34.生まれて初めてのグループトークです。
「ふふふ」
帰宅後。私はスマホ片手に一人ベッドの上に転がり、ほくそ笑んでいた。
その画面に映っているのは、今日友達になった三人の名前。
あれから、さっくんさんが「バイトあるから」と立ち上がったところで今日のところは解散となった。その時に「優依ちゃん、MINE交換しよー! んで、グループ招待していいー?」とメルさんが言ってくれて、三人と連絡先を交換した。
私のスマホに家族もバイトも関係ない人の連絡先があるなんて。夢みたいだ。
そう思いながら眺めていると、スマホが突然震えてメッセージの到着を知らせ、画面の上の方に『ナイライ友達!』という文字が表示された。今回私が入ったMINEグループの名前だ。わわっ、早速メッセージきた!
震える指で通知をタップしてトークルームを開く。メッセージの送り主はメルさんだった。
『改めまして、優依ちゃんいらっしゃーい! よろしくね!』
その後にわーいと喜んでいるスタンプが連続で送られてきた。可愛い。スタンプまで可愛い。
『よろしくねー』
ゆずちんさんからもメッセージが届き、さっくんさんからは『ようこそ』のスタンプが送られてきた。すっごい歓迎して貰えているようだ。嬉しい。
『不束者ですが、よろしくお願いいたします』
少し考えた末、そう送るとすぐさまメルさんから『そんな固くならなくていいよー! あと、タメ口でいいし!』と来た。それに『敬語がデフォルトの人もいるだろ』とか『ユイさんのやりやすい感じでいいんだよ』とさっくんさんとゆずちんさんがフォローを入れてくれる。ああ、優しい。全員が優しい。
『すみません。もう少し普通に話せるように頑張ります』『訂正します。頑張る!』
『いや、頑張んなくていいよw』
『訂正ウケる。そーそー。てか芽瑠がフレンドリーすぎるんだよ』
『ええっ、そう!? あ、優依ちゃん、頑張らなくていいから気楽にいこ!』
明るくてフレンドリーで可愛いメルさん、少しお姉さんぽくて格好いいゆずちんさん、静かで冷静な感じがする自称『芽瑠の歯止め役』のさっくんさん。
バランスのいい三人の中に本当に私みたいなネガティブ陰キャが入ってもいいのかと不安になっていたが、この感じだと皆気にしていなさそうだ。
気を使わせてしまっていることを申し訳なく思いつつも、できるだけ気軽にを意識しながら返信を打った。
『ありがとう、メルさん、ゆずちんさん、さっくんさん。これからよろしくお願いします』『よろしくね』
『ユイさん、無理はしなくていいからね?!笑』
『好きに呼んでって言ったの僕だけど、さっくんさんは面白くね? きん〇くんさんみたい』
た、たしかに!?
『ウケたwww』
『てことで、さんは無くていーよ。呼びにくかったらさっくんさんでいいけど』
『朔、それはずるい。それなら私もゆずちんが良いな』
『ちょっと、私が連れてきた友達なのに、なに先に敬称なしの権利得ようとしてんの!? 私もメルがいい!!』
『おい二人とも、強要するようなこというなよ』
『『発端が言う?』』
ああ、なんか私のせいで争いが勃発しだした。やめて、私のために争わないで!! ・・・・・・一度言ってみたかったんだよね、これ。
『メルちゃん、ゆずちん、さっくん、喧嘩しないで』
『おお』
『メルちゃん! 嬉しい!!』
『なんかごめんね、強要しちゃって』
『いえ、全然! えへへ、こんなふうに呼ぶの初めてだから、嬉しいです』
『・・・・・・かわいい〜!!』
『ユイさんは私が守らなきゃの気持ちになってきた』
可愛い!? 私が!? そんなタイプじゃないと思うんだけどな・・・・・・。
『あ、私お母さんに呼ばれちゃった。またあとでね、ゆいっち!』
ゆいっち? ・・・・・・って、もしかして私のこと!?
『あ、はい、また後で!』
『ゆいっちって、ユイさんのことかな』
『そうじゃね?』
『あ、やはりそう、かな』
『多分。ねえ、あたしもゆいっちって呼んでいい?』
『あ、勿論です!』
『やった』
『僕、みんな呼び捨てしてるんだけど、同じようにして大丈夫?』
『あ、はい! 大丈夫!』
『優依。よろしく。それじゃあ、僕はそろそろバイト出なきゃだから』
『あたしも今から家の手伝いしなきゃ。またね』
こうしてグループのトークルームは静かになった。ほんの数分の出来事だけど、濃かったな、今の。・・・・・・ん?
また一件、スマホが通知を知らせた。通知欄に出てきたのは、バイトに行ったはずのさっくんだった。
『ぼく、今までヴァイス様推しの人周りにいなかったから、これから沢山語れたら嬉しい。ヴァイス様はイケメンだとか、「奪うことには慣れてたけど、得ることには未だに慣れないな」ってセリフ痺れたよなとか、あ、痺れたセリフといえば「みんなを守るために」って言ったシーンはやばかったよな! 僕はあのシーンで好きになったんだよな。マジで格好良かった』
前言撤回。静かそうに思っていたけれど、実はしっかり語るタイプのオタクだ!
『あ、ごめん。思わず語っちゃって』
『いいえ! 私も聞いていて楽しかったです! 沢山語って欲しいです!』『欲しい!』
『そう? 良かった。優依も何かあったらいつでも語っていいから。MINEでも現実でも』
『ありがとう。上手く話せないかも、だけど』
『話すの苦手そうだもんな。でもみんなゆっくり聞いてくれるし、メルもああ見えてしっかり聞き役にもなってくれるからさ。遠慮しなくていいから』
『うん。ありがとう。今度、色々話させてください』
『おっけ。あ、じゃあ今度こそバイトいく。またな』
さっくんは多分色んなものが見える人なんだろう。空気とか、人の性格とか。すぐに私が話すの苦手なのを見抜いて、ずっと気にかけてくれている感じがする。距離を詰めやすいようにしてくれている気がする。有難い。
「ふふふ・・・・・・」
またスマホを握りしめ、トーク内を見返しながらほくそ笑んだ。




