4.騙されないんだから
粉雪がちらつく中、
ハナとおばあちゃんは家路を急ぐ。
買い物袋は重たいけれど、予定していた用事は全て終わり
おばあちゃんはどことなくスッキリした表情をしている。
ハナもほっとした。
今日一日、ハナとしてはよく働いたと思う。
少しおばあちゃんに愚痴の一つぐらい言ってもいいんじゃないかという気もしてきた。
「おばあちゃん、毎年クリスマスにお正月の用意終わらせるって気が早いよ。
まだ1週間あるんだし。クリスマスを楽しんで、
明日から大晦日までの間に今日やった掃除や買い物を終わらせればいいんじゃないの?」
「私は仏様を信じてますからね。
イエスキリスト様のお祝いって、ピンと来ないね。」
「いや、分かるけど。。
でもさ、ケーキ食べたりプレゼント渡し合いっこしたり、チキン食べたり!楽しいじゃん。」
「あら。じゃあ今日の夜ごはんは唐揚げにしましょうね。」
そういう事ではない。おばあちゃんはズレている。
まだ何か言いたそうな顔をしているハナを見ながら
おばあちゃんは続ける。
「ハナ。あなたは分かっていないのね。
今日ハナは一生懸命大掃除をした。私の手伝いを十二分にしてくれた。」
「うん。そうだね。自分で言うのもあれだけど本気で頑張ったよ。
丁寧にテキパキできたと思う。」
「ええ。その通り。ハナは掃除の筋がいいわ。」
掃除の才能を褒められてもちっとも嬉しくない。
おばあちゃんは言う。
「それで、掃除が終わった後ハナはどんな気分になった?」
「うーん、、終わったー!って解放された感じかな。あとなんだかスッキリしたよ。
疲れてるはずなのに心地よくて。体の表面は寒いけど体の中はポカポカしていて。」
「そうね。ハナ。それは【大掃除の神様】が、ハナに会いに来てくれたからよ。」
おばあちゃんは満足そうに語った。
いや、納得できない。
おばあちゃんは仏様を信じてるって、たった今言ったばかりではないか。
ましてや大掃除の神様なんて聞いた事がない。
そんな子ども騙しの迷信でごまかされたくなかった。
「大掃除の神様が来てくれたんですから。ハナにはすぐ良いことがあるよ。」
おばあちゃんはそう言ったけれど、
ハナはもう良いことなんて絶対にないと思った。
堀君と会えるチャンスだったクリスマスパーティーは、
今頃もうお開きだ。
もしかしたら、クラスの女子が堀君と距離を縮め、
冬休み中に遊ぶ約束をしたかもしれない。
堀君は女子の間で人気があり隠れファンもいる。
ハナはライバルが多い事も知っている。ハナの妄想は止まらない。
おばあちゃんの言葉は何の慰めにもならなかった。