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47.ルイさん②


「そう、だけど・・・・・・はぁっ、数年ぶりのガチ全力ダッシュきっつ・・・・・・」


 えっ、ルイさんって・・・・・・女性だったの!?!?


 話し方と性格からてっきり男性だと思っていたばかりに、ビックリした。


「お前、今女だったのって思ってるだろ」

「なんで分かったの!?」

「顔に書いてある。ま、こんな喋り方じゃ当然だろうけどな」


 ルイさんは向かいの席にどっかりと座り、何か頼んだか? と聞いてきた。それに何も、と答えると、お冷を持ってきた女性に「ブレンドと、このお店で一番甘いコーヒーひとつずつ」と頼んだ。


「コーヒー、甘いのなら大丈夫だったよな?」

「うん、大丈夫・・・・・・本当にルイさん?」

「何回確認すんだよ。間違いなくヴァイス様推しのルイさんだよ」

「本当に会えると思ってなかったから・・・・・・夢みたいで」

「そうかい。まあ、ぼくもだけど」


 ルイさんが女性だったなんて、本当に意外だった。でも、喋り方が私のよく知るルイさんだ。目の前にいる女性は、紛うことなく“ルイさん”なのだ。


「・・・・・・うえぇ」

「おー、急に泣き出したな」

「ごめん、ルイさんだって思ったら、気が抜けて・・・・・・っ」

「はは、いーぞ、泣け泣け。いっぱい泣いてスッキリしてしまえ」


 そんな事言われたら本当に涙が止まらなくなってしまう。女性がコーヒーを運んできてくれてもそれは止まらなくて、泣きながら「ありが、とうござい、ます」と言った。そんなおかしな私に女性は優しく「タオルどうぞ」と温かいタオルを差し出してくれた。聖母かな。


「んで、何があった? 何となくの話はわかってるが、しっかり分かってないから聞かせて欲しい」

「ううっ、あのね・・・・・・」


 私はルイさんに、さっきあったことを話した。それは途切れ途切れで、順番も上手く話せなくてぐちゃぐちゃだったけど、ルイさんは真剣に聞いてくれた。


「本当になんだよそれ。腹立つな」


 私の話を聞き終えたルイさんの第一声はそれだった。


「利用してたにしろ、自己満足にしろ、そんなん黙っておけっつーの、クソアキの野郎。同盟から消去してやるぞ」


 そう言いながらスマホを取り出すルイさん。一瞬アキ? と思ったが、同盟に入っている三好さんのハンドルネームのアキラを略してアキと呼ぶのは自然か、と納得した。


「わ、私は怒ってはないんだけど・・・・・・」

「ぼくは怒ってる。ぼくのユウを泣かせやがって。この野郎。ツブヤイターで協力者探して運営に不正ユーザーとして通報しまくって強制垢消しさせてやろうか」

「ルイさん・・・・・・」


 ぼくのユウを、という言葉に嬉しくなる。そのあとの言葉は不穏だけれど。当然されたことないから真実は不明だけれど、公式による強制垢消しされたらデータが全部飛ぶらしい。

 ・・・・・・ルイさん、スマホ弄ってるけど本当に通報したりしてないよね・・・・・・?


「ルイさん、通報しなくていいからね?」

「ユウの仇はぼくが討つ」

「しなくていいからね!?」


 流石に強制垢消しは悲惨すぎる。慌てて止めようと身を乗り出すと、ルイさんが笑った。


「泣き止んだな」

「え? ・・・・・・あ、本当だ」


 慌てすぎて、いつの間にか涙はとまっていた。もしかしてルイさん、私を泣き止ませようとしてくれた?


「・・・・・・ありがと」

「何が?」


 ルイさんは本当になんの事だと言わんばかりの顔でマスクを下ろしてブレンドコーヒーを飲んだ。うう、そういうところ、好き!


「全部に対してだよ。駆けつけてくれたのも、泣かせてくれたのも、泣き止ませてくれたのも。全部」

「別に礼を言われるようなことでもない」

「そんなことないよ。私は今、凄く救われてる」


 もしも今ルイさんがいなかったら、知らない街で1人、ただただ泣いて、落ち込んで帰ることすら出来なかったかもしれない。

 でも今は泣き止んで普通に話している。これがどれだけ凄いことか。


「なんでこんなに良くしてくれるんだろうって思うくらい、私はいつもルイさんに救って貰ってるよ」


 いつだって、どんな時だって、ルイさんは私の話を聞いてくれた。悩みを聞いて、解決しようと色々考えてくれた。

 本当に、なんでこんなにって思うくらいだ。


「それは、ユウがぼくを救ってくれたからだ」

「・・・・・・え?」

「ユウは覚えてないかもしれないけどな」


 私が、ルイさんを救った? いやいや、逆はあっても、そっちはないだろう。そう思って首を傾げていると、ルイさんは「だよな」と笑った。


「ユウ、覚えてるか。ぼくたちが初めて会った頃のこと」

「うん、覚えてるよ」

「ぼくは実はあの時、ナイライをやめようと思ってた・・・・・・いや、違う。全てを、人生すらもやめようと、思ってた」


 その言葉に、声を失う。人生を・・・・・・やめようとしていた?


「急に重い話でごめんな。でも、ユウに聞いて欲しい。ぼくが、どれだけユウに救われたかって話を」

「・・・・・・うん、わかった。聞く」


 そう答えると、ルイさんはコーヒーを1口すすってから、ゆっくりと話し始めた。


「ぼくさ、昔いじめに遭ってたんだよ。こんなハッキリ言う上に嫌な性格だから敵が沢山出来て当然だよな。・・・・・・それでその時に、男子に顔に消えない傷をつけられて、それがトラウマになって家から出られなくなった」


 今もここに傷跡がある、とルイさんはマスクの上から頬を触った。そんな、酷すぎる。ルイさんがトラウマになるのも当然だ。

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