6.サプライズとプレゼント
「佐倉に渡したい物があって来たんだ。」
ハナの心臓は
なかなか静かになってくれない。
堀君に何か返事をしなければ、
と頭では理解しているのだ。
でもうまく言葉が口から出てこず
ハナはただ堀君を見つめて頷いた。
堀君は背負っていた
黒のバックパックを下ろし
中をゴソゴソ探っている。
「あいつらがさ、
佐倉もクリスマス会来たがってたって言っててさ。
はい。手出して」
あいつらとは、
ユイカとサキの事だろう。
堀君の前であの2人が
自分の話をしたのかと思うと恥ずかしい。
恐る恐るハナは両手を差し出す。
緊張のためか指先が少し震えた。
堀君がハナに渡してくれたものは、
両掌にちょうど収まった。
紺地に小さい星が散りばめられた包装紙に
ゴールドのリボンでラッピングした
プレゼントボックスだ。
「佐倉に俺からのクリスマスプレゼント。
って言っても、
プレゼント交換で当たったやつなんだけど。」
そう言って堀君は笑った。
堀君の笑顔はいちいち
ハナの心臓をドキドキさせる。
「いいの?堀君が当たったのに。」
「うん。クリスマス会来れなかったの、
ばーちゃんの手伝いしてたんだろ?
偉いよな。俺も見習わなきゃなって思ったよ。
だからこれは今日頑張った佐倉に渡したい。
中身はまだ開けてないから。」
「ありがとう」
そう言うのが精一杯だった。
憧れの堀君にクリスマスプレゼントをもらった上に、
褒められた。
頭がクラクラする。
じゃあ、また。と言って
堀君は自転車のサドルに跨った。
ハナは慌てて
堀君の背中に向かって叫んだ。
「ねぇ、一緒にこれ開けてみない!?」
呼び止められた堀君は
驚いた様に目を丸くしてハナを見つめている。
ハナは自分が思っていた以上に
大きな声が出た事に内心驚きつつもう一度言った。
「これ一緒に開けよう」
堀君は安心した顔つきで
「うん。開けよう」と言って
自転車から降りてハナの方へ戻ってくる。