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赤と黒の輪舞曲~【桜咲く国の姫君】続編・ギルフォードルート~  作者: 咲来青
第8章 満月の夜には

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第10話 良い子すぎる天才剣士

 ぶるぶる震えながら、一緒に眠ることを拒否し続けるシリルを、どうにかこうにか説得して。

 彼と私は、今、ようやく同じベッドの上で横たわっていた。


 シリルは仰向けで目をつむり、胸の上で両手を組み合わせて、まるでお祈りしてるみたいに見える。

 私は月明かりがまぶしいせいか、なかなか寝付けなくて、しばらく右を向いたり左を向いたり、はたまた正面を向いたりと、落ち着かなかった。


 まんじりともしない状態に、とうとう耐えられなくなった私は。

 シリルの様子を窺いながら、そっと話し掛けてみた。


「ねえ、シリル。……もう眠っちゃった?」

「い、いえっ! まっ、まだ、起きてますっ」


 すぐさま反応が返って来て、ホッとする。

 だって、もし眠ってたんなら、起こしちゃったことになるし……そんなの、申し訳ないもんね。


「今日はごめんね。ギルが変なことばっかりして……。あの……あーゆー人ではあるんだけど、悪い人じゃないんだよ?……えっと、だから……出来れば、嫌いにならないで欲しいな……なんて……」


 さっきまで散々怒っていたクセに、妙なものだと、自分でも思うけど。

 何故か私は、ギルの弁護をし始めた。


「あのっ、普段はね、あんな感じじゃないんだよ? もっと頼りがいがあるってゆーか、堂々としてるってゆーか――この国の人達には、すごく好かれてるって話だし。弟のフレディなんかね、『今すぐにでも、国王になっていただきたいくらいだ』とかなんとか言ってるしね、その……。とっ、とにかく、私の前だとあんな風になっちゃうけど、他のところでは、ちゃんと……ちゃんと王子っぽいってゆーかっ!」


 そこまで言うと、シリルは顔だけこちらに向けて、


「姫様……? あの、僕……ギルフォード様は、とても素敵な方だと思ってます、けど……?」

「えっ!?」


 意外な言葉が返って来て、思わずすっとんきょうな声を上げてしまった。


「え……? だっ、だって、シリルの前でギル……変なとこしか見せてなかったよね? それでどーして、素敵だなんて思えるの?」


 彼はにっこり微笑むと、こちら側に寝返りを打ち、


「ギルフォード様と姫様は、ご婚約なさってるんでしょう? でしたら、ギルフォード様の行動は、当たり前だと思います。……ギルフォード様を見てると……あ、いえ、拝見してると、姫様のことが、好きで好きでたまらないんだなぁってこと、すごく伝わって来て……僕、嬉しくなっちゃうんです。姫様のご婚約者が、姫様のことを、誰よりも大事に想っててくださる方で、よかったなぁって」

「……シリル……」



 びっくりした。

 まさかシリルが、そんな風に思っててくれたなんて……。


 一方的にヤキモチ焼かれて、『シリルだって男だよ』なんて、信頼もされてなくて……。

 きっと、傷付いたり、嫌な気持ちになったりしてるんだろうなって、思ってたのに……。



「僕の大好きな姫様を、あんなに大好きでいてくださるギルフォード様……僕、大好きです。……あ、でも、姫様ほどではないですけど……」

「シリル……」


「あっ。ご、ごめんなさいっ! 『姫様ほどではない』なんて、失礼ですよね……。でもっ、ホントに好きですからっ! ギルフォード様のことっ、僕、ホントに――っ」

「シリル!」


 嬉しくて、つい、彼の頭を抱き寄せて、ギュウっと抱き締めてしまっていた。


「ひっ、姫様っ?」


 胸元で、シリルのくぐもった声が聞こえたけど、構わず、更に強く抱き締める。



 これはいつもの発作じゃない。

 今、シリルを抱き締めてるのは、『萌え』じゃなく、『感謝』の気持ちの表れだ。


 可愛いから抱き締めたんじゃなくて――嬉しいから抱き締めた。

 嬉しくて、幸せで……抱き締めずにはいられなかったから。



「ありがと、シリル。シリルの気持ち、すっごく嬉しい。ギルのこと、よく思ってないんだろうなぁって、勝手に心配しちゃってたから……。だから、シリルが彼のこと――ギルのこと好きになってくれて、本当に嬉しい」

「姫……様……」



 ああもうっ。ホントに、なんて良い子なんだろ?

 こんなに良い子のこと疑うなんて、ギルってば、やっぱりよくないよ。


 一方的に怒って、ギルを隣の部屋に閉じ込めちゃったこと、後悔し始めてたんだけど……。


 でも、やっぱりこれでよかったんだ。

 シリルの純粋な心を疑うようないけない人は、冷静になって、ちゃんと反省してもらわなきゃ。



「シリルが無事でいてくれて……ホントによかった」


 頭を撫でながらつぶやくと、シリルが、ハッと息をのむ気配がした。

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