プロローグ
最近何度も書いては途中で腰砕けになって作品を完結できずに削除しています。
今度こそ完結迄頑張りたいのでよろしくお願いいたします。
悪魔の王、蜘蛛と獅子と雄牛の姿をした者たちがその者を取り囲んだ。
『覚悟しろフルーストラ。お前の存在を消す』
三つ首の悪魔の王が笑いながら禍々しい形の杖の先を追い詰められた悪魔に向ける。
『消えろ。ソロモン王に背いた無役の役立たずよ』
杖の先から鋭い光が放たれ、フルーストラと呼ばれた悪魔の翼や角や尻尾が千切れ飛んだ。
とほぼ同時にかの者の体は全く別の光に包まれ瞬時に消滅した。
『何が起きた?』
三つ首の悪魔の王は千里眼の悪魔王に尋ねた。
『無作為、無指定の悪魔召喚にぶつかったのだ。だが、肉体は壊れ、魂も消滅したに違いない』
千里眼の悪魔王ヴィネーはそう答えた。
しかし、ヴィネーは一つだけ間違っていた。
フルーストラはソロモンが使役した72柱の悪魔とは袂を分かち、ソロモンから地位も役目も授からなかった73番目の悪魔だった。
以来数千年の時を経て、悪魔の序列から外れ階級からも外れて自由気ままに過ごして来たのだが、ついに九柱の悪魔の王によって消滅の刑を受けることになったのだ。
だが偶然にもそのとき無作為無指定の悪魔召喚にぶつかったので、その亡骸は王たちの目に止まることなく時空の彼方に消えて行った。
悪魔信仰の信者たちは魔法陣の真ん中に出現した悪魔を見て驚いた。
「どういうことだ。無指定の召喚で、悪魔の亡骸が現れたぞ」
魔法陣の中央には千切れた翼と尻尾に折れた角の悪魔が倒れていた。
それには魂が入っていなかった。
召喚されたのは悪魔の抜け殻だったのだ。
「これの名前はなんというのだ。悪魔の書にも書いていないぞ」
「それより魂はどこに行ったのだ?」
偶然は三つ重なった。ちょうどフルーストラが破壊されたときと悪魔召喚が重なったがさらにそのとき一人の老人が寿命で死んで異世界転生する瞬間と重なったのだ。
『あなたは誰だ?』
『俺か?俺はフルーストラだ。古の無名無役の悪魔だよ』
『私から離れてくれ。これから転生して受肉する予定なんだ』
『それに俺にも一枚かませてくれ。受肉しないと破壊された悪魔の魂は消滅してしまうんだ』
『断る。器が一つなのに二つの魂は定員オーバーだ。』
『そんなの問題ない。俺がお前の魂を吸収してしまえば良いのさ』
『あっ、何をする。やめろっ!』
『こうやって丸呑みすれば、そのうちお前は俺に消化されて一体化することになる。さてっといよいよ俺の新しい体の中に入り込めるぞぎゃああ、痛いどうしたんだ?』
『当たり前だ。この体は私の為の体だから。あなたは異質なものとして拒否されているんだ。諦めて私を吐き出したなら向こうへ行ってくれってな……何をする?』
『お前なら拒否されないだろうから、お前の中に潜り込ませて貰う。今度は逆に俺がお前に消化されて一体化することになるだろうが、俺は悪魔だ。簡単には消滅しない』
『……いや、消えてくれよ』
私は生まれた直後はこのことを覚えていたかもしれない。しかし起きる前に見た夢はすぐ忘れるように、まもなく私は自分には前世があったことすらも忘れてしまったのだ。
次回から本編が始まります。よろしくお願いいたします。






