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第二四話 リフレクター

「や、やっと三階か……」


「秋楡が道間違えるからよ、もう……」

 僕と海棠さんは今三階の入り口に立っている……階段を上がってすぐに大きな扉が設置されており、その先が見ることができないようになっている。

 一階の砲台を破壊した後、二階へと上がるとそこはわざわざ迷路状に構成された通路だけの階となっており、色々彼女と相談した結果、僕が前を歩くことになったのだけど……自慢じゃないが僕は迷路を解くのが得意じゃない、海棠さんが途中で変わってくれなければ同じ場所をグルグル回ることになったかもしれない。

「ご、ごめん……僕迷路とかすごく苦手で……」


「……抜けれたから思ったけど、何かしらの認識を妨害する罠とかあったのかもね……私も途中で居場所がわからなくなったし……」


「そ、そうなのかな……でも僕海棠さんと一緒でよかったよ」


「え? な、何急に……」


「だって海棠さんが正しい道順を進んでくれなかったら、僕ずっと出れなかったかもしれないし……ありがとう」


「い、いやぁ……まあ私に感謝してもいいのよ、だ、だからね私のことは……」

 僕の言葉に海棠さんは少しだけ恥じらうような表情を浮かべると、僕の顔を見上げて話しかけてくる……試験の時も思ったけど彼女は美少女と言ってもいいくらい顔立ちが整っており、じっと見つめる彼女の眼差しに思わず僕もドキッとしてしまう……彼女が言おうとした言葉の続きが気になってしまい、じっと見つめあったまま、ほんの少しだけ時が止まる。

 だが、その言葉を遮るように目の前の扉が一人でに音を立てて開いていく……僕も海棠さんは何かを喋ろうとした格好のまま固まってしまった。

「あら? お取り込み中だったかしら? もしかしてお楽しみ中?」


「……い、い、え……ぜ、全然ッ!」

 まるで錆びついた機械のようにギギギギと軋むような動きで扉の先から声をかけてきた人物に海棠さんは向き直る……何を言いたかったのか続きが気になるけど、僕もその声の主の方へと目をやると、そこには一人の男性が立っている。

 その男性は……見たことがない人物で、ピンク色に染めた髪に、割と仕立ての良いスーツに身を包んでいる。衣服からのぞく肌は浅黒く、細身だが相当に鍛えているのだろう立ち姿が明らかに常人のそれではない隙のない姿をしている。

「あら、そうなの? 私が君たちくらいの年齢の時は、毎日可愛い子のことばっかり考えてたわ……」


「海棠さん待って……あなた誰です?」


「秋楡? ……この人先生じゃない……?」

 海棠さんはキョトンとしてそのスーツ姿の男性を指さして僕の顔を見るが、僕の感覚に何か嫌なネットリとした不快感を感じて眉を潜める。

 なんだ? どこかで似たような感覚を……僕の表情に気がついたのかニヤリと笑うと男性は胸に手を当てて、少しだけ科を作ると僕たちに向かって名乗ってきた。

「こんにちは、可愛いヒーローの卵さん……私の名前はリフレクター……ヴィランよ」


「!!」

 その一言で海棠さんと僕は身構える……どうしてこんな場所にヴィランが……あの夜ファイアスターターに近い感覚、ネットリとしたような不快感を感じる……絶対にヒーローじゃない。

 リフレクターと名乗るヴィランはクスクス笑いながら、まるで戦う意思がないかのように軽く手を広げると肩をすくめる。

「どうして私がここへ? と思ってるかしら……そうね、ちょっとしたお使いを頼まれてたの……だから、見逃して欲しいのよね」


「ふざけるな! 弾丸(バレット)ッ!」


「あらあら……女子の方は随分気が荒いのねえ……でもっ!」

 ほぼノーモーションで海棠さんは弾丸(バレット)を射出する……高速で飛翔していく水の弾丸は、リフレクターが軽く手をかざすと、滑らかに方向を変える。

 あまりに滑らかな方向転換に思わず舌を巻いてしまう……まさにヴィラン名でもあるレフ板(リフレクター)とも言わんばかりの卓越した能力に驚くも、僕は考えるよりも先に一気に呼吸を変化させ(ロン)を足へと漲らせると全力で飛び出す。

「海棠さんッ!」


「あ、なっ……」

 彼女はまさか目の前のヴィランが自分の放った攻撃を弾き返すなどと思っていなかったのだろう……迫り来る弾丸(バレット)を前に完全に固まってしまっている。

 僕は彼女の体を抱き寄せてお姫様抱っこに近い状態で抱えると、そのまま反対側の壁際にある柱の後ろへと滑り込む……弾丸(バレット)はそれまで海棠さんがいた場所の地面に衝突すると、コンクリートを削り取りながら四散する。


「あら……スピード系なのかしら……でも、安心、私が対処できるレベルの能力のようね」

 リフレクターは柱の後ろへと逃げ込んだ僕らを追いかけるわけでもなく、その場でこちらの様子を伺っている……多分、僕らのような学生であれば簡単に対処できると思っているのか、余裕を感じる。

 まずいな……この学園内にヴィランが入り込んでいるというのも大問題ではあるけど、このビルから逃げ出すためには、階段を戻るか外へ飛び出す必要がある。

 僕自身はおそらく三階から飛び降りたとしても龍使いの能力を使って、壁を蹴ったりすればなんとかなるかもしれない……だが海棠さんを置いていけばという前提条件がついてしまう。

「秋楡……ッ」


「……海棠さん、大丈夫?」

 ふと、抱えている海棠さんが小刻みに震えていることに気がつき、彼女の顔を見ると海棠さんは両手で自分の口元を押さえていることに気がついた。

 僕はそっと彼女を地面へと下ろすと、彼女に怪我がないかどうか目視で確認する、咄嗟に抱きかかえてしまったけど女性には本当に失礼だったろう……後で謝らなければ、と思って彼女の顔を見ると目に涙を溜めつつ歯を食いしばっている。

「あ、あいつ……私の弾丸(バレット)を……先生と一緒に苦労して作り上げた技を……」


「海棠さん、あいつの能力はおそらく反射、手をかざすとその攻撃を反射できるのかも。だから、別方向から同時に攻撃をする必要があると思う」


「……勝算は?」

 彼女の言葉に、僕は苦笑いしてから首を横に振る……わからない、というのが正直なところだ、それ故に割と行き当たりばったりな攻撃を仕掛けなければいけないだろう。

 このビルに入ってそれなりの時間が経過している……おそらく先生も中で何が起きているのかは把握していないだろうが、時間がそれなりに掛かれば異変が起きていると考えるかもしれない。

「今は時間を稼ごう、訓練よりもヴィランをどう対処するのか、そっちの方が大事だと思う」




「……遅すぎる……試験の結果を考えても、この時間は異常だ……」

 スーパーマッチョは手に持ったストップウォッチの時間を見ながら、眉を顰めている……確かに一階には妨害施設を置いているが、二階三階にはそういった施設は置かれておらず上下に移動する訓練のつもりで設定したはずなのだから。

 一階の防衛施設を破壊した時点の時間から考えると戻ってきてもおかしくない時間なのだ。

 教員向けに支給されているタブレットを取り出し、各階のカメラを確認する……一階、二階にはすでにいない、では三階をとボタンをタップしても映像が出てこない。

「む……故障をしているはずはないのだが……」


「マッチョ先生、どうしたんですか?」

 難しい顔をしているスーパーマッチョに気がついた訓練をある程度終えた二年生が彼の元へとやってくる……スーパーマッチョはタブレットを操作し、別のアプリより監視カメラ機能の動作状況を確認していく。三階のカメラだけが異常値を示しており、何かが起きていることだけが表示されている……・

「秋楡と海棠に何かが起きている……三階にいるはずだが、カメラが表示できん……あそこは窓がついていないからな……壁を破壊して中の状況を確認しようと思うが、木瓜、鬼灯……救助訓練と同じ要領で手伝ってもらえるか?」


「お任せください」

「任せてよ先生!」

 二人の明るい声に、スーパーマッチョは笑顔を浮かべると作戦を指示し始める……伊吹、捩木の二名にも合わせて行動指針を伝えつつ、彼はタブレットにある緊急警告装置を作動させる……できれば何事も起きていないといいのだが。

 一抹の不安を感じつつもスーパーマッチョは生徒たちにサムズアップをすると、木瓜へと小さなスイッチを渡す。


「よし、突入後何が起きているか確認しつつ二人を回収、撤退。もし戦闘行動が必要な場合でも全力で退避すること……俺が必要な場合はこのスイッチを押してくれ」

_(:3 」∠)_ ようやくヴィラン登場……異能力バトル小説なのに割と違う話が多いのは学生っぽい感じにしたいからです(笑)


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