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42.いざ!尋常にお誘い!です!


 先週の水曜日にみんなで食堂でご飯を食べたあとから、お昼ご飯は時間が合う限り、食堂で4人で食べるようになった。

 今日も窓際の4人がけのテーブル席にメルちゃんと私、向かい側にゆずちんとさっくんという形で座って話をする。


「そっかー。先輩と会えなかったのかー」


 メルちゃんが持参のお弁当に入っていた赤ウインナーを口に運びながらそう言う。メルちゃんは節約のためによくお弁当を持ってきている。ちなみに節約の理由はナイライとロートさんに貢ぐため、らしい。オタクらしくてとても良い。


「うん、店長さん、と話せるようになった、から、それは良かったけど・・・・・・」


 それに、たらこスパゲティを飲み込んでから答える。食堂のご飯、どれも美味しい。今まで食べなかったのが勿体ないくらいだ。


「なんか僕が知らないうちにめっちゃ話進んでる」

「朔、土曜日バイトだったでしょ」

「そうなんだけど」


 トンテキを箸でつまみながらさっくんが拗ねたように言う。それをゆずちんが窘める姿は、さながら姉と弟のように見える。「スプーンこっちに向けるな」と言うさっくんにゆずちんが「カリカリしないのー」とカレーを掬いながら笑う。いいな、幼なじみ。


「んま、じゃあ今日こそ! だね!」

「・・・・・・今日も来なかったら・・・・・・」

「その時はその時だよ。連絡先、知ってるんでしょ?」

「うん」

「ま、今の話聞いてる感じ、避けられてるわけじゃなさそーだし、大丈夫じゃないか? ヴァイス様も『まだ会えるなら人間関係、案外何とかなるものだよ』って言ってたでしょ。なんとかなるって」

「たしかに・・・・・・!」


 ヴァイス様が言うのであればそうだろう、という気持ちになるのがオタクというものである。さっくんも「思い出したら良すぎるな。今すぐ履修したくなってきた」と震えていた。わかる。私もヴァイス様に会いたい。


「ヴァイスさん好きだねえ」

「当たり前だ。あんなにいいビジュアルにギャップ、更に性格がいい人なんて中々いない」

「わ、わかります!」

「あ、ゆいっち、元気出てきた」

「な! あんなに完璧な人なかなかいないよな。重たい過去持ってるのにそれを感じさせない佇まい、隠し切る演技力、強かさ、何より名言が多い。最高すぎる」


 さっくんはヴァイス様の話になると一気に言葉数が増えて、早口になる。スマホを取り出しながら「見ろよこれ、この間のスチル! もはや国宝だろ」とゆずちんに見せ、それにゆずちんが「それを言うならシュヴァルツだって」と対抗しだす。そして、それにメルちゃんが「あー! 推し語りなら私も入れてよね!」と間に割って入る。

 まだ出会って一週間程だが、その光景を日常的だと思うくらいには、よく見る光景だ。

 そして、最近は三人とも、私の性格をよく知ってくれている。


「ゆいっちはー?」


 いつの間にか話は推しの好きなカードの話になっていた。その会話に、やっぱり中々入れない私に、メルちゃんが声をかけてくれる。

 ゆずちんとさっくんも、ほらほらと私を輪に入れようとしてくれる。それに入るのにはまだ慣れないけれど、でも少しずつ。


「私、は、やっぱり、五周年記念のカードが、好きかな」

「わかる。あのヴァイス様イケメンだよな」


 そして、いつも昼休みギリギリまで話して、講堂にギリギリで入ることになる。

 この日常が、たまらなく愛しい。


***


 夕方になり、影は伸びて少し寒さを感じる。

 今日はメルちゃんとゆずちんも三限までだから! と一緒に大学構内を歩き、門を出て駅の前までお喋りをした。

 駅で別れる時、ニ人とも「頑張って」とか「良かったらMINEしてね!」と言ってくれた。優しさが心に染みる。これなら何があっても大丈夫だ。


「よっし!」


 力強く足を踏み出す。何も出来ませんでした、なんて3人に言えない。しっかり報告できるように、がゆばらなくては。


「おはようございます」


 店内に入り、カウンターを通り抜け、事務所の前に立つ。昼勤さんの人は何も言っていなかった。つまり、今日は普通に三好さんがいるのだろう。

 よし、頑張れ、深呼吸!


「お、おはようございます!」


 ガラッとドアを開ける。すると奥から「おはよう」と聞こえた。三好さんの声だ。


「昨日は休んじゃってごめんね。大学で超厳しい教授の部屋の窓、ひじで割っちゃってさー」

「えっ!? 大丈夫ですか!?」

「大丈夫。昨日1日かけて教授の手伝いして許してもらったから。一時は弁償とか単位とかがどうなるかと思った」


 あぶねーと笑う三好さんは、やっぱり私をあまり見ない。それにめげそうになりながらも、いやでも私には3人とルイさんがいるし! と思い直して、三好さんに「あの!」と言った。


「ん?」


 断られたらどうしよう。大丈夫。怖い。でも平気。感情がぐちゃぐちゃで逃げ出してしまいたい。頑張れ、頑張れ、私!


「その、今度、また、オタメイトに、行きませんか?」


 よし、言えた。誘えた。この間メルちゃんとゆずちんと相談して決めたとおりに。あとは、三好さんがなんて答えるか──。


「行く!!」

「え、ええっ!?」


 勢いよく即答した三好さんに、私がビックリした。え、そんな早い!? 少しくらい悩むと思ったのに!


「ええって何?」

「いえ、その、行くと言われると思ってなくて」

「行くよ、行く行く。いつにする?」


 しかもめちゃくちゃ乗り気だ。私の不安は一体なんだったんだろうと思えるくらい。


「ふっ、ふふ。ふふふっ」

「え、なんで笑ってんの? なんか面白かった?」


 三好さんが私を見ながらそう言う。あ、久しぶりに三好さんの目に私が──。って、私が無理!


「いえ、なんでもありませんっ!」


 なにがともあれ、お誘い成功、です!

 

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