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43.お出かけ前です。


 三好さんとのお出かけは、木曜日の大学後、ということになった。この日はたまたま、私が取っている講義の講師さんがみんな出張やら休みやらでおらず、2限までしか取っていなかった。

 中々休み合わないよね、となっていたところ、三好さんが「それならこの日、ニ人ともバイト休みだし良くない?」と提案してくれたのだ。でも三好さんの大学は? と思ったが「大丈夫、問題ない!」と言われた。本当に大丈夫なのだろうか。

 そんなわけで、あっという間にやってきた木曜日。


「ふぁ・・・・・・」

「ゆいっち、眠そうだねえ」


 二限後「支度手伝う!」とお昼休みなのに来てくれたメルちゃんとゆずちんが笑う。さっくんも来てくれようとしていたそうだが、メルちゃんとゆずちんが止めたらしい。別に良かったのに。


「寝不足で・・・・・・」


 昨夜、緊張でまったく眠れなかった。三好さんとのお出かけはこれで3回目だが、今回は一味違う。この日のために選んだ服で、うんとお洒落して行くのだ。緊張しないわけが無い。

 そのことをルイさんにダイレクトメッセージで話したら、笑っていた。笑わないでよ! と言ったら『ごめんごめん。ユウが精一杯頑張るのに、失敗するわけないだろうと思ってさ。だから、緊張する必要なんてこれっぽっちもないよ』と言ってくれた。ルイさん、好き!!

 結局、ルイさんは朝まで話に付き合ってくれた。多分ルイさんも今頃寝不足だろう。申し訳ない。


「あはは。今日、朔も寝不足だって言ってたなー」

「イベントのやり過ぎだっけ? 今回ポイントイベントでもないのにめちゃくちゃやり込むよね、さっくんって」


 さっくんはイベントは隅から隅までやりきるタイプらしい。得られる報酬はどんな小さいものでも全部受け取るし、完走しないと気が済まないそうだ。

 ああ、そういえば、私は今回イベント出来てない。それどころじゃなくて。イベントを走っていても、三好さんの顔が浮かんできてしまって、集中出来なくて。


「よーし、ゆいっち! メイクするよー!」

「ふぁっ、わああっ!」


 本当に、それどころじゃない!!


***


「よーし!」 


 数分後。メルちゃんが満足そうに額の汗を拭う動作をした。ゆずちんも「おおー」と感嘆の声を上げている。


「服、持ってきてるよね?」

「あっ、うん!」

「鍵かけてあるし、ドア窓もないからここで着替えちゃいな。顔にひっかけないように気をつけて」

「わ、分かった」


 顔に服がつかないように慎重に脱ぎ、新しい服を身に纏う。すると2人とも「めっちゃいいじゃん!」「想像以上」と褒めてくれた。2人とも、上げ上手だ。本当にいいような気持ちになってくる。


「最後は、髪の毛! まだ時間大丈夫だよね?」

「うん、待ち合わせ、13時半だから・・・・・・」

「今、12時20分。余裕あるね」


 じゃあ、凝ったものにしちゃおうか、とゆずちんが張り切る。髪の毛はゆずちんがやってくれるようだ。楽しみ。


「ゆいっち、髪の毛綺麗だよねー」

「えっ、ゆずちんの方が綺麗じゃ・・・・・・」

「あたし、これでも傷んでるんだよー。昔ブリーチとかかけたからさ〜」

「えっ」

「意外?」

「うん」

「ちょいヤンキーだっだだよねー。朔がナイライ勧めてくれて、ハマってから落ち着いたけどさ」


 その話に、二重に驚いた。ゆずちん、ヤンキーだったの!? それに、ナイライって。


「さっくんが、きっかけ!?」

「そー。あいつ、昔からオタクでさ。ナイライもリリース当初くらいからやってんの。んで、布教されて、あたしもハマって、今に至る」


 てっきり逆だと思っていただけに、ビックリだ。それに、リリース当初からやってたって、凄い。先輩だ。


「あたしが落ち着けたのも、黒髪に出来たのも、シュヴァルツのお陰なんだよね。なんでも出来る完璧な人で、なのにブラコンで可愛くて、強くて格好いいなって思って、憧れて。今じゃ虜だよ」

「わあ、いいですね」

「わかる。私もロートさんにかなり影響受けてるからさー。推しに似るよね」

「ゆいっちもどこかヴァイスさんに似てるしね」


 それに、えっと声が出る。私、ヴァイス様と真逆では!? 全然似てなくないですか!?


「似てるよ。大切なものを頑張って守ろうとする感じとか、実は一生懸命なところとか。自分じゃ分からないかもしれないけどね」


 髪の毛をまとめあげながら、ゆずっちが優しい声で言う。ゆずっちを疑うわけじゃないけど、でも信じられない。ヴァイス様と似ているなんて。近づけているなんて。

 ・・・・・・もっと頑張ったら、ヴァイス様のような、強い意志を持つ人になれるだろうか。守りたい人を守れるような人になれるだろうか。


「さー、できたよ!」


 ゆずっちがそう言って肩をぽんと叩いてくれる。どう? と鏡を手渡されて覗き込んだその鏡面には、綺麗に着飾った女の子の姿があった。


「これ、私?」

「ゆいっちだよー! 可愛い可愛いゆいっち!」

「自信作です」


 凄い。目がいつもよりも少し大きくて、目元がキラキラしている。唇もつやっとしていて、鼻も少しスっとしている気がする。髪の毛もハーフアップになっていて、横には編み込みも入っていて可愛らしい。


 全てがキラキラしていて、なんだか、私じゃないみたいだ。凄い。凄い!!


「あ、ありがとう!」

「どういたしまして」

「あとは、コンタクトだね!」

「あう」

「それは手伝えないから、頑張って!」


 2人にエールを送ってもらいながら、2日前にできたばかりのコンタクトを取り出す。ううう、怖い。すごく怖い。とても怖い。一応昨日も予習してきたのに、やっぱり怖い。


 結局、コンタクトにたっぷり5分ほどかけて、ようやく全ての準備が完了した。私がやったの、コンタクトだけなのになんか疲れた。オシャレの道、険しい。


「髪よし、メイクよし、服よーし!」

「うん、完璧。あとは待ち合わせ場所に向かうだけだね」

「いつもの駅だったよね? ナンパされてもついてっちゃダメだからね!」


 なんか、三好さんみたいなこと言い出した。それに大丈夫だよ、と返して時計を見る。もうすぐ13時になるところだった。


「ごめんね、二人のご飯の時間使ってもらって・・・・・・」

「いーよいーよ! 全然! 楽しかったし!」

「気にしないで、たくさん楽しんでおいで」

「報告、まってるから!」


 そう言ってくれる2人に、改めてお礼を言って、講堂を出る。


「それじゃあ、頑張ってね!」


 手を振って別れようとしたところで、大事なことを言うのを忘れていたのを思い出した。


「あのっ!」

「ん? 何ー?」

「どした?」

「今度、メイクとか髪の毛のやり方、教えて貰ってもいいかな!?」


 いつまでも二人に頼っていちゃダメだ。私自身で出来るようにならないと。変わらないと。


 そんな願いに、二人は笑顔で「「いいよ!」」と言ってくれた。

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