プロローグ
初投稿
夢見心地の気分だ。
「おい、マサツグのやつ、まだ寝ぼけてやがるぜ」
浅い眠りから目を覚ますと、蒼い瞳と同色の髪を後ろで結わいた細身の男が大身槍を携え、からかうような態度でニマニマとしているのが見えた。
(なんだ、お前か。昨日お前が馬鹿みたいに突っ込のを俺が尻拭いで庇ってやったのを忘れたな、レビオッツォ)
「ふふ、昨日は大分お疲れのようでしたから。マサツグさえよければ、バチッと一発キメときますか?」
隣を見れば、眼帯で両目を覆った神官がくすくすと笑う。
だがその笑顔とは裏腹に持っている神杖の先端部についた水晶球は、不吉な金切り音をあげている。
(ナターシャのは洒落にならんぞ。…ん?)
(おい、有栖、起きろ有栖。また夜寝れなくなるぞ。 )
膝の上で眠っている黒猫のような髪色をした少女を無造作に揺らす。
「んむ、うう…おはよ…お兄ちゃん」
腰まである黒髪をくしゃくしゃとかきあげ、我が家と言わんばかりに居座る有栖を膝の上からどかす。
まだ意識が朦朧としているのか、呼び方が昔の頃に戻っている。
「お二人共、大変気持ちよさうに寝ておられましたぞ。さぁさ、皆さん揃ったということで、昼食に致しましょう。恥ずかしながら拙僧、先程から腹の虫が収まりませぬ。」
恰幅も背丈も先の男のゆうに二倍程はあるハイオークのリンデロフが四本ある腕を器用に使いながらテキパキと昼食の支度を始める。
(ああ、そうしよう。)
のどかな雰囲気に包まれ、歓談しながら昼食を摂る五人。
その輪の中に存在する認識はあるのに、意識は遥か上空から彼らを見下ろしている。
その矛盾に気がつくと突如、得も言えぬ浮遊感に襲われた。
ああ、これは夢か。…はは、どうりで都合がいい。だが、夢ならこの後起こることも、どうにだってなるさ。
そうだろ?みんな。
「「「………」」」
(なあ、レビオッツォ。
お前はあの日、なんでその矛先を俺に向けたんだ。
見捨てられたお前の故郷、その代表として世界で一番どデカくなるって一緒に息巻いたじゃないか。)
「……」
(ナターシャ、お前がいつか言っていた来たるべき日ってのは、あの日だったのか?
ならなんで、あの時涙を流せたんだ。
呪われた弟を救けたいって言ってたよな。あれも嘘だったのか?なぁ、答えろよ。)
「……」
(リンデロフ、お前とは最悪な出会いだったな。
だけど、信仰心豊かで、核の持った立ち振る舞いにまだガキばかりだった俺らは何度も救われたさ。)
でも、お前は、お前らはっ………。
(なぁ、リンデロフ。あの馬鹿みたいに豪快な笑いの下で、お前は何考えてたんだよ。)
……教えてくれよ。
「「「……………」」」
ああ、そうだったな。
畜生、くそったれが。