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第11話 毎度お騒がせします!

「一瞬だけの帰国、か……。それはまた、不思議な体験をしたね。目の前にいたのは、確かにセバスだったんだろう?」


 私の話を聞いてから、しばらく神妙な顔をして黙り込んでいたギルは、ふいにベッドに腰を下ろすと、私の肩を抱き寄せた。


「ちょ…っ、ギルっ? そっ、そこにシリルが眠ってるんだから、あんまり変なことしないでっ」


 慌てて振り解こうとした手を、彼はもう片方の手で阻むと、


「変なことって――。私は君の肩を抱くことすら許されないのかい? それはあまりにもひどいよ。それでは全然、恋人同士という気がしない」


 拗ねた口調で告げ、不満げに私の顔を覗き込む。


「だ、だからっ!……べつに、ずっとダメって言ってるワケじゃなくて……。シ、シリルが側にいるんだし、今彼が目覚めて、こんなところ見られちゃったりしたら、どう言い訳するつもりなの?――ってこと!」

「何故、言い訳なんてしなければならないんだい? 私達はれっきとした恋人同士で、将来を誓い合った仲だ。そんな二人が睦まじくしているところを見られたからって、どうして慌てる必要がある?」


 そう言って私の手首をつかんで引き寄せると、息が掛かるほどの距離まで顔を近付け、責めるようにじっと見つめる。


「……だ、だって……シリルはまだ、十一歳の男の子なんだし……。わ、私達のこーゆーとこ……見せるワケには行かない……し……」


 目をそらせながら答えると、ギルは突然、覆い被さるようにして唇を重ねて来た。


「――っ!」


 びっくりして逃れようとしたけど、毎度のごとく無駄な努力で――。

 私は彼の腕の中で、早々に観念し、大人しくキスを受け入れることしか出来なくなる。


「……こういうのが、『こーゆーとこ』?」


 唇を離すとすぐ、彼はからかうような笑みを浮かべ、私の髪を優しく撫でた。


「――も…っ!……もうっ! わかってるならやめてよっ、こーゆーことっ!」


 カッとなって言い返すと、彼はすごく楽しげに、私の髪に指を絡ませては解き、絡ませては解いて……。

 そしてふいに、こちらへと腕を伸ばし、逃げる隙を与えてくれないままに、ギュッと抱き締めて来た。


「これでも、かなり我慢しているつもりだよ。……いったいいつになったら、君は、普通の恋人同士がするようなことを、私に許してくれるんだろうね……?」


 耳元でささやかれた後、彼の唇が、微かに耳たぶに触れる。



 ――それだけ、なのに――。



 なんだか……なんだか変……。

 体が、なんてゆーか……ふわってなって……。胸が、ドキドキして……。



「リア……」



 名前を呼ばれただけなのに……どーしてだろう……?

 頭が、ぼうっとする……。



 ……ダメ……。


 早く逃げなきゃ……。逃げなきゃ、私……。私、このまま……。



 ギルの唇が、私の唇をついばむように、何度も軽く触れる。

 私は身動きひとつ出来ずに、それを受け入れ続け……引き離そうとしていたはずの手から、どんどん力が抜けて行き……。


「リア――!」


 その声が合図であるかのように、ベッドに押し倒された。

 ――と同時に、


「……姫……様……?」


 誰かの声が耳に届いて――瞬間、夢から覚めたように、二人してその場に起き上がった。


「あ……。あ、あの……。も、申し訳……ございま、せんっ。……僕……僕……」


 ベッドに半身を起こしたシリルが、どうしていいかわからないといった風に、私達にちらちらと目配せをしている。


「シ……っ、シリル! 目が覚めたのねっ!」


 私はギルを押しのけて立ち上がると、シリルに駆け寄り、思いっ切り抱き締めた。


「な――っ!」

「ひ、ひ…っ! 姫様っ?」


 驚いたようなギルとシリルの声が同時に聞こえたけど、構うことなく、私はシリルを抱き締め続けた。


「よかった……! ホントによかったぁ~~~、目覚めてくれて!……ごめんね、シリル。あなたをひどい目に遭わせちゃって……。それと――守ってくれて、ありがとう」

「……そ、そんな、姫様……。ぼ、僕……いえ、私は、当たり前のことを……したまで、で……。だから、あの……お、お礼なんて……も、もったいのう、ございま……す」


 たどたどしい敬語で、懸命に気持ちを伝えようとするシリルが、なんだかとても可愛くて……愛おしくて。

 私は更に強く、彼をギュウゥッと抱き締める。


「ううん! シリルがいてくれなかったら、私……今頃、どうなってたかわからないもの。やっぱり、シリルのお陰だよ。本っ当ーーーに、ありがとうっ!」


 そう言って、少しだけ体を離すと、彼の頬に軽くキスした。

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