6話
「大気先輩ですか、」
あ、会いたくない人がまた一人。前にバレーボール部のマネージャーをやった時に見ていた子だ。
「そうだけど、」
半年で顔は変わらないし、体型もそこまで変わってないぞ。
「本当に、本当に学校に戻って来たんですね。」
泣いてるし。 あー、あー、お迎えムードね。今の一瞬で前より嫌になった。
みんな俺を見てるし。横にいる友達も「良かったね、良かったね。」と肩をトントンしながら、貰い泣きしてる。この感動の再会オーラを出すの、止めてくんね。
「ごめん、お腹空いたから学食行っていい?」
「あ、あの、その一緒に!学食で食べませんか?」
そういえば昔は一緒にご飯食べたことが何回かあったな。
「いや、友達も居るし。」
「あ、私は他の友達と食べるので大丈夫です。」
すぐに泣き止みすぐに退散しようとする後輩の友達を俺は逃さない。
「いや、待って!俺は一人で今日は食べたいから、ごめん。」
「せっかくですから、一緒に食べてあげて下さいねー」
結局止まらず、そのまま逃げやがった。
「先輩その、お邪魔ならどきます。」
お邪魔より、上だよ目障りだよ。
はぁー
「いいよ、一緒に食べよう。」
「ありがとうございます、先輩!」
さっさと食べて、移動しよ。
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私にとって、先輩は恩人だった。
中学の頃から、正直ぶっちぎりでバレーボールが上手い私は、皆に距離を置かれていた。
「私達アンタみたいに天才じゃないから」
毎日のように天才と言われた。
高校でも同じだった。入ったばかりなのに、レギュラーに選ばれた私はみんなに距離を置かれた。
道具の片付けを任された私は、そのまま少し体育倉庫で泣いていた。
そして、マネージャーの先輩が来てくれた。
「遅いから心配したよって、えっどうしたの?大丈夫?虫でも居た??」
唯一この部活で私のことを天才と呼ばない先輩に、泣いていることがバレてしまったから、そのまま天才と言われて悩んでいることを言った。
「俺も、宮本は天才だと思ってるよ。」
「えっ、」
「そりゃそうだろ。上手い人ばっかりのうちのチームで一年でレギュラーに選ばれてるし」
「そうですよね。」
この時は相談しなければいいと思った。せめて聞かなければ私の中では唯一の味方で居てくれたんだ。
「練習は誰よりも頑張ってるし、こうやって誰よりも片付けを真剣にやっている。上手くないわけがない。」
「はい。」
「でさ、さっきの悩みのことなんだけど、天才で良くない?」
「・・・それが嫌で、私は真剣に悩んで、苦労しているんです。」
「そうなんだろうな、こうやって片付けさせられて泣いてるんだもん。」
「そうですよ!そうなんですよ!」
「なぁ宮本は、上手くなれて嬉しい?もっと上手くなりたいと思う?」
「・・・はい、バレーボール自体は好きですから」
「そっかなら、天才とは切り離せないものだよ。」
「どう言うことです?私よりもっと天才な人は沢山いますよ!」
「この世にさ、努力の天才って言葉あるだろ」
「ありますね。」
「元から上手い奴が天才で、才能ない奴がが頑張ったて上手くなったら、努力の天才になる。どう頑張っても上手い=天才になるんだろうね、」
「・・・」
「ニュアンスの違いはあるけど、プロとか宮本みたいな、隠れた努力した人は、周りの人は努力を知らないからただ天才に見えるだろうな。」
「じゃあ、どうすれば、」
「そうだね。宮本は努力の天才だから、他の部員も天才にしちゃおうか。」
「ど言うことです?」
「みんな努力の天才にすれば、宮本は一人だけの天才じゃなくなるってことだよ。」
それから、先輩は(人はみんな努力の天才計画)を立ち上げた。
先輩は監督とキャプテンに話をして練習メニューを変えた。
そして、何人かは辞めちゃったけど、
「私アンタより、ジャンプ上がったから、ブロックは宮本より上手いよー」
「レシーブは任せて!」
チームは、私より上手い部分を見つけていった。
段々と私を「天才」と言う言葉は減り、私は少しずつチームと打ち解けていた。
先輩は、私に聞いて来た。
「宮本は頑張る人は好きか?」
「好きです。最近チームも仲良くなれて一緒に頑張ってくれるから好きです。」
「俺もだ。頑張る人は好きだ。だから、」
先輩は頭に手を置いた。
「マネージャーの俺は宮本の努力を知っている。だから宮本はもっと自分の努力を認めて、俺も好きで宮本自身が努力の天才な自分をもっと好きになればいい。」
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高校の学食
先輩は私にとって恩人だった。けど私は冤罪を受けた先輩を助けもせず、むしろ勝手に見限ってしまった。
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