前世の記憶
いきなり時間が少し進みます。何がどうなったのか説明を省いて書いているところがあるのでわかりづらいところがあったらすみません。m(--)m
僕は村の雑貨屋からの帰り道に餓鬼大将のドビーたちに行く手を塞がれた。
「よう、トミーまたクノールのところで店番やって来たのか」
「ああ、そうだけど」
「お前金の勘定まで習ってるそうじゃないか。ここではそんなもの必要ねえだろ」
「僕は大きくなったらここを出て町で仕事をする積りだから必要なんだ」
「てめえっ、弟のラリーに家の仕事押し付けてここから逃げ出す気か?」
ドビーが目で合図するとマイクが僕の背後から羽交い絞めにした。
「てめえみたいな卑怯な奴はゆるせねえっ」
ドビーはいきなり腹パンをして来た。
痛くって苦しい。
「やれっ」
ドビーの一言で、マイクは手を離した。
そして蹲った僕の体をマイクは蹴とばした。
全然手加減しない強烈な蹴りだ。そしてケントとナルも一緒に蹴ったり踏んづけたりした。
ドビーは僕の髪の毛を鷲掴みにするとグイッと引っ張り上げて揺すりながら怒鳴った。
「いったいお前は何様だってんだ? なんでみんなと同じことができねえんだ。むかつく野郎だ」
「こらぁぁぁっ!!お前たち何してるっ?!」
双子の妹のミリーが片手に棒を持って走って来た。
「やばいっ、魔獣が来たっ」
「誰が魔獣だってぇっ!」
ボクッ、ガシッ、ズコ―ン、パー―ン
気が付いたらドビーを始め4人とも頭を押さえて地面に蹲って唸っていた。
「ニイニを虐めたらただじゃおかない。もっと打とうかっ」
「「「ひゃぁぁぁ、逃げろー」」」
ミリーは僕と同じ体格だが、自分より倍以上もある大きなドビーやマイクを全然問題にしないくらい強い。
村に長い間住んでる冒険者のワンドさんに剣術を習っているが、才能があるのか棒を持たせたら村の大人でも敵わないくらいだ。
喧嘩っぱやくて獰猛なので『魔獣ミリー』と陰口を言われてる。
本人は早いうちから、自分は冒険者か傭兵になりたいと言ってた。
だが、今日は様子が変だった。
「ニイニ、ニイニは文官になりたいって言ってたよね」
「う……うん、でもそれはかなり難しいかもしれないんだ」
「でもその考え方は堅実だと思うよ。だって私も兵士か騎士になりたいと思うようになったもの。やっぱり雇われていて安定した給金を貰った方が心配ないものね」
「ミリー、いったいどうしたんだ? 何か悪い物でも食べたのか?」
「違うよ。あー、実はこれは内緒で絶対誰にも言って欲しくないんだけど、約束できる?」
「ああ、ミリーが内緒にしてほしいって言うならだれにも言わないよ」
「私、今日ワンドさんと朝の鍛錬してたらワンドさんの木剣が頭に当たってちょっとの間気絶したんだけどさ」
「だ……大丈夫だったの。なんともない?」
「大丈夫だよ。気絶と言ってもほんの一瞬のことだからすぐ起き上がったよ。だけどそのときにね、ものすごくたくさんのことを思い出しちゃったんだ」
「思い出すって……小さい時のことかい?」
「うううん、私は生まれてから12年経つでしょ? だけど私が思い出したのはもっともっと前のことだよ」
「生まれてないじゃないか」
「驚かないでね。私ってさ、生まれる前はこことは全く別の世界で男として何十年も生きていたんだよ」
それはとても信じられないような内容だった。
ミリーは生まれる前に地球という星の中の日本という国に住んでいて、とても発達した文明の中で男として育ち老人になって病死するまで何十年も生きていたという前世の記憶を持っているというんだ。
しかも秋山次郎という名のその男は結婚して子供も孫もできていたという。
秋山次郎はサラリーマンという仕事をしていて、その世界では平凡だが幸せな人生を送っていたらしい。
さらにその次郎は今のミリーよりもむしろ僕に近い性格で、大人しくって真面目で地道な努力をする人間だったという、信じられない話だ。
「あたしはその次郎さんの生まれ変わりだから、本当は心の奥底は大人しくて地道な人間かもしれないんだ。だから冒険者とか傭兵のような不安定な仕事は向かないかもしれないだろう? それで兵士かできれば騎士になりたいんだよ」
それに対して何を言ったら良いか分からないでいると家に着いてしまった。
戸口の前でミリーが『口チャック』の手真似をしたので、僕は大きく頷いた。
すると母さんが下の妹のアミ―と一緒に出て来て、僕たちに言った。
「ラリーがナルの父さんから聞いた話だと森に死体が出たそうだよ。村の人間じゃなくって旅の人間らしい。若い男だって。それでね父さんもラリーも村長さんやワンドさんたちらと一緒に死体を見に行ってるんだ」
「魔物にやられたの?」
「いや、剣とか槍の傷だけだっていうから魔物じゃないみたい」
「行ってみよう。まだ村から出てないから追いかけよう」
ミリーは母さんが止めるのも聞かず飛び出した。
もっとも彼女は僕とは違って、ワンドさんについて行って森に入ることもあるので平気らしい。
弟のラルズはきかん坊だからミリーの真似をしたがる。
けれど僕や妹のアミ―は気が弱くて臆病だから森に行くなんてとんでもないという感じだ。
村長は他にも村人を大勢連れて行ったらしく、死体を急ごしらえの担架に乗せて村まで運んで来た。
父さんが言うには、死体は十代半ばかそれ以上15から16・7才くらいの冒険者風の子だという。
ミリーが僕の手を引っ張って死体の所まで連れて行った。
ブランケットを被せていたけれど、それを少しめくって顔を見せた。
「ねっ、生きてるみたいでしょ。ということは殺されてあまり時間が経ってないってことなの。ちょっとニイニ、逃げないで。ちょっとおでこに手を当ててごらん。大丈夫だから」
僕は嫌だったけれど、こういうときミリーは絶対やるまで言い続けるタイプなので仕方なく額に手を当ててみた。
「本当だ。生暖かい……あっ」
「なに、どうしたの? もう手を離しても良いんだよ」
手を触れた途端、僕の頭の中に声が聞こえたのだ。
それは男とも女とも区別のつかない無機質な声だった。
『悪魔のスキル吸収L1を獲得しました。実行しますか? Yes/ No』
その声を聞いて僕は思い出した。
僕の前世は悪魔だったことに。
続きます。おもしろそうだとか続きを読みたいと思いましたら、ブックマークを宜しくお願いします。関心を持たれると創作意欲につながりますので、なにとぞご支援宜しくお願いいたします。更新は私生活が多忙な為不定期になりますが、構想は漠然とですができているのでなんとか頑張りますので応援よろしくお願いいたします。