16.戦終わりの戦?です。
「はーーーっ!!」
スマホを机の上に置き、思いっきり伸びをする。
スマホの画面には『イベントは終了しました』の文字。──そう。私はたった今、戦を終えたのだ。推しイベントという名のイベントを。
あとはポイントの集計、順位の発表を待つばかりだが、最後に見た限りでは余裕で十位以内にいる。少なくとも、ヴァイス様のカードは確定だ。一週間、殆ど寝ずに画面に齧り付いていただけあった。
──イベントの最終日、休みで良かった。
最終日は色んな人が追い込みをかけ、瞬く間に順位が落ちていく一日である。その一日が休みだったのは本当に幸運でしかない。神様も私の推し活を応援してくれてる!
そんなことを考えているうちに、ポイントの集計が終わった。順位を見てみると、八位にランクインしていた。他の同盟の人数の十分の一、メンバー三人でこの順位。これがガチ担の力である。
──良かった、良かった。
ほくほくしながら早速報酬のヴァイス様のカードを入手した。ああ、真っ黒な衣装を身にまとっているヴァイス様・・・・・・白髪が映えて美しいイケメン・・・・・・! これはもはや無形文化財に登録されてないのが不思議なほど!!
一通りはしゃぎ、喜びのダンスを踊り、ヴァイス様を堪能したところでツブヤイターを開く。
ルイさんに連絡をしようと思ったが、呟きで『イベ乙でした。寝ます』と呟いていたのでやめて、スマホの画面を暗くする。ルイさんはそれこそこの1週間イベントを走っていたからお疲れなんだろう。かくいう私もお疲れモードだ。
──私も少しだけ寝よう。
ベッドにぼすんと体を沈め、一時間のタイマーをかけてスマホを抱きしめ、目を閉じる。ああ、いい夢見れそ──
そう思った時、ブンッとスマホが鳴った。珍しい。友達いないし、親は家にいるし、今はルイさんもお休み中なのに。
眠たい目を開け、スマホを見ると、そこには『明良』という名前があった。瞬間、目が覚めた。
──え、三好さん!? なんで!?
体を起こし、あわあわとする。
連絡先を交換してから六日。今まで、一度も連絡来たこと無かったのに。
恐る恐る、震える指で通知画面を押す。すると、いくつかのメッセージが表示された。
『お疲れ!』
『今、ナイライの順位結果見たよ!』
『八位とかヤバいねw 影原さんと、お友達のルイさんのお陰だね!』
『本当にありがとう! ヴァイスさん、入手しました!』
『(高速で頭を下げている猫のスタンプ)』
『また次のイベントがあったらその時もよろしくお願いします!』
『ルイさんにもよろしく伝えておいて!』
『(よろしくと言いながら反復横跳びをしている犬のスタンプ)』
「あわわわわわ・・・・・・!」
怒涛のメッセージに、思わず震える。陽キャだ。陽キャのメッセージだ。
いつもと同じ画面の明るさにしているのに、いつもより画面がキラキラと光り輝いているように見える。三好さんの明るさが、画面を突き抜けてこちら側まで来ている気分だ。陽キャパワー、恐るべし。
──こういう時、どう返せばいいんだろう!?
今までメッセージでやり取りしたことがあるのは、ルイさんと両親のみである。こういった状況に慣れているはずもなく、しばし悩み、20分ほど経ってからやっと返事をした。
『お疲れ様です。とんでもないです。三好さんも参加してくださったお陰です。ルイさんへの伝言、承りました。こちらこそありがとうございました。』
──固っ・・・・・・。
送信ボタンを押してから、上の三好さんのメッセージと比べて温度差に自分で引いた。しかし、これ以上どう返せばいいのかサッパリわからない。今の私の最善はこれだ。だから許してほしい。
既読は即座についた。どこかの話で、メッセージは何分以内に既読をつけて、何分以内に返信しないといけない世界があるって聞いたことがあるけど、あれは本当なのだろうか、と付いた既読を見て思う。
それを言うなら返信に二十分ほどかかった私は完全にアウトだ。──ああ。三好さん、呆れたりしてないかな。怒ってるかな。大丈夫かな。
そんな不安をかき消すように、通知音が鳴った。
『あはは、そんなかしこまらなくていいのにw 影原さんらしいけど』
『本当にありがとな! 俺一人じゃ絶対に無理だったし、同盟に誘ってくれて助かったよ!』
グーをしながら変顔をしている鳥のスタンプが送られてきて、思わず笑ってしまう。先程から送られてきている、少し変わったスタンプは一体どこでどうやって見つけてくるのだろうか。面白すぎる。
少し返信に迷い、丁寧に一文字ずつ入力していく。
『とんでもないです、お役に立てて』
そこまで打ったところで、新しいメッセージが増えた。そのメッセージを見て、思わず固まる。
『お礼したいから、今度、どっか一緒に行かない?』
はい?????!!!




