49.終わり良ければ全て良し、です!
なんとかルイさんの誤解を解いた私は、駅前をルイさんと並んで歩いていた。少し後ろの方を三好さんがついてきている。
「せっかく会えたんでしょ? 俺はこれから影原さんといくらでも現実で一緒にいられるんだし、2人でゆっくり話しなよ」
そう言ってくれた三好さんに「マウントか!」と突っかかったルイさんをなんとか宥め、今に至る。
「ルイさん、色々とありがとね」
「いや、ありがとうはこっちのセリフだ。ユウは色々とあって辛かったかもしれないが、こういう機会だからこそ、ぼくはこうして外に出られたんだ」
「ルイさん・・・・・・」
「1度出られたんだ。またこれからも出られる気がするよ」
「そっか・・・・・・でもまあ、ゆっくりね」
「ああ、ゆっくり」
駅前にたどり着き、ルイさんが足を止める。そして私を見て、手を差し出した。
「そういえば、まだ名乗ってなかったな」
「え?」
「ぼくの名前は、大類 望月。また、会えたら嬉しい」
まさかルイさんの本名を知れるなんて思っていなかったので、ビックリして一瞬固まって、すぐに気がついて「あのっ」と言った。
「影原 優依、です。私もまた会えたら、嬉しいな」
「ユウって名前、どこから来てんだ?」
「優依のゆが優しいだから、それを訓読みにして・・・・・・」
「なるほど。ピッタリな名前だな」
うんうんと頷くルイさんに、少し照れてしまう。・・・・・・ん? そういえば。
「あの、大類って言った・・・・・・?」
「ああ、苗字か? そうだけど」
「大類・・・・・・どこかで・・・・・・」
少し変わった苗字だ。どこかで見かけただけかもしれないけど、それより何かで聞いたような・・・・・・というか、同じように名乗・・・・・・。
「えっ、いやまさか・・・・・・」
「ん、何?」
「弟さん、大学生って言ってたよね?」
「そうだけど」
「違ったらごめんなんだけど・・・・・・」
いやいやまさかそんな、と思いながらその推測を口に出してみる。
「弟さん、朔夜って名前じゃ・・・・・・」
「え、なんで知ってんの?」
そのまさか、だった。
「わ、」
「わ?」
「私の友達で・・・・・・」
「は?」
ルイさんも訳が分からないという顔をしている。そりゃそうだ。そんな縁があるなんて思いもしない。私だって信じられない。
「前に友達できたって言ったでしょ? そのうちの1人なの、さっくん・・・・・・」
「よく仲良くなれたね、あの子と。無口じゃない?」
「同担だし、同い年だし、他にも二人女の子がいるんだけど二人とさっくん仲良いから、その流れで・・・・・・それに、ヴァイス様のことになると結構喋るよ、さっくん」
「へえ、そうなのか・・・・・・その女の子って、柚子ちゃん?」
「そう」
「っっはー! 世間って狭いなー!!」
本当にそうだ。さっくんとルイさんが姉弟だなんて、そんなことあるんだ。事実は二次創作よりも奇なり。
「それじゃあ、ぼくはこの辺で。弟共々これからもよろしく」
「本当に送っていかなくていいの?」
「大丈夫だ。近いし、来たなら帰れるだろ。また遊ぼうな」
「うん。気をつけて」
「んで、そこのお前」
ルイさんは三好さんを指さしで指名した。
「ユウを泣かせたら、ぼくがすっ飛んでいくからな。ぼくの弟もいるから、重々気をつけるように。嫉妬したりすんなよ」
「わかってるよ。心配ないから安心して帰って大丈夫だ」
そう返事をしながら、三好さんが私の横に立ち、私の肩を軽く抱いた。
「もう嫉妬はし終えてるし?」
「え、ええ?!」
「・・・・・・なるほど。前にユウが言ってたお前の異変は嫉妬が原因だったのか」
「おかしかったの、バレてたんだ」
あらーと三好さんが頭を搔く。ええ、本当にそうだったの!? 意外すぎる真相なんですけど!?!?
「女の子だけだと思ってたから、焦っちゃったんだよな」
「まあ、そんなところだろうとは思ってたけどな。ユウ、良かったな」
「なんて言ったらいいのかワカリマセン・・・・・・」
「ははは。じゃあ、ユウ。また話そうな」
「うん・・・・・・またね・・・・・・」
こうして、私がキャパオーバーしたまま、ルイさんとの邂逅は終わった。とてもダサい終わり方だ。でもこれが最後じゃない。また会えるのがとても楽しみだ。
「影原さん」
横から声をかけられて、隣を見る。三好さんは目を細めて、少し意地悪そうに笑って言った。
「そういえば、告白の返事聞いてないんだけど」
「えっ、あっ、返事・・・・・・」
忘れてた。ていうか、もうわかってるものだとばかり思っていた。い、言わなきゃダメかな・・・・・・。
「ちゃんと言葉にして」
「ううう・・・・・・」
「ね?」
もう結果はわかりきっているのに、心臓がバクバクする。推しガチャの前でもこんなにドキドキしたりしないし、指先も震えない。
ああ、恋って本当に、新鮮なことばかりだ。
「わ、私も・・・・・・三好、さんが、す、好きで、す」
「付き合ってくれる?」
「は、はい・・・・・・」
そう頷くと、三好さんは「すげー嬉しい」と笑った。私なんかの言葉でそんなに喜んでくれるなんて。ううう、好き・・・・・・。
「あの、」
「ん?」
「逆に、私なんかでいいんですか?」
おずおずと尋ねると、三好さんに「こら」と怒られた。なんで。
「俺の大切な人を“なんか”って言わないでくれる?」
「・・・・・・!!」
ああ、やり返された。三好さんはニンマリと満足そうに笑っている。ああもう、11月ってこんなに暑かったっけ。
「ていうか、影原さんが気づいてないだけで、影原さんは凄く魅力がある人だよ。もっと自信もって」
「あ、あります・・・・・・?」
「あるよ。変わろうと一生懸命頑張るところとか、不器用だけど一生懸命にやろうとしてるところとか、言葉をきちんと選んで話そうとしてるところとか、それに・・・・・・」
ちょ、ちょちょちょ!?
「も、もういいです! もう十分です!! ありがとうございました!!」
突然の褒め倒しに、慌ててストップをかける。危ない、もう少しで倒れるところだった。攻撃力凄い・・・・・・。
「そう? ならいいけど・・・・・・」
そんな私を見下ろしながら、三好さんは口角を上げて笑った。あ、これは嫌な予感。
「言い忘れてた。いつもの格好もいいけど、今日の格好凄く似合ってる」
リア充、爆発しろという言葉があるけれど、リア充、爆発しそう。今すぐ爆散しそう。ていうか爆発四散してしまいたい!!
「可愛いね」
「もう勘弁してくださいいい!!」
「あっ、影原さん! 逃げないで!!?」
不肖、影原優依。人生で初めての彼氏が出来ました。
心臓が、心臓がいくつあってももちそうにもありません!!




