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40.友達とご飯と相談です。


 服を選び始めてから数時間後。


 私は、入ったイタリアンレストランの席でぐってりとしていた。


「ごめーん、ゆいっちー! 思わず遊んじゃって!」

「いやあ、着せ替え甲斐があってつい・・・・・・」


 反対に、二人はやりきったという清々しい顔をしていた。ありがたい。ありがたいけれど、着替え着替え着替え移動着替えの連続だったから、少し疲れた。


「ゆいっち、意外とロック系も似合うもんだから」

「多分ロリィタとかも似合うよー! もっと色々着せたーい!」

「私に着せて、楽しいの・・・・・・?」

「「楽しい(よ)!」」


 おお、息があった。


「ゆいっち、自分では気づいてないっぽいけど、素材いいよ?! このままでも勿論いいけど、お化粧したらもっと化ける!」

「整った顔立ちしてるよね。どんな服でも似合うタイプ、羨ましい」


 お肌もちもちだしーウラヤマー! とメルちゃんにぷにぷにされる。あう。そして、髪の毛さらさらだしーとゆずちんに撫でられる。あうあう。


「選んだ服、好きな人の前で着るの楽しみだねーっ」

「んぐっ」

「ねえ、その人の名前、なんていうの?」

「み、三好さん・・・・・・」

「たしかバイト先の先輩なんだよね? 見に行っちゃおっかなーっ!」

「それいいね」

「えええっ!?」


 それは困る。メルちゃんみたいな可愛い子と、ゆずちんみたいな大人っぽい子がお店に来たりしたら、三好さん、どっちか好きになっちゃいそう。それは、困る。


 その事を伝えると、二人とも「それはないってー」と言った。いやある。絶対ある!


「そもそも、私彼氏いるから安心して!」

「あたしも」

「え、そう、なの?! 土曜日に、私に付き合ってて、大丈夫、なの?」

「あはは、大丈夫だよ〜! 」

「彼氏にはいつでも会えるしね」


 わ、二人とも彼氏持ちなんだ。でもそうだよね。この2人を放っておく人なんていないよね!

 にしても、いつでも会える・・・・・・か。


「とりま、行く行かないは保留にしておいて、ごはん選ぼ〜。そろそろ店員さんの視線痛いし」


 そう言われて、やっと店員さんがこちらをチラチラと見てきているのに気がついた。そりゃあそうか。やって来てメニューも見ずに話し込んでいたらそうなる。

 慌ててメニューを手に取り、少し悩んだあと、ドリアを選んだ。メルちゃんはパスタ、ゆずちんはピザ。店員さんを呼んで、注文し終わってメニューを戻すとメルちゃんが「ねえねえ」と言った。


「その人、三好さんのどんなとこが好きなのー?」

「ん"んっ!?」

「恋バナしよーよ、恋バナ!」

「相談にも乗るし。ね?」


 二人がフフフという顔でこちらを見てくる。たしかに二人に恋愛相談すればいいことを教えてくれそうだけれど、でも私はまだ恋バナに慣れていない。だけど、二人に相談したらアドバイス・・・・・・! んんんああああ!!


「あのっ」

「おっ」

「キタ?」

「嫌われたっぽかったら、どうしたらいいと思う!?」


 その言葉に、二人が一瞬固まった。そして、メルちゃんの顔が徐々に驚きの表情に変わっていく。


「ええっ、嫌われちゃったっぽいの?!」

「うん・・・・・・元々、結構こっちを見ながら、話してくれるタイプ、だったんだけど。少し前から、全くこっちを、見てくれなくなって・・・・・・」

「ええ、マジか」

「だから、今日、服選んで貰ったけど、先輩の前で着る機会、ない、かも・・・・・・」


 三好さんに嫌われたのなら、もう一緒に出かける機会なんてないだろう。バイトに着ていくような服でもないし、今回2人に労力を使わせただけになってしまったかもしれない。それに今更ながら申し訳ない気持ちになってきて「ごめん・・・・・・」と謝ると、メルちゃんが口を開いた。


「でもそれってさあ、二パターンあるよね」

「・・・・・・へ?」

「三好さんがゆいっちを見なくなったのは、ゆいっちが言うように嫌われちゃったか──」


 そこまで言った時、ウエイターさんが席にやってきた。それぞれ注文したものを机に並べ、間違いないかを確認してから去っていく。ドリア、凄く美味しそう。


「温かいし、とりあえず食べようか」


 ゆずちんのその言葉にそうだね、と早速スプーンを手に取り、ドリアを掬って冷ましてから口に入れる。んん、美味しい。


「さっきの続きだけど」


 少し食べたところで、メルちゃんが話を切り出した。そうだ。もうひとつのパターンってなんだろう。


「もう一個のパターンは、ゆいっちの事が好きっていうパターンがあるよ」


 その言葉に、ドリアが変なところに入った。ゴホゴホとむせる私にゆずちんが慌てて水をくれて、背中を叩いてくれる。それにお礼を言って、落ち着いてからもう一度メルちゃんの言葉を反芻する。ゆいっちの子もが好きって言うパターン。

 ・・・・・・えっ、すっ、三好さんが!? 私を!?


「それは、ないと思われ!」

「えー、わかんないじゃん。本人に聞いたわけじゃないし、あると思うけどなー」

「いやいや、でも」

「さっきも言ったけど、ゆいっち結構ポテンシャル高いし、そもそもいい子だから有り得るよ。好きだから見れないーっていうパターン! 逆にゆいっちはそういうのない?」


 ・・・・・・ある。めちゃくちゃある。三好さんをまともに見れないのなんてしょっちゅうだ。でも、それが逆なのは考えられない。いやいや無い無い!!


「そんなのっ」

「それ、簡単に確かめる方法があるよ」


 そんな私の動揺とは裏腹に、ゆずちんはケロッと軽い感じでそんなことを言った。簡単に確かめる方法?


「えっと、それは、どういう・・・・・・?」

「デート、誘ってみたらいいんだよ」

「デッ!?」

「といっても、簡単なお出かけでいいんだよ。たしかナイライ好きなんだよね? なら、オタメイト行かない? とか、軽く、できるだけ断りやすいような感じで。それでOKが出たら嫌われてないってことだと思うし、なんなら脈アリだとあたしは思う。だって普通、嫌いな人とわざわざ出かけたりしないでしょ?」


 たしかに。断りやすく誘われて、嫌いな人と出かける人なんていないだろう。でも、断られたら? それはイコール嫌いを表すのでは? もし、もしも、真正面から振られたりしたら?


「その時は私たちがいるじゃーん!」


 そんな不安に駆られていると、メルちゃんがあっけらかんと言った。


「もしもがあったら、私たちがいくらでも話を聞くし、いくらでも慰めるし、元気出るように応援するし、ゆいっちがやりたい事ぜーーんぶ付き合うよ! ゆいっちの気が済むまで、いつでも、どれだけでも!」

「そうそう。そういう時は友達の出番だよ。美味しいもの食べて、沢山遊びに行って、オタ活もしよ。朔も誘ってさ。楽しいよ」


 二人がニッコリと笑う。大丈夫、大丈夫と言うように。


「「ゆいっちは1人じゃないんだから」」


 そうだ。私はもう一人じゃない。三好さんが居なくなってしまったとしても、一人じゃない。三人がいる。友達がいる。なら、怖いことなんてないんじゃないかと、段々思えてきた。みんながいるなら。


「・・・・・・そうだね。私、頑張って、みる」

「よし、その意気!」

「そうとなったら、誘い方考えてみよ!」


 結局その日は、作戦会議から次第に二人の推しの話になり、門限ギリギリになるまでたくさん話をしすぎて、全員猛ダッシュで帰ることになったのだった。

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