45.オタメイト、再び!です。②
「影原さん、嬉しそうだね」
オタメイトを出て駅に向かう途中、三好さんは私を見てそう言った。そんなに溢れ出ているだろうか、と思って顔を触ると「ずっとストラップ握りしめてるし」と笑った。
「そうですね。嬉しいです」
「グッズ、今日買うつもりで来たの?」
「はい。あの、それもあって、三好さんをお誘いしたと言いますか・・・・・・」
「え、そうなの?」
それに、こくりと頷く。三好さんをどこかに誘おうという話は、メルちゃんとゆずちんと相談して決めたことだ。その行先候補は他にも、遊園地とか水族館とか、近くのカフェとか色々あった。
その中でもやっぱりオタメイトにしたのは、三好さんに一緒に来て欲しいという気持ちがあったからだ。
「私、変わりたいって思っていて」
それは、三好さんには何でとは言えないけれど、私の今の原動力はそれだ。三好さんと見合うようになりたい。三好さんの隣に堂々と立てるような人になりたい。
「強くなりたいんです」
怖がって怯えて、逃げているだけじゃダメだと思った。
「ちゃんと、好きな物は堂々と好きでいられるようになりたいんです」
三好さんは私の好きなものを、ナイライを、私の話を好きだと言ってくれた。それなのに怖がって逃げるということは、三好さんが好きになってくれたものも、言ってくれたことも否定することになるんじゃないかと思った。
私は、三好さんが好きになってくれたものを、堂々と好きでいたい。メルちゃんやゆずちんやさっくんが好きなものを、ちゃんと好きでいたい。
「それに、もうひとりじゃないですから」
今まで、私の味方はいないと思っていた。だから1人で自分の大切なものを、ナイライを、守らなきゃと思っていた。傷つけられないように、酷いことを言われて汚されないように。
でも、今は違う。三好さんがいる。メルちゃんも、ゆずちんも、さっくんも。
もしも仮にこの先、またナイライが傷つけられることがあっても、一人じゃない。共有して、何それ酷いねと言って怒って笑って、その傷を癒すことが出来る。なかったことにもできる。
「だから、ほんの少しずつですが、勇気を出していこうと思いまして。これはまずその第一歩なんです」
勿論、家にあるコースターやアクリルストラップも出しますよと言うと、三好さんが「凄いなあ」と呟いた。
「影原さんは強いね」
「そんなことないです。まだまだ私なんて・・・・・・今日も三好さんがいて下さったから買えたんです」
「俺、何もしてないよ」
「いいえ。三好さんといると、勇気が出るんです。怖くても、大丈夫だと思えて。好きなものを好きでいていいんだって、思えて」
だから、と言葉を続ける。
「ありがとうございます。今日はお付き合いしてくださって。一緒にいてくださって、助かりました。・・・・・・あっ、それでこうして買っていただくことになっちゃったんですけど・・・・・・」
えへへ、と笑うと、頭に何かが乗る感覚がした。ん? と思って見あげると、三好さんが私の頭に手を乗せていた。・・・・・・ひええ!?
「俺は何もしてないよ。影原さんが頑張った結果だよ」
「い、いえ、三好さんには沢山助けていただきました! 三好さんがいらっしゃらなければ、私、友達も作れなかったと思いますし、オタメイトもオタカフェも一生行けないままでした」
「そんなことないと思うけどなあ」
「それに、沢山優しくしていただきましたし・・・・・・」
そう言うと、三好さんは表情を曇らせた。それに「どうされましたか?」と尋ねると、三好さんは少しだけ悲しそうな顔をして、言った。
「優しくないよ。全然」
え、と言葉が漏れる。三好さんがこういうことを言うのは、こういう表情を見るのは、初めてだ。どうしたんだろう。
「いえ、三好さんは優しいですよ」
「優しくないって」
いつもより低い声色の三好さんに、ビクリとする。それに気がついたのか、三好さんは自嘲気味に笑った。
「ごめんね。俺は、全然影原さんの思うような人じゃない」
「そんな・・・・・・」
「・・・・・・これ、ずっと言わないつもりだったんだけど、今の影原さんの話聞いてたら、言わなきゃって思って」
だから言うね、と三好さんが話を続ける。なんだろう。なんかわからないけど、いい感じじゃない気がする。
「俺、影原さんのこと、ずっと利用してただけなんだよ」
「り、利用・・・・・・?」
「そう。俺に利用されるだけなんだよ、影原さんは」
それは、一体どういう意味だろう。
何もわからずにキョトンとしている私に、三好さんは「そこの公園で話しようか」と言った。




