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天界ワースト  作者: 岩井碧月
隠れ家探しは預言者パルテ
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かりょくぶそく

 パルテが魔獣カブスの胸部に大ダメージを与えた後、奴の再生によって引き起こされた大波に飲まれてしまった俺だったが、早々に触手によって海中から叩き出され再び嵐に晒されることになった。


「ぶふぅぅぅ!!」


 暴風に飛ばされ慌てて近くの触手に掴まった俺は、視界が悪いなか周囲を見回しパルテを探す。


「お~い、パルテ~!」


「ここ」


 微かに声が聞こえた右下の方を見下ろすと、海面から顔を出し荒波に揺られながらパルテがこちらに手を振っていた。


 すると次の瞬間——海中から凄まじい勢いで一本の触手が浮上し、海面に浮かんでいたパルテを空中に叩き上げる。


「パルテ!」


 彼女は俺が助けようと動くよりも先に触手から触手へと飛び移り、俺の元にやってくる。


「大丈夫?」

「うん」


 しかしそう言って頷いた彼女の翼は酷く損傷し、片足も失っていた。


「まったく大丈夫そうには見えないけど」


「さっきの波動でケガしただけ」


 するとパルテは触手に掴まったまま俺の目の前で体の損傷した部位を瞬く間に再生させた。


「おぉ……便利だね~……」

「天使ほどじゃない」

「半分天使のくせに」


「それより、どうやって倒す?」


 いやこっちが聞きたい!


「さぁ~、あるのかどうかも分からない急所を探すにしても、攻撃したらどうせまた再生して何かしらぶっ放すぞあいつ……」


「……」


「俺たちが海に落ちたら執拗に海中から追い出そうとするのはちょっと気になるけど——まぁスカートを気にするメイリーじゃあるまいし、まさか海に浸かってる触手の中に急所があるなんてことはないよね~」


「いや、ありそう」


「——え? 半分冗談で言ったんだけど……」


「潜ってみる価値はある」


「ぉぉぉ俺は嫌だぞ!?」


「じゃぁ引き続き囮よろしく」


「え~でも俺あいつに無視されてるっぽいから——っておい! またそうやって話の途中で…………」


 パルテは俺に囮役を押し付け、荒れ狂う海の中へ颯爽と飛び込んでいった。

 それと同時に、海中に潜った彼女を追い出そうと早速カブスが動きをみせる。


 気付けば最初よりもパトリア島とカブスの距離が明らかに近くなっていた——もう悠長にしている暇はないのかもしれない。


 それでも————


「安全第一、命大事に、危なくなったら逃げる————よし、ちょっとだけ頑張ろう」


 触手から離れた俺は雨に打たれ暴風に吹かれながら、カブスの下まぶたへと移動した。


 火力不足の俺が何をしたってこいつには相手にされない。

 裏を返せば、俺はこいつに対して一方的にやりたい放題というわけだ。


 暴風に飛ばされないようカブスの目の下にべったりと張り付き、一つしかない奴の目玉に右手を向ける。


「俺のターン——目つぶし!!」


 さすがの俺もこんなゼロ距離では攻撃を外しようがない。


 右手から放った光の玉は見事カブスの目玉に直撃し、奴の体を大きく仰け反らせた。


「よし……!」


 肝心なのはここからだ。


「来るなら来い! 絶対避けてやるからな!」


 カブスが再生と攻撃が始まる——ここを乗り切ってまた俺のターンだ!


 それを繰り返していればきっとパルテがこいつをどうにかしてくれる、はず!!


「あれ……隠れるところ無くない!?」


 気付いた時にはカブスの再生は始まっていた。

 それに加え辺りの風が急激に強まり奴の体を包み込むように海水が渦巻き始める。


「ぁぁああ波動のやつだ、どうしようどこに隠れよう……!」


 あたふたしているうちに渦はあっという間に首元まで上昇していた。


「やばっ!!」


 咄嗟の判断の結果、俺は目の前でぱっくりと開いている奴の口の中に飛び込むしかなかった。


 渦を回避し飛び込んだその口は直後に勢いよく閉じられ、外で大きな波動音が鳴り響いた。



 そして俺は、奴の再生と攻撃が収まったタイミングを見計らい————激臭のするネバネバとした口の中から全力で這い出た。


「ぶぉぉぉぇえええ……! くっっっさっ!! ほぉぉぇぇえ……! ゲッホゲッホッ…………!」


 クソッタレ魔王、ペットの口臭ケアぐらいしとけよ……!


 臭いが目にしみる……早く海に飛び込んでこの全身のネバネバを洗い流さないと……!


「おぉえ……!」


 カブスの口から脱出した俺は体を洗う時間を稼ぐためもう一度奴の目玉に光の玉をお見舞いし、そのまま重力に身を任せて海に落下した。


 両手を使い海中でひたすら自分の体をコーティングしたネバネバを洗い落としていたその時————突然暗い海底から謎のうめき声が聞こえ、周囲でうごめいていた無数の触手が急激に浮上を始める。


「ん……? ん!?」


 そして俺は触手の浮上によって起きた波にさらわれ、海中から放り出され派手に宙を舞った。


「だぁ~!」


 暴風に飛ばされる俺の視界の中で徐々にカブスの体が後ろに倒れて行く。


「まさか、パルテが倒した!?」


 そう思い空中でガッツポーズをしようとした時だった——カブスの胴体が海に浸かると同時に、奴の下半身となる触手の間からもうひとつの巨大な背中が海面に覗いた。


「————は?」


 まるで鏡のように奴の体が海面でひっくり返り、もうひとつの姿を晒したカブスが不気味な声をあげながら起き上がる。


「パルテのやつ倒してないじゃん!!」


 俺はそう悲痛の叫び声をあげながら勢いよく海に落下した————

次回 『ただのどていへん』

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