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10.持つべきものは、やはり友だと思います。


 その日は中々眠りにつく事が出来なかった。

 ベッドの上で眠ろうと目を閉じると、今日の失敗とか、悩みとか色んなことが頭の中でグルグルしだして、眠りを妨げてくる。


 今日は思わず語りすぎてしまった。三好さんはああ言ってくれたけど、本当は嫌だったりしないだろうか。もっと気をつけて、話すにしても言葉とテンションに気をつけなければ。相手の様子もしっかり見て。


「・・・・・・っ、ああ、ダメだ」


 ガバッと身を起こし、深く息を吐く。胸のあたりが苦しくなって眠れない。頭の中で反省と思考が止まってくれない。

 時計を見やると、時刻は1時を過ぎていた。


 本当はいつもなら、こんな時間にやらないけど。


 スマホを手に取り、ナイライのアイコンをタップしてアプリを起動させる。苦しくて眠れない時は、推しが一番。どんな時でも、推しを見るのが何よりの薬になる。


『こんな時間に来るなんて・・・・・・眠れないの? なら俺相手してあげる』


 起動完了すると同時に、ホーム画面にいる和装ヴァイス様がそう言った。深夜の恒常ボイスだ。それに一頻り悶えてから、カード一覧を開く。

 その瞬間、画面いっぱいにヴァイス様が沢山出てきた。

 この2年で集めた、ヴァイス様のカードたち──時々課金を添えて──だ。カードにもランクがあって、いい物から順にSSR(スーパースーパーレア)SR(スーパーレア)R(レア)N(ノーマル)

 当然の事ながらガチャではRとNは良く出、SRは時々出るが、SSRが出ない。そんなSSRを排出させる為にガチャの前になると色んな善行をしてみるのだが、それはとりあえず置いておいて。


 そんな、必死で集めたカードをひとつひとつ眺めて、ふふふふと笑う。やばいイケメン。猫耳付けてても鼻眼鏡付けさせられててもイケメン。最強すぎる。


 そう思いながら最後のカードを見終えて、次は何をしようかなとアプリ内をウロウロとしていたら、スマホが小さくピコッと音を立てた。

 それと同時に画面の上の方に手紙のマークがつく。ツイッタラーのメール機能だ。

 私にこうしてメールをしてくるのは一人しかいない。


『イベントでもないのにこんな時間にナイライにいるのはめずらしいな。眠れないのか?』

『ルイさん〜〜!!』


 メールを開くと、やっぱりよく知った人だった。ナイライのフレンドだから、ログイン時間を見てあれ?と思ったのだろう。あれ?と思って、心配してすぐにメールをくれるルイさんは本当に優しすぎる。天使かな。


『うん、また自己嫌悪タイムに陥っちゃって眠れなくて。ヴァイス様眺めてた(笑)』

『おっと、お邪魔して悪かったな』

『全然! 丁度ヴァイス様のカード全部崇拝し終えたところだし、ルイさんと話してると落ち着くから』

『そうか、良かった。で、何かあったのか?』


 ルイさんのその言葉に甘えて、今日あったことと、反省点をルイさんに話す。


『なんで私ってこんなんなんだろ。もうちょっと上手くやれるようになりたい・・・・・・』

『ユウは本当に真面目だな』

『面白くないよね・・・・・・』

『いや、だからこそオタクをしてる時のギャップが凄くて面白いぞ。ユウは十分面白い』

『そうかなあ』

『そうじゃなきゃ五年も友達やってない』


 ルイさんはハッキリとそう言った。

 ルイさんのこういうところが好きだ。何でもハッキリと言う人だからこそ、普段の言葉にも嘘を感じない。話していて面白いという本来なら信じ難い言葉すら、信じざるを得なくなる。


『私もルイさんみたいにハキハキした性格になりたいなあ』

『ハキハキしてることがいい事とは思わないけどな』

『いいと思うよ、私は。それにくらべて私はぁ』

『ユウはしっかり考えてから話してるんだろ。いい事だと思うぞ。ぼくみたいに思ったことハッキリ言うタイプは敵を作る』

『私はいつだってルイさんの味方だよぉぉ』

『はいはい。わかってるよ。ありがとな』


 ルイさんが子供をあやすみたいに優しく言う。


『ユウはいつでも頑張ってるよ。たまには自分を褒めてやれよ』

『うーん、わかんないなあ』

『自分ではそうかもしれないけど、ぼくから見たら褒めるところは沢山ある。だから具体的じゃなくてもいいから、たまには褒めてやれよ』

『私、ヨシヨシ』

『そうそう。ぼくも電波越しに撫でてやる。ちゃんと受け取れよ』

『えへへ、ルイさんに撫でられた!笑』


 眠れなくてグズる子供を寝かしつけるように、いつもよりも少しゆっくりめのテンポで、柔らかく話しかけてくれる。


 その文面を見ていたら、自然と眠たくなってきて、『寝そう』という文字すら打てないまま、意識が遠のいていく。

 返信がなくなった私に、ルイさんが『おやすみ。明日は楽しく話せるといいな。いい夢見ろよ』と言ってくれる。


 それを見たのを最後に、意識をゆっくりと手放した。

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