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48.本音です。②


「三好さんに言ったことも、本音じゃないと思います。許してください」

「・・・・・・いや、あの人が言ってることは正しい。俺は最低なクズ野ろ」

「それは、違います!」


 三好さんの言葉を遮り、ほとんど叫ぶように言った。違う。三好さんは最低でもクズでもない。私は。


「私は、貴方をとても素敵な人だと、思ってます。最低なクズ野郎なんて、とんでもないです。そんなこと、言わないでください」

「影原さん・・・・・・」

「三好さん。貴方が、何を思って私と接してくれていたのかは、知りません。自己満足であったとしても構いません」

「いや、でも・・・・・・」

「三好さんが何を思っていたとしても、何が目的であったとしても、私には関係ありません」


 昔の自分に重ねてただけ? 昔の自分を助けた気持ちになってただけ? それも、大切なことなのかもしれない。三好さんにとってはそれが大切なことなのかもしれない。

 でも、私にとってはもっと大切なものがある。


「三好さんのお陰で、好きなものを一緒に好きと言えるのが楽しいとしれたんです。テンション上げることが悪いことじゃないとしれたんです。ずっと辛かったことを受け止めてもらえて、初めて心が軽くなったんです。三好さんがいなければ、私は何も知ることは出来ませんでした」


 それが利用であろうとなんだろうと、その事実は変わらない。私は、三好さんに沢山のものをもらったのだ。


「私は、三好さんに救われたんです。貴方にとって何が事実であろうと、それは変わりません。何を言われてもこれは譲りませんから」


 三好さんが驚いたら顔で私を見ている。私がこんな風に言うなんて思ってもいなかったのだろう。私も、こんな風に言えるとは思ってなかった。今さっきまでは。


「それでも利用って言いますか? 自己満足だって言いますか? それなら私も同じです。私は三好さんを利用して救われて、三好さんを理由にして・・・・・・貴方に見合う女性になりたいという理由をつけて、変わろうとしてます。それできっと変われたら私はどんな結末を迎えようとも自己満足してスッキリすると思います。それも、悪いことですか?」

「・・・・・・いや、」

「なら、もうそんな悲しいこと言わないでください」


 わかりましたか!? と三好さんに強めに念を押す。三好さんは黙ったまま、何も言わなかった。


 ・・・・・・はあ。これで終わりだろうな。


 全部、全部吐き出してしまった。言いたいことも、絶対に言わないと決めていたことも。

 これからはきっと、三好さんに近づくことすら出来なくなるだろう。でも、もういいやと思った。スッキリしていて、とても清々しい気持ちだ。


「私が言いたいことは以上です。好き放題言ってすみませんでした」


 三好さんに頭を下げ、その横を通ってルイさんの元に行こうとする。この後は、ルイさんが良ければ焼肉でも行こう。これ以上外にいたくないというのであれば、リモートで自宅同士でパーティでもしよう。

 せっかくお互いのことを知れたのだし、沢山話して楽しんで、今日のことはいい思い出として終わらせてしまおう。


 そう思って、三好さんの横を通り過ぎようとしたその時、私の手が掴まれた。


「え、」

「ごめん、影原さん。ごめんね」


 手がぐいっと強く引っ張っられ、私はバランスを崩して倒れそうになった。だが、地面に倒れると思われた体は直ぐに、温かくて大きなものに受け止められて、包み込まれた。


「え・・・・・・ええ!?」


 三好さんに抱きしめられてると認識するまで、たっぷり五分くらいかかった気がする。あくまで私の体感だから、実際には数十秒くらいかもしれないけれど、それほどまでに衝撃的なことだった。


 ──ななな、なんで!?


「ごめん、酷いこと言って。泣かせてごめん」


 頭の上から、三好さんの体の奥から、声が聞こえてくる。私の大きな心音にかき消されそうになりながら届くその声は少し震えているようだったけれど、私は気がつかない振りをした。


「三好さん・・・・・・」

「影原さんは俺を最低なやつじゃないって言ってくれたけど、やっぱり最低だよ。勝手に怖がって、嫌なこと言って、泣かせて、本当に最低だ」

「怖、がって・・・・・・?」

「・・・・・・怖かったんだ。俺が優しいやつなんかじゃないってわかったとしたら、影原さんはきっと離れていこうとする。でも、今でも怖いのに、これ以上俺を輝いた目で見てくれる影原さんを見ていたら、俺は君を離せなくなるだろうって思って」


 だから、そうなる前に言ってしまおうと思った、と三好さんは言った。


「離せなくなるなら、離せなくなる前に言ってしまえばいい。今嫌われてしまえば、傷は浅く済むし、諦められる。そう思って・・・・・・でも、影原さんが泣いてるのを見た時、それは間違いだったって気がついた」


 ああ、そんな。そんなことってあるのかな。三好さんが言ってることは、三好さんも私と同じ気持ちだと言っているように聞こえる。・・・・・・まさか、そんな。


「もうとっくに手遅れだったし、何より影原さんを泣かせるなんて間違ってた。本当に、本当にごめん」


 三好さんの私を抱きしめる腕の力が強くなる。少し苦しい。でも、全然嫌じゃなかった。

 私は恐る恐る三好さんの背中に手を回して、その背中をぽんぽんと叩いた。


「大丈夫です。私は、三好さんを嫌ったりしません。自分を最低だと言う部分に関しては怒りますが、他のことは怒ってもいません」

「一部には怒ってるんだ」

「怒ってます。私の大切な人を、最低だなんて言わないでいただけますか」


 不満を込めてそう言うと、三好さんが頭の上でブハッと笑った。


「だめだ。影原さんには敵わないな」


 あーもーと言いながら、三好さんは私をゆっくりと離した。


「泣かせて本当にごめん。酷いこと言ってごめん。俺、こんな奴だけどさ」


 両手をギュッと握られる。指先から三好さんの体温が伝わってきて、それだけで心臓が破裂しそうなくらいドキドキした。


「俺、影原さんのことが好きだよ。・・・・・・俺と、付き合ってくれる?」


 その言葉の意味を理解するのに数秒かかって、理解すると同時に顔が熱くなるのを感じた。

 少しもしかして、という気持ちはあったけれど、改めて言われると現実味がない。

 好き、付き合、え、本当に? 夢?? 二次創作??? ゲームの中???


「乙女ゲーの世界・・・・・・?」

「なんでそうなるの。現実だよ。紛れもなく」


 三好さんがアッハハと声を上げて笑う。現実・・・・・・三次元・・・・・・本当に・・・・・・?


「泣いてるの?」

「だって・・・・・・嬉しくて・・・・・・」

「泣かないでって言いたいところだけど、嬉し泣きならいいかあ」


 三好さんがぽんぽんと頭に触れる。優しくて温かな手。やっぱり三好さんは──。


「おい、ユウなんで泣いてんだ!」

「今お前は出てくるな!」

「はあ? お前が泣かせたんだろうが!」

「そうだけどそうじゃない!」

「意味わからんこと言うな!」

「ルイさん! ルイさん違うから!! 落ち着いて!!」


 ああ、現実は漫画やアニメのようには綺麗には締まらない。


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