33.友達と友達と友達、です。
「優依ちゃん、このあと講義ある?」
「こう、ぎ・・・・・・あっ!」
メルさんにそう言われて、私は慌てて時計を見た。しまった。講義の開始の時間、過ぎてる!!
「遅刻しちゃった感じ?」
「です・・・・・・ね・・・・・・」
「マジかー今から行く?」
「いえ・・・・・・遅刻は、目立つので・・・・・・」
「目立ちたくないのね。OK。なら、講義予定だった時間、私にくれない?」
「へ」
「私の友達。紹介したいなって!」
「メル、さんの・・・・・・」
「そう! 聞いて驚け、その人たちはね」
メルさんは小さな口をニヤッと上げて、言った。
「ナイライの友達だよ!」
***
本日、何度目になるかわからない台詞を、もう一度言おう。
こんなことあるのか。こんなことあっていいのか。
「やっほー! ゆずちん! さっくん!」
メルさんに手を引かれ、やって来たのは校舎内にあるカフェ。私は一度も来たことがなかったキラキラが詰まった空間に、来ていた。・・・・・・うわあ、凄い。なんかオシャレ!!
そして、目の前には、女の人と男の人が一人ずつ。
ゆずちんと呼ばれた大人っぽい格好をした女性が「おー、メル」と返事をした後、私を見てビックリした顔をして固まった。
さっくんと呼ばれたメガネをかけた男性は何も言わずに無表情で私を見ている。・・・・・・もしかして、なんだこの陰湿な奴はとか思われてる?! すみません、場違いなところに来たりしてすみません!!
「メル・・・・・・あんたまさか、誘拐・・・・・・?」
「警察に出頭するなら付き合うけど」
「ちょっとー! 何それ! 二人して人を犯罪者みたいに言わないで!!」
「あんたならやりかねないかと」
「ぼくも同意見」
「ひっどーい!」
あ、私連れ去られた宇宙人か何かと思われてたのか。なるほど納得。
「もう! そんなこと言ったら優依ちゃん怯えちゃうでしょ! せっかく友達になったのに引かれたらどうすんの!」
「ああ、なんだメルの友達か」
「また無理やり?」
「無理やりじゃないもーん! てか、またって何!?」
凄くいいテンポで会話が進んでいく。多分この感じだとメルさんは三人の中ではいじられキャラなんだろう。仲のいい友達同士なんだな。
・・・・・・って、あれ!? 今メルさん、私のこと友達って言った!?
「友達・・・・・・」
「え、嘘、友達じゃなかった!?」
その呟きに、メルさんがショックを受けてしまった。ああ、違う。違うのに。
「メル、あんた・・・・・・」
「きみ、メルが強引で悪かったね」
「ちょちょちょー! うそん!」
「いつも言ってるじゃん。あんた距離感バグってるって」
「そうだけどー!」
あああ、会話のテンポが早い! どこで入り込めばいいのかわからなくて、否定するタイミングが掴めない。どうしよう。こうしている間にも勘違いが加速している。あああああ。
「ちょっと2人とも。その人、何か言いたげにしてるから黙ったら?」
「「へ?」」
混乱していると、さっくんと呼ばれた男性がに人の間に割って入り、それによって二人のテンポのいい掛け合いが止まった。
「二人が勝手に話進めてごめん。言いたいこと言っていーよ。メルの悪口でもなんでも」
「ちょっとー!」
「文句は後で聞くから。今はこの人のターン。黙ってて」
まさか、さっくんさんが気がついてくれるなんて。救世主か何かかな?
「あの、えと、」
こういう時、上手く話せない自分が嫌になる。でも、メルさんや、ゆずちんさん、さっくんさんに誤解されてる方がもっと嫌だ。
「友達、だと、言ってもらえる、なんて、思ってなくて、ビックリ、しただけで、その、すみません。誤解、させるような、こと言って、しまって」
ああ、本当にロボットが喋ってるみたい。こんなゆっくりのテンポじゃ、三人も面倒くさいはずだ。せっかく、友達って言って貰えたのに。私っていつも上手くできない。
「あ、そうなのー!? 良かった、ビビったー!」
しかし、メルさんはそんなこと気にする様子もなく笑いながら「マジで良かったー!」と言った。
「友達だった。良かった。押し売りしたわけじゃなかったんだ」
「人を悪徳セールスみたいに言わないで貰えますう!?」
「ごめんねー、私たち会話のテンポ早くて。話に入れないよね。どうする?」
「挙手制は?」
「講義みたくない?」
「でもうちらのテンポ的にありかもね。試しに挙手制にしよ」
ゆずちんさんがそういうなり、メルさんが「はいっ!」と元気よく挙手をした。講義みたいと言ってた割にはやる気マンマンのようだ。
「はい、メルさん」
「彼女の紹介してもいーですか!」
「発言を許可します」
「講義ってより国会かな?」
まあ何でもいいかと話が進んでいく。私のせいで挙手制に、なんて思う間もなく。
「彼女はさっき自動販売機前で出会った影原優依ちゃんです! 同じ二年生で、なんと! 従騎士仲間です!」
「え、マジで」
「ゆず、挙手」
「あ、はい。本当に従騎士仲間なの?」
三人の視線が私に集まる。回答を求められている。ええと、うんと、なんて答えれば・・・・・・っ!
「は、はい」
とりあえず挙手をしてみた。
「あ、挙手制してくれてる」
「はい、優依ちゃん!」
「えと、ナイライ、好き、です」
「おおーマジか」
「推しは誰だっけー!?」
「ヴァイス様、です」
「おおおっ」
それに反応したのは、さっくんだった。
「僕もヴァイス様推し」
「えっ、本当、ですか!?」
「格好いいよね」
「同担見つかったじゃんー! 良かったね、朔!」
ゆずちんさんが拍手をする。それにさっくんさんがコクリと頷いて「よろしく、影原さん」と言った。表情はあまり動いていないけれど、この感じからして嬉しいのだろう。なんか、私なんかで喜んでもらえるなんて、私も嬉しい。
「よ、よろしく、お願いします!」
「うん」
「てか、挙手制無くなってない?」
「ほんとだ。まー、その時々にしよー! 優依ちゃんは言いたいことがあったら、いつでも挙手してね!」
みんな、凄く優しい。嬉しい。こんな人達と知り合えるなんて。友達に、なれるなんて。
「あ、自己紹介してなかった。あたし、シュヴァルツ推しの三町 柚子。ゆずちんでいいよ。んで、こっちはあたしの幼なじみの」
「大類 朔也。好きなように呼んで」
2人に手を差し出されたが、こういう時どうしたらいいのかわからずにアワアワとしてしまう。それを見て、ゆずちんさんが笑った。
「はい、握手」
そう言って手を握ってくれる手は温かくて優しくて、また嬉しくなる。友達。友達って本当に凄い。
「さっくんはお触り禁止〜」
「そう」
「え、わた、しは大丈夫、です」
「私がダメ〜優依ちゃんは私が守ります〜」
後ろからメルさんに抱きつかれ、ドキドキした。こここ、これが友達の距離感・・・・・・!
「そんな距離詰めて大丈夫?」
「大丈夫〜って、あれ、優依ちゃん?」
「・・・・・・ふぁ」
「ショートしてね?」
「優依ちゃんー!!!!!」
二十歳にして初めての友達、一気に三人も出来ました。
7月30日までに完結させたいので投稿量増やしています。もしかしたら投稿頻度も上がるかもしれません。
よろしくお願いいたします。




