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39.友達とショッピングです。


 三好さんのその違和感というか変化は、結局土曜日になるまでそのままだった。あれが水曜日で、次の日は三好さんが休みで、そして昨日会ったけれど変わらず私の方を見なかった。話し声も話し方も、笑い方も笑顔も変わってないのに。ただ、ほん少しの些細な変化が、私の心に影を落とした。

 ああ、私何しちゃったんだろう。ノロマすぎてもう見てられないとか・・・・・・そもそも、可愛くもない奴の顔みて喋ってもつまらないと気がついた? どっちも有力すぎてわからない。ううう。


 そんな気持ちを抱えたまま迎えた土曜日、私は大学近くの駅でモヤモヤとしていた。ああ、わからない。心当たりがありすぎて、どれかわからない。全部かも。


 ──まさか、私が三好さんのこと好きなのバレた、とか!?


 だとしたら、この結果はいたたまれなさ過ぎるだろう。告白だとか努力云々の前にバレて、顔をそらされて、終わり。さようなら私の初恋。さようなら私の決意・・・・・・。


「ゆーいっちー!」


 その時、横から凄い衝撃を受けた。うふぅっと言う声を出しながらも、その勢いを受け止める。少しよろけたれど、転ばなかっただけ私もこの数日で多少慣たようだ。


「メルちゃん・・・・・・!」

「こらっ! 飛びつかないって何回言ったら!」


 ゆずちんの声が聞こえる。だが私はメルちゃんに押しつぶされてその姿を見ることは出来なかった。


「・・・・・・んんん・・・・・・」

「ちょ、ゆいっち、窒息しかけてない?」

「え、あっ、ごめーん! ゆいっち、大丈夫!?」

「ぷはっ」


 解放され、少しぶりに息を吸う。危ない。しっかり抱きつかれて息がしにくかったのと、なんとなく息を吸ってはいけない気がして、息が出来ていなかった。窒息死する前にゆずちんが気づいてくれて良かった。


「大丈夫、だよ」

「ほんとにごめーん!」


 そんな一悶着がありながらも、とりあえず集合することに成功した。よかった。

 やっと落ち着き、二人をしっかりと見る。メルちゃんは可愛らしい白と茶色のワンピースを、ゆずちんはオフショルダーの白い服に、黒いズボンを合わせた大人っぽい服を着ていた。わあ、二人ともやっぱりオシャレだ。凄い。


「さて、じゃあ行こうか」


 ゆずちんがそう言って歩き出した後ろを、私とメルちゃんが追いかけた。


***


「とーちゃーく!」


 駅から大学の逆方向に歩くこと数分。目的のショッピングモールに到着した。いつも行く自宅近くのショッピングモールよりも大きい、広い、そしてオシャレ!!


「ねえねえ、ガチャガチャのコーナー行こ!」

「こーら。今回はゆいっちのオシャレが目的でしょ。ガチャガチャはその後」

「はーい」

「んじゃ、ゆいっち──」

「あれが噂の・・・・・・スタボ・・・・・・!」

「あんたもかい」


 目移りしないの! ガチャガチャもスタボも後! とゆずちんに諌められ、これ以上他に気を取られないようにと足早にファッションフロアへと向かった。ゆずちん、本当にしっかりしている。同い年なのに、頼れるお姉さんって感じだ。

 思わず頼りたくなるけど、頼りすぎないように気をつけなきゃ。


「さて、ゆいっち。どんな感じがいいとかある?」

「・・・・・・おまかせで・・・・・・」


 さっそく頼りまくってるけど。


「おっけー。んじゃ、柄柄コーデでいこうか」

「それはやめてください?!」

「それじゃあどんなのならいい?」

「ええ・・・・・・」

「せっかくの初めてのオシャレなんだもん、ゆいっちがなりたいイメージをベースにする方がいいからね! そのイメージになる感じで私たちがいい感じに選んであげるから、なんでも言って!」


 メルちゃんもホラホラ! と促してくる。わ、私がなりたいイメージ・・・・・・? なんだろう。私が、私がなりたいのは──・・・・・・。


「明るくて、華やかで、堂々と前を向いて歩けるような、そんな感じ・・・・・・」


 ふんわりしたイメージにもほどがある。もっと、こんなモデルさんのイメージ! とか格好いいのとか、可愛いの! みたいな分かりやすいものがあるだろうに。何言ってんだろう、私。


「って、ごめん、やっぱり、」

「わかった! おっけー!」


 今のなしで、と言おうとしたところで、メルちゃんが大きな声でそう言った。ビックリした。


「いい服選んであげる! 楽しみにしてて!」

「明るくて華やかな服か。でも、多分ゆいっちはちょっと落ち着いた色の方が似合うと思うから、くすんだピンクとか水色とかどうよ」

「それいい! 探しに行こ!」


 よーし! と張り切る2人に、あの、えっと、と困惑する。ええ、今のでいいの??


「ゆいっち」


 不意に、メルちゃんが振り返った。


「友達なんだから、そんな不安そうな顔しないで、もっと遠慮なく頼って! ごめんなんて謝らなくていいし、せっかく頑張って言葉にしてくれたことを撤回しようとなんてしなくていいよ。ゆいっちは思ったまま、私たちのところに来てくれればそれでいいの!」


 わかった? とメルちゃんが笑う。その隣ではゆずちんが優しく私を見ている。ああ、私はなんて。


「・・・・・・ありがとう。友達に、してくれて」


 嬉しくて、思わずそんな言葉が溢れ出す。それに、メルちゃんは何言ってんの! と笑った。


「声を掛けてくれたのはゆいっちじゃん。ゆいっちが声掛けてくれなかったら、私たち友達になれなかった。だから、ゆいっちが私を友達にしてくれたんだよ」

「つまり、あたしもそうだね。2人が出会わなかったらあたしもゆいっちと友達になれなかったんだから」

「ねー! 声掛けてくれて良かったよね!」


 あの時、声をかけたのは三好さんに見合う人になりたい、その一心だった。今思えば、それしか考えてなかった。最低だと、自分で思う。

 それなのに、こんなふうに言ってくれるなんて。

 きっかけは、三好さんだった。でも、今は違う。もしも三好さんに振られても、見限られて、関係なくなっても、私は皆といたい。

 メルちゃんと、ゆずちんと、さっくんと、ずっとど立ちでいたい。


「・・・・・・私、ピンクか水色かで、言ったら、ピンクがいい、な」


 顔を上げて、しっかりと2人を見ながらそう言う。友達だから。さっきメルちゃんが言ったように不安がらずに、自分の言葉を伝えよう。これからも、友達でいたいから。


「んふふ。おっけー! 任せて!」

「よし。俄然やる気出てきた。メル、いい服見つけるよ」

「とーぜん!」


 そうして私は、着せ替え人形となった。

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