去っていった。その顔は明らかに「変なの」と言っていた。

 そうやって引くくらいなら、おかしいと思うなら興味なんて持たないで欲しかった。だけど、そんなことを言えるはずもなく、一人で落ち込んだ。私が見ていたせいでナイライがバカにされた気がして、悲しかった。


 更に悲劇は続いた。私は彼に話しかけられたあと、何故かキラキラ系女子に囲まれた。「さっきさあ、──くんと話してたでしょ」。

 いや知らない。私は話しかけられて、勝手にスマホを見られて、何故か引かれて去っていかれただけだ。なんなら一言も発していない。

 なのに何故か僻まれて、ぼっちが更にぼっちになった。それは別にいいのだけれど、二次災害が過ぎた。

 何もしていないのに、ただ教室の隅で一人で誰にも迷惑をかけずにオタクをしていただけなのに、何でそんな風に言われなければいけなかったのか、わからなかった。


 それ以来、私は陽キャと呼ばれそうな人との接触を避けてきた。できるだけ穏便に、誤解されないように。静かにオタクが出来ればなんだって良かった。一人だって問題なかった。


 だから、三好さんにはあんまり関わって欲しくない。職場での同シフトの先輩後輩という仕事上の関係だけで、仕事以外の話はしなくてもいい。

 特にナイライの話はしないで欲しいと思った。何故か興味を持ち出しているけれど、多分今は知らない世界に興味があるだけで、すぐに興味をなくして去っていく。引きつった顔で、「へえ」とか言いながら。


 そう思っていたのに。


「おはよう、影原さん。ナイトライブインストールしたんだけど、これチュートリアルで応援したい人を選べって言われたんだけど、どの人選ぶのが正解とかあるの?」


 ・・・・・・。


「はい?」


 関わらない方がいい人だ、と認識した二日後。一日の休みを挟んで出勤した私の目の前には、ナイライのチュートリアル画面を見せてくる三好さんの姿があった。


「なんかこういうのって正解がありそうでさー二日前の夜にインストールしてから悩んでて。ネットで調べてみたら好きな見た目の人って書いてあったから選ぼうと思ったけど、皆ビジュアルいいからさらに悩んで。影原さんに聞くのがいいんだろうって思ったんだけど昨日休みだったから、二日間このまんまになってんの」

「いやいやいや待ってください」


 三好さんが画面を見ながら説明をしてくれるけれど、脳が追いついていない。ナイライをインストールした? 三好さんが?


 Why?!!?


「影原さんが太鼓のゲーム好きなら好きだと思うって言ってたからさー俺あれ好きなの。だからやってみようと思って」


 疑問をぶつけると、そんな返答が返ってきた。私がテンパったまま出したよくわからない説明を、三好さんは真に受けてくれたらしい。え、嘘でしょ。


「ね、どれがいいの? この間影原さんが見てたのはこの白い髪の、確かヴァイスさんだったよね。この人タップしていいの?」

「え、ええ・・・・・・!?」


 わからない。初めての経験すぎてわからない。助けてルイさん。なんかうっかり布教できてしまっていた時はどうしたらいいんですか!?


「え、と、好きな人で、いいです」

「そうなの? じゃあ、とりあえずヴァイスさんにしておこ。やっと進んだー!」


 そう言ってヴァイス様をタップした三好さんは、楽しそうに笑った。いや待って何でそうなるんですか? 私ナイライの名前以外の情報何も話してないですよね??


「これからも分からないことがあったら教えてね」


 なのに何故かナイライをインストールして、しかも何やら楽しそうに「俺ソシャゲとか初めてだからいっぱい聞くだろうからよろしく」と言う三好さんがそこにはいた。


 意味が本当にわからない。だけど、昔話しかけてきた、名前ももう思い出せないあの陽キャ男子の顔とは違った。


 ・・・・・・少しだけ。


「わ、かりました。あの、それ以上進むと、ムービーが始まっちゃ・・・・・・」

「うわっ!? ほんとだ! どうしよう出勤時間!!」

「アプリ閉じてください!」

「おっけー! うわー、焦った」

「すみません、言うのが、遅くなって」

「全然いいよ。ていうか影原さんがいてくれなかったらこのまま遅刻する所だった!」


 そう笑う三好さんとなら、少しだけなら、話してみてもいいのかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ