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2.乙女ゲームと言ったら恋愛ゲームだと思われがちですが。


『ナイライ』とは。


 正式名称『ナイトライブ』の略称で、今流行りの、所謂乙女ゲーム・・・・・・という立ち位置にある、リズムゲームである。

 所謂乙女ゲームという立ち位置にある、という曖昧な言い方には理由がある。

 まず、内容が全く乙女ゲーム向きでは無い。


 ナイライは、ブンテ国という異界の国を舞台とした、今まで市民の安全を守ってきていた10人の元騎士の若者達がアイドルのように歌って踊ってライブをして、大規模な戦争で疲れた市民の拠り所となり、心を癒していく。

 その10人の元騎士──通称『ファルベン』達は3組に分かれている。


『ドゥンケル』『マット』『エデル』。


 私たちユーザーはそのうちの1組、ドゥンケルのマネージャー的存在である『従騎士』として、ストーリーに関わっていく。

 が、他のグループの従騎士の視点でも見ることが出来、3組のストーリーを見ることが出来る。


 そのストーリーが、なんというか、とにかく激重なのだ。

 キラキラ要素は皆がアイドルをしている時以外は無し。恋愛要素は一切無し。それどころか恋愛に興味が無い人達ばかり。

 というかそもそも、私たち、従騎士の性別も選択することが出来る。男か女か、その他か。


 “乙女ゲーム”とは何ぞや。最早、イケメンが沢山出てくるという観点しかその概念が残っていない気がする。


 でもそこがまたいい。恋愛要素のある乙女ゲームもこれまでに何度かやったことがあったけれど、キラキラしすぎていて、全くのめり込むことが出来なかった。こんな素敵人(すてきびと)がこの世にいるか。いたとしても、私なんかがこんな風に思われるかぁ!(脳内ちゃぶ台返し) なんて思ってしまう。

 乙女ゲームは一切悪くないのに、ネガティブ陰キャのひねくれが炸裂してしまうのだ。向いてなさすぎる。


 ナイライでは恋愛要素が一切無い代わりに、1人1人の人生にスポットを当て、それぞれの悩みや過去を知り、それを乗り越えて絆を深めていくストーリーを恋愛関係から離れた場所で、客観的に見ることが出来る。

 その悩みが生々しくて、共感性が高い。共感しすぎて、思わず泣いてしまうストーリーもある。だから乗り越えようと奮闘する皆を応援したくなって、いつの間にか従騎士ではなく、ただのファンになっている。役目放棄にも程があるが、でも本当にそうなってしまう。

 絶対に男性にもウケるのに、乙女ゲームだから恋愛要素あるんでしょ? と敬遠されているのが残念すぎる。違うのに。


 私はそんなナイライの騎士(ファルベン)の1人、ドゥンケルの1団員であるヴァイス様を推している。



 ヴァイス様は白髪ロングの、優しい表情をしたお兄さん的な男性である。

 ドゥンケルの中では1番社交的で、普段から市民と関わるのは熱血系団長である赤髪のロットさんとヴァイス様の2人だけだ。

 いつもニコニコしていて市民からも支持されており、柔和な態度からご老人からも好かれ、ファンサービスも沢山する。優しい優しいアイドル、という感じだ。

 それ故に団員内で「あいつは本当に騎士だったのか」「弱そう」などと言われている。それをヴァイス様はいつも否定せずに「そうだね。実は僕は臆病だから戦場に出たことがないんだ」と笑う。


 だけど、ヴァイス様には裏の顔がある。騎士だった頃は最強の騎士と呼ばれ、誰もが恐れていた。だけど単体行動が多く、戦場に出ても瞬く間に敵を斬り刻んでどこかに行ってしまうため、ヴァイス様の顔を知る者はほとんど居ない。

 その上、目立つ白色の髪は返り血でいつも真っ赤に染まっていた。


 何者かわからないけれど、最強で恐ろしい真っ赤な騎士。いつからかヴァイス様は『真っ赤な悪魔コンプレット・ロット・トイフェル』と呼ばれるようになった。


 だけどその悪魔のような騎士は、1人の騎士に斬撃を止められ、手間取っているうちに守るべき対象であった国王を失ったことで「俺はまた、守れなかった」という言葉を残して姿を消してしまう。


 市民の安全や自分の為ではなく、ただ守るべき対象であった国王を守る事だけが、全てが不明とされていた真っ赤な悪魔コンプレット・ロット・トイフェルの騎士、ヴァイス様の唯一の糧だった。


 そして今は過去を隠し、ドゥンケルの団員として活躍している。



 って、最高じゃないですか!?


 と、帰宅後のベッドの上で先程供給されたばかりのヴァイス様のイラスト──否、宗教画を崇拝しながら思う。

 いつも優しいお兄さんなのに、実はめちゃくちゃ強いとかギャップ萌えしかない。その上「俺はまた、守れなかった」と力無なく呟いた声に、心を持っていかれた。


 心臓をガッと掴まれた。思い切り、強く。


 真っ赤な悪魔コンプレット・ロット・トイフェルのヴァイス様が「その心臓を俺に寄越せ」とでも言っているみたいに。私なんぞの心臓で良ければいくらでもどうぞ!


 だけど、この事を誰にも言ったことがない。ツブヤイターに友達は1人いるけれど、現実にはいない。

 本当は現実にも同じ趣味の友達が欲しいという気持ちはあるけれど──私には友達を作る勇気も、探す勇気も、ない。


「ヴァイス様、イケメン・・・・・・」


 今日もまた、こうして1人で推しへの愛を呟くことしか出来ない。



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