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天界ワースト  作者: 岩井碧月
なんとか牧場ザコ天使失踪事件
31/31

きょうもここにいる

 エトラと和解した俺たちはその後、神化で巨竜の姿になったアーファルグに結界で梱包され荷物のように運ばれながらゲートを通って地上世界へと戻り、そのまま天界へと帰還した。


 俺たちと入れ替わりで楽園の監視にやってきた天使の数は百を超えていた。

 おまけに楽園に召喚される直前まで行っていた牧場での任務も既に他の天使が引き継いでいた様子で、今回の件はそこそこ大事になっているようだ。


 そして————あれから既に数日が経過したが、事情聴取のため神界へ呼ばれたエトラが未だに戻ってこない…………。


「エトラ、大丈夫かな」


「心配ですね……」


 アーファルグから任務放棄の罰として30日の謹慎処分を受け、せっかく都合よくのんびりできるはずだったのに、いつもであればリラックスできるクッションの上も今はどんな体勢をしても落ち着かない。


「はぁ……ショップにでも行ってくる」


「は、はい……」


 トボトボと部屋を出て行くクロンの後ろ姿を心配そうに見つめるメイリーとパルテ。


「クロンの方が心配」

「一昨日ぐらいからずっとあんな感じですよね……」

「クラウンと数日連絡が取れないなんて当たり前なのに」

「まぁあの一件でかなり仲が深まったみたいですし、気持ちは理解できますが」

「ショップで良い物見つけて元気出るといいけど」

「そう簡単にいきますかね……」


 一方ショップを訪れたクロンは、入店早々人混みに嫌気がさし自分の部屋に帰ろうとしていた————


「ん~……」


 なんで今日に限って客が多いんだよ……。


 新アイテムのコーナーだけチェックしてさっさと部屋に戻るか。


「何かあるかな……」


 人間の子供に好かれる指輪、会話ができるぬいぐるみ、迷宮用の万能コンパス…………要らね」


 お? これは——


 ギフト用の透明感のある青いティーカップが目に入り思わず手を伸ばす。


 すると、隣に居た誰かと手と手がぶつかった。


「あ——いいよ、俺はもう帰るとこ……ろ……」


 手がぶつかったその相手と顔を見合わせた俺は言葉を失った。


「クロン……! ちょうどこのあと会いに行こうと思って、皆にあげるプレゼントを探してたところなの」


「え、えええええええ——エトラ……!?」


「驚きすぎ」


「いや——いやいやいや、神界に連れて行かれたまま戻ってこないから心配したんだぞ!?」


「あれ……? しばらくエスフェルさんと行動することになったから時間ができたら顔を出すって、私メッセージ送らなかった?」


「はぇ~?」


「もしかして読んでない?」


「………………ぁー……ごめん……。俺任務の通達以外は確認するのが面倒でいつもそれ用の箱にカード突っ込んでるから……エトラがくれたメッセージもその中にあるかも」


「も~ちゃんと読んでよ~……」


「ごめん……まさかこっちに戻らずに任務に入るなんて思ってなくて」


「ううん、こっちこそごめんね心配かけて。二人は元気?」


「元気だぞー、メイリーは謹慎期間の長さに未だグチグチ言ってるけどな」


「そっか、私のせいで……」


「あー違う違う、エトラには怒ってないよ? メイリーが怒ってるのは俺に対してというか、俺が楽園から出ようとしなかったせいで任務が中断じゃなくて放棄扱いされてまともに30日謹慎になったことに対してだから、だいじょーぶ」


「それって、大丈夫なの……?」


「大丈夫いつも通り。あ、ちなみにケダマも居るぞ」


 髪の毛の中に隠れていたケダマが顔を覗かせる。


「久しぶりケダマ————って、あれ? 天界ってペット禁止じゃなかった……?」


「アーファルグに許可貰った」


「そ、そうなんだ……」


「スンッ」


 ていうか思ったけど、いつもより客が多いのはこっそりエトラを見に来てる奴らが原因では。


「とりあえず戻ろ、二人も会いたがってるぞー」


 エトラを引っ張りダッシュで店を出る。


「え、皆にあげるプレゼントがまだ——」


「あとでまた来ればいいって」


「待って、待ってってば~」


 問答無用でエトラを部屋に連れて戻った俺は、中に入るなり床に転がっていた飴の瓶につまずく。


「たっだいまぁ————ぁあぶっ、ぐふっ——」


「クロン!? 大丈夫……!?」


 一人クッションの上に倒れた俺に慌てて駆け寄るエトラ。


「え、エトラさん……!?」


 突然現れた彼女にメイリーは思わず抱いていたぬいぐるみをテーブルに転がす。


「急に押しかけてごめんね。色々あっていつこっちに戻れるか分からないって一応メッセージは送ったんだけど」


 エトラのその台詞でおおよそ察しがついたメイリーは大きくため息をつき頭を抱えた。


「すみません……クロンさんに遠慮して通知の管理に手を出さなかった私の落ち度です……」


「ううん、気にしないで」


 すると、エトラを見て何かに気付いたパルテが彼女に尋ねる。


「直したの? 光輪」


 クッションの上で寝返りを打ちエトラを軽く見上げると、俺が壊した彼女の光輪は確かに元通りになっていた。


「……うん。直すのはちょっと抵抗あったけど、ハウラには二度と戻らないって条件で、クラウンとしてアルト様に仕えることになったの」


「パトリア島のデカブツを俺たちに押し付けたあのエスフェルと一緒に行動してるんだってさ」


「クロンさん、誤解を招く言い方しないでください。でも、エスフェルさんと一緒と聞いて安心しました。クラウンの中でも特に頼りになる方なので、何かあったらすぐに相談するといいですよ」


「ありがとう、そうするね」


 パルテがエトラに手招きし、飲み物やお菓子が並んだテーブルへと誘う。


「あ、メイリー」


「なんですか?」


「光輪で思い出したんだけど、メイリーって光輪直せるの?」


「あぁ、あれは特殊なオーブを使って一時的に修復してただけです。私の光輪の欠片を元に作られたアイテムなんですけど、二つとも使ってしまったのでもうあんな風に自分で修復することは出来ません」


 そう言う割には平気な顔してるな。


「ほぉ~ん。まぁ似合ってなかったから良いんじゃない?」


「はいぃぃーーー!?」


 メイリーがぬいぐるみをテーブルに叩きつけて椅子から立ち上がった。


「だって割れてる方で見慣れてるから」


「だからって似合ってないは——」

 大股で近づいてきた彼女が俺に馬乗りになり、鷲掴みにしたぬいぐるみを振り下ろす。


「言い過ぎじゃないですかぁ!?」


「いでぇっ! だって事実だろ!」


「わざわざ言う必要ありましたぁ!?」



「と、止めなくていいの……?」

「心配ない。そのうち収まる」


 エトラとパルテはそのままティータイムを始めた。



「いだい! やめろってメイリー!」


「先に何か言う事がありませんかっ!?」


「顔! ぬいぐるみの顔伸びてる! 首取れるぞ!」


「そうじゃないですよねぇ!? 他にはぁ!!」


「怖い! 顔が怖いぞメイリー!」


「誰のせいですかぁぁ!!!」


「いやぁぁぁああああああああ!!!!!」


 メイリーの攻撃はぬいぐるみの首が取れるまで続いた。


 それでもなお彼女の怒りは収まらなかったが、今後メイリーがショップで買う予定の新作のぬいぐるみは全て俺がプレゼントするということで話がついた————

物語は新たな舞台————神の眠る迷宮都市へ!



クロンが迷宮のボスになる!?

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