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32.友達を作ろう作戦、開始です!


 と意気込んだのはいいものの。


 ──ああ、どうしよう。どうしようどうしよう。ああ、どうしよう。


 生まれてこのかた友達がいたことがないコミュ障Lv.10,000の私は、昨日の決意はどこへやら、とてもアタフタしていた。

 ナイライのグッズを持った人に話しかけるとルイさんに言ったものの、持ってる人は四限の今に至るまで未だ皆無。その状況に一人逃せばその後のチャンスはいつになるかわからないと思って気になりすぎて授業が半分疎かになっている。良くない。

 とはいえ、ナイライ作戦を諦めて普通に話しかける方がナイライグッズ所持者を探すよりも難易度が高いと予想された。


 そんなわけで、友達作り大作戦は大変困難を極めている。見つけたところで話しかけられるかどうかもあるのに。こんなところで躓いてる場合じゃないのに。


 別に急がなくてもいいじゃないかと思われるかもしれないが、時が過ぎれば過ぎるほど、この決意は揺らいでしまう気がして、悠長に構えてなんていられなかった。


 そして、冒頭に戻る。


 ──あの、ナイライお好きなんですか、ナイライお好きなんだす、なんですか。ナイライお好きなんですか。誰推しですか。


 イメージトレーニングは完璧なのに。現実に出来なければ意味が無い。ああもう、いっそイマジナリー友達作ろうかな。それじゃダメかな。ダメだよな。


「はあ・・・・・・」


 こうして、四限も終わりを迎えた。今日はバイトがないから五限まで入れているのでまだ時間的猶予はあるが、しかし四限で帰る人は多い。ああ、詰んだかも。明日も友達作ろう作戦が出来るとも限らない身としては、由々しき事態だ。あああ。


 そんなことを考えながら講堂を出、次の講義が行われる講堂へと早足で向かう。あ、途中で飲み物買わなきゃ。確かあそこを曲がった先に自販機があったはずだ。


 ──急げ急げ。


 次の講義まであと五分を切っている。飲み物買ったら商品とってすぐに向かわないと間に合わない。ああ、時間的に次の講堂で友達探しは難しそう。困ったな。


 自販機の前に着き、急いで小銭を投入したところで後ろに人が来た。もうなんでもいいやと水を購入し、お釣りと商品を取って後ろの人に「すみません」と言おうとした。


 ──あっ!


 後ろに並んでいたのは、オシャレで目がクリっとした可愛らしい女の人。

 そしてその人が持っているカバンに付いているのは──間違いなく、ロートさんのぬいだ!!


 探し求めていた人とこんなところで出会うなんて。え、どうしよう。話しかけていいかな。迷惑じゃないかな。ああっ、ミルクティー買っちゃった。どうしよう、行っちゃう。手が震える。話しかけたところで、拒否されるかもしれない。緊張と混乱で頭が真っ白になる。どうしよう、どうしよう。どうしたら・・・・・・なんて言ってる場合じゃない!


 私は決意したんだ。友達を作るって。三好さんに少しでも、近づけるように頑張るんだって。

 ルイさんだって応援してくれた。もし何かあっても、ルイさんがいる。大丈夫。全部失うわけじゃない!


 頑張れ、私!!


「あ、あの!」

「えっ、なんですか?!」

「あの、ナイライっ、お好き、なんで、すか!?」


 い、言えた! しかも噛まずに。イメージトレーニングよりたどたどしいけど、私からしたら及第点だ。凄い。こんなこと、私にもできたんだ。


「ナイライ、ご存知なんですか?!」


 可愛い女の人は、ビックリしたように言った。あ、これは。


「あ、えと、その、好き、で・・・・・・」

「わー! お仲間さんだー! すごーい!」


 わーっと女の人は近づいてきて、凄い凄いと言った。・・・・・・これは、かなりいい感じなのでは?!


「すみま、せん、急に、声掛けたり、して」

「いいですよー! 寧ろお仲間さんで嬉しいです! 誰がお好きなんですか?」

「あの、ヴァイス様、が」

「あー! わかるー!」


 めっちゃくちゃいい感じだ・・・・・・!

 どうしよう、嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。こんなことってあるんだ。凄い。奇跡みたいだ。


「あの、何年生ですか? お名前聞いても?」

「2年、の、影原、優依です」

「あ、なんだ同い年! じゃあ優依ちゃんって呼んでも? って急に馴れ馴れしいよね。ごめん、私よく友達にも距離感バグってるって言われてて・・・・・・」

「いえ! その、嬉しい、です!」

「ほんと? よかったー! あ、私は同じく2年の佐々木芽瑠(める)。良かったら、メルって呼んで!」


 うわあ、名前まで超可愛い・・・・・・! こんな人と巡り会うなんて、マジで奇跡すぎる。距離感も私がわからない分、フレンドリーにしてくれるのが嬉しい。


「メル、さん」

「あはは。呼び捨てでいいのに。まあでも、いきなりは難しいよね。ゆっくり仲良くなろ!」

「仲良く、」

「ん?」

「仲良く、して、くれるんですか・・・・・・!?」

「当然だよ! 従騎士仲間だし、私の方こそ仲良くしてくれると嬉しいな!」


 えへへと笑う顔が可愛らしい。多分今までだったら絶対に関わることのなかった、キラキラした存在。でも遠いと思っていた存在は、意外と近くにいてくれて、近づいてきてくれた。ああ、嬉しい。


「えっ、泣いてる!? ごめん、うざかった!?」

「いえ、そんな、全然・・・・・・! その、嬉しくて」

「あはは。そっか。ならいいや!」


 こうして、私の人生初の友達が出来たのだった。

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