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44.オタメイトに向けて、レッツラゴーです!②


「着いたよ」

「わあ」


 三好さんが連れてきてくれたのは、レンガ造りの少しレトロな可愛らしい洋食レストランだった。

 濃い緑色のドアを三好さんが開けるとチリンと軽やかな鈴の音が鳴る。こういうの、凄くいい!


「お先にどうぞ」


 レディーファーストね、と笑いながら三好さんがドアを抑えていてくれる。ああ出た、騎士ムーブ。やめて欲しい。心臓に悪いから! 先にはいるけど!!


「いらっしゃいませ。二名様でしょうか?」


 店内に入ると、落ち着いた声色の女性が出迎えてくれた。小綺麗に身なりが整っている綺麗な人で、こういう大人な女性っていいなと思う。いつか私もなれるかな。


「はい、そうです」

「お好きなお席へどうぞ」


 三好さんが店員さんの問に答えてくれて、席を探し始めてくれる。その後に続いて良い席を探しながら、店内をくるりと見渡した。

 レンガの壁に濃い色をした木製の床、床と同じ色の机と椅子というシンプルな店内を、ステンドグラスのランプが彩っている。凄く可愛いし、オシャレなのに落ち着く空間だ。


「影原さん、ここ良さそうだよ」


 そんなことをしているうちに、三好さんが席を見つけて呼んでくれる。いけない。ぼうっとしていた。


「すっすみません、ありがとうございます・・・・・・!」

「いえいえ。見とれてた?」

「はい。ステンドグラスがとてもオシャレで・・・・・・レンガの壁もレトロでいいですね」

「良かった。影原さん、こういう落ち着いたお店好きかなと思って選んだから、気に入って貰えたみたいで嬉しいよ」


 三好さんはそう言って嬉しそうに笑った。うう、そんな事言いながらそんな笑顔向けるの反則! イエローカード! もう一枚イエローカード出ても何もならないけど!!


 心の中でそんな訳の分からない文句を言いながら座った席は、店内の1番端っこで、お店の中が一望できる席だった。その上、右側にあるガラスはステンドグラスになっている。三好さん、席選びのセンスまであるとか、本当に何者???


「はい、メニューどうぞ」

「ありがとうございます」


 手渡されたメニューは見開き1ページしかなく、写真も何も載っていないけれど、それがまた良かった。暫くメニュー表と睨めっこをしたあと、私はふわとろオムライスを選択した。ふわとろ、響きが良すぎる。


「注文するね」


 すみませーん、と三好さんが店員さんを呼んで、ふわとろオムライスと、自分の分の自家製ハンバーグを注文した。三好さん、オタカフェの時に推しの料理とはいけ唐揚げフードファイトしてたし、お肉好きなのかな。役立つ時なさそうだけど、ちょっと心のすみっこにメモしておこ。


「それにしても、こんなオシャレなお店とかってどうやって見つけるんですか?」

「ん? ああ、実は見つけたと言うより、前からあるのは知っててさ。影原さんとどこでご飯たべようかなーって考えてる時に、ふと思い出したって言う方が正しいかな」

「そうなんですね。この辺り、良く来られるんですか?」

「んー。というか、この辺地元なんだよね」

「そうだったんですか!?」


 思い返してみれば、三好さんは初めてオタカフェやオタメイトに来た時も、ナビも見ずに迷いなく歩いていた。あれは地元で、元から知っていたからだったのか。なるほど。


「そ。高校までこの辺に住んでて。実家もこの近くにあるの」

「ということは、三好さん、今一人暮らしなんですか?」

「ザッツライト。意外?」

「少し」

「あはは。俺、パッと見家事とかやらなさそーだもんね。実際できないんだけど。料理も洗濯もからっきしで、宅配とコインランドリーに頼り切りだよ。あの二つ開発してくれた人にお礼言いたいくらい」


 それに笑いながら、凄い、と思った。凄い、今だけで三好さんのこと、色々知れた。この辺が地元で実家が近くて、一人暮らしで家事ができない。ふふ、家事ができないの、なんかイメージ通りかも。


「って、ごめんね。興味無いよね」


 思わず自分語りしちゃった、と三好さんが言う。


「いえ! 三好さんの話、もっと聞きたいって、思います」


 それに思わず食い気味でそう答えると、三好さんは少し驚いたような顔をしたあと、小さな声で「俺の話なんて聞いてもいいことないよ」と言った。


「え」

「あ、影原さん、ご飯来たよ。ここ来るの初めてだけど、美味しいって噂あるから楽しみにしてた」


 そう笑う三好さんは、さっきの言葉が聞き間違えなんじゃないかと思えるくらいいつも通り明るくて。


「ちょ、影原さん、見て! 肉汁やばい!」

「わあ、凄いですね! こちらもふわとろですよ」 「うおーすげー!」


 ご飯食べ終えた後に行った御手洗でふと思い出して、私ってば何言っちゃったんだろう、としか思わなかったくらいには、忘れてしまっていた。


 多分、忘れてはいけないことだったのに。

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