7.落ち込んだ時はオタクするのが1番です。
それにしたって。
働き始めてから二時間後、休憩いただきます、と三好さんに声をかけて事務所に入ってすぐに、ぽつりと思う。
なんで私は上手く立ち回れないんだろう。夕方のお客様相手にだって、怯えたり混乱したりせずに気丈に振る舞えば三好さんの手を煩わせることだって無かったはずだ。
そう分かっているのに、どうにも言葉が出なくなってしまう。普段から上手く出ない声が更にでなくなって、余計に相手を怒らせてしまう。
この性格を何とかしたくて明らかに向いていない接客業を選んだのに、成果ゼロどころか退化していってる気がする。これじゃあただのお荷物だ。うう。そもそも・・・・・・。
はああああとため息を吐きながら机に突っ伏す。一人反省会の始まりだ。こうなってしまうと、私は三つの行動しか出来なくなる。
一つ目は、このまま延々と一人反省会をし続ける。
二つ目、ルイさんに話しかける。話始めると止まらなくなるからバイト中は却下だ。
そして、三つ目。
少しだけ机から顔を上げ、机の横にかけてあるバッグに手を伸ばす。なんとか手に取れたスマホの画面を点灯させ、ヴァイス様の誕生日でロックを外し、一番押しやすい位置に設定してあるアプリを押す。
『ナイトライブ』
という声と共にアプリが起動される。
あ、この声はグリュンさんだ、と声当てゲームをしながら完全起動を待つこと数秒。
出てきたスタートボタンを押すと、ホーム画面に設定したヴァイス様が目に飛び込んできた。
『来るの遅かったね。忙しかった?』
ヴァ、ヴァイス様ああああ!!
聞きなれた恒常ボイスなのにテンションが上がる。見慣れた去年の誕生日のカード絵なのに和服が似合いすぎて麗しすぎて拝みたくなる。崇拝。
綺麗なLive2Dのヴァイス様の繊細な動きに心が動かされる。ドッキドキが止まらない♪という初期の頃のドゥンケルの曲が頭の中で流れる。ドッキドキっていうか動悸が止まらない。
ただアプリを起動させただけなのに、先程まで地獄にいたテンションが一気に天国を突き抜けて神世界に到達した。
やっぱり落ち込んだ時こそオタクだよね〜! と再認識してニマニマしてしまう。三好さんがここで事務所に来たら完全アウトのやつだ。でもそれよりオタ活がしたい!
「ヴァイス様・・・・・・」
本日も貴方様のお陰で私の心と体の健康が守られています。




