5.突然の来訪者
帰宅すると、ハナはぼんやりとしたまま
ソファに寝転がった。
おばあちゃんは一息つく間もなく、
台所に立ち夕飯の支度を始めた。
本当に唐揚げにしたみたいだ。
今日、何度クリスマスパーティーのことは忘れよう。
堀君のことを考えるのはやめよう、と思っただろうか。
しかしハナの思いとは裏腹に、
考えまいとすればする程
堀君のことで頭と心が一杯になり
押し潰されそうになるのだ。
このままでは何か
自分の奥深くから溢れ出るモヤモヤしたものに
ハナは丸ごと飲み込まれてしまいそうな気持ちになった。
そのモヤモヤの正体が何なのか、
ハナは説明できるほど大人ではなかった。
気分転換におばあちゃんの手伝いでもしようかと
立ち上がりかけた、
その時
「ピーンポーン」
インターホンが鳴った。
「誰かしら。ハナ。玄関出てくれる?
今、手が離せないわ。油を使ってるの。」
「はーい」
返事をしながらハナは玄関に向かった。
宅配便だろうか。
パパはネットでたくさん物を買うけれど
在宅率が低すぎて自分で荷物の受け取りができない。
パパのオンラインでの購入品
ほとんど全部をハナが宅配業者から受け取っている。
最近では配達員のお兄さんと世間話をする程
顔見知りになってしまった。
念の為に印鑑を持って玄関のドアを開けた。
心臓が止まるかと思った。
ハナは今の状況をすぐには理解できなかった。
鼓動が一気に加速する。
ハナの目の前には ハナが今日一日ずっと
会いたくて会いたくてたまらなかった人、
堀君が立っていた。
寒空の中、自転車で走ってきたのだろう。
彼の鼻のてっぺんは真っ赤になっている。
堀君はいつもよりも伏し目がちで
少し決まり悪そうで、
ハナも釣られて目線をずらした。
何か言わなきゃいけない。
でも言葉が出てこないのだ。
気まずい沈黙が数秒間流れた。
たった数秒なのだけど
ハナには永遠に感じられた。
それはきっと堀君もだったと思う。
しびれを切らしたのか
堀君が口を開いた。
「急に家まで来てごめん。」