表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/61

27.みんなお洒落な服屋さんにはどうやって入ってるんですか?


 これは神のイタズラと言うべきか、はままた悪魔からのプレゼントと言うべきか。


 どっちとでも言えるような状況に、私は今立たされ、そして人生最大の難所に立ち向かおうとしている。

 どちらも、できれば立ち向かわなくて済むなら立ち向かいたくない存在である。

 今そこにある服屋さんと同じように。


 ──入る、入らない、入る、入らない・・・・・・。


 頭の中のイマジナリー花で花占いを行い、もれなく「入らない」で終わってしまう──というのを繰り返すこと五回。時間にして重分弱ほど。

 私はショッピングモールの一角にある服屋さんの前で右往左往していた。


 ──入りたくない。


 今回のイマジナリー花占いも「入りたくない」という願望で終わってしまった。そもそも実態がないのだから自分の望み通りに終わって当たり前の花占いだ。意味なんてないことはわかってる。

 これは簡単に言えばウォーミングアップのようなものだ。そう、今から服屋さんに入るための──!!


「・・・・・・っ、ぱ無理・・・・・・!」


 勢いをつけて踏み出した足は、瞬く間に今まで立っていた場所に吸い寄せられるように戻った。そんなにその場所が好きか、私の足。


「ハア・・・・・・」


 楽しげに、躊躇無く服屋さんに入っていく女の子たちを見つめる。みんな思い思いのオシャレをしていて、可愛らしい。それに比べて私といったら。


 ──いつものくたびれた黒パーカーにズボンだもんな・・・・・・。


 女の子たちが着ているような色や形が少し変わっていたり、裾が軽やかに動くような服とは到底かけ離れている。


 ・・・・・・そもそも、ああいうのは私なんかには似合わない。

 今目の前にある服屋さんは、ショッピングモール内でも1番落ち着いた服が売られているところだ。

 結構有名なチェーン店で普段着にいいと噂されているが、それでも店内は私からしたらオシャレなものばかりが並んでいる。なんだろう、あの襟のないシャツ。凄くオシャレ。でも多分私が着たら確実にパジャマみたいになる。悲しい。


 わかっている。私みたいなのがこんなお店に入るべきでは無いことは。何を買ったらいいのかさっぱり分からないし、わからない分ネットで調べても私に似合わないものばかりだ。あそこにある紺色のロング丈の上着とか、私が着たらたちまち通学途中の中学生だ。


 そう思っている。わかっている。だけどこうして服屋さんにまで足を運んだ理由がある。


『ねーねーカノジョ〜。もし今度の月曜日1人だったら、揃ってバイト休みだし大学終わったあと一緒に出かけない?』


 二日前に三好さんに言われた言葉が脳内で再生される。それは、冗談ですか? と聞きたくなるくらい軽い言葉だったが、三好さんはその後すぐに真剣な顔をして、言葉を続けた。


『さっきも言ったけど、ナンパとかは嫌だったら嫌って断らなきゃダメだからね?』


 そう言うのは、やっぱり三好さんの優しさなのだろう。その前の話の流れを利用して、これはナンパだから断って大丈夫だよと暗に言ってくれている。・・・・・・いや、もしかしたら最初声をかけてくれた時からそのつもりだったのかもしれない。三好さんは、しっかり考えて優しくしてくれる人だから。


 大丈夫です、嫌じゃないです! と半ば反射的に答えて、少しだけ後悔をした。バイトでどういう顔して会えばいいのかすら分からない時に外で会う約束とか、ちょっと私にはハイレベルすぎる。

 でも、三好さんの『ほんと?』と笑う顔を見たら、今更「やっぱり」なんて言える訳もなく。

 静かに頷いたら三好さんは『よかった〜』と言った。


『オタメイト、行きたいんだ。付き合ってくれる?』


 ・・・・・・なるほど、同行者(わたし)が必要なわけだ。

 そんな訳で、月曜日の大学終わりに駅で待ち合わせをしてオタメイトに行くことになった。


 間違っても、これはデートでは無い。私はあくまで三好さんの初のオタメイトへの同行者であり、三好さんがナイライグッズを見ていても浮かない為の盾のようなものだ。

 

 そうわかってはいるけれど、前回三好さんとオタカフェに行った時のことを思い出すと、今の私の服装ではあまりにも不釣り合いすぎる。これでは、三好さんの盾になろうにも「あんな奴とあの人が一緒に来てるわけない」と周りに思われて、盾になりきれない。


 ううう、と小さく呻き声を上げる。せっかく盾に採用してもらったのに、盾として使えないのは意味が無さすぎる。そう思って、やっぱり・・・・・・とお店の方を見た時、店員さんと目が合った。その目は完全に不審者を見る目だ。


 ──あああああああ!!


 私は色んなものを抱えた勢いのまま、お店の方に足を進めた。もう何も考えない。何も知らない。何もわからない!!



 気がつけば私は、綺麗な黒いパーカーを手に、会計を済ませ、お店の袋片手に帰路に就いていた。・・・・・・何してるんだろう、私。


 こうして、三好さんとの二回目のお出かけは、いつもより少し色がしっかりしている、新しい黒いパーカーで挑むことになった。・・・・・・本当に何してるんだろう。


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ