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赤と黒の輪舞曲~【桜咲く国の姫君】続編・ギルフォードルート~  作者: 咲来青
第5章 悪夢からの解放と新たな火種
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第9話 羞恥、困惑……抱擁!?

 ……ま……まさか……ギル――?

 ギルが、私の気付かないうちにボタンを……?



 そう考えたら、ますます体が熱くほてって……フレデリックさんが来てくれてなかったら、どんなことになっちゃってたんだろうと、今更ながら恐ろしくなる。



 もう……もうっ! ギルのバカぁッ!!

 やっぱりエロよ……とんでもないエロ王子だわっ!!


 ……ああもうっ! 恥ずかしすぎて、フレデリックさんの顔を直視出来なくなっちゃったじゃないっ!

 自分は一人で涼しい顔して、寝たふりなんかしちゃってぇ~~~……!

 まったくホントに……なんって人なのっ!?



 恥ずかしさでめまいがしそうになりながらも、動揺を押し隠してボタンを留め直し、うつむいたままその場に立ち尽くす。



 ……だって、なんて言えばいいの?

 こんなの見られちゃった後じゃ、もう何言ったって……信じてもらえる気がしないよ。


 すごく惨めな気持ちになって、無性に泣きたくなって来た。

 それでも必死に我慢して、両手を胸の前で組み合わせてぎゅっと握ってると、


「……それほどまでに……なりふり構っていられなくなるほどに、兄上のことが好きだというのか……?」


 耳を澄まさなければ聞こえないくらいの小さな声で、フレデリックさんがつぶやいた。


「――え、何――?」


 無意識に問い掛けると、彼は思い詰めた表情で私の肩に手を置き、


「僕じゃダメか、サクラ?……どうしても、兄上じゃなきゃいけないのか?」


 唐突に、妙なことを言い出した。


「……は?……えっ?」


 問われていることの意味がすぐには理解出来ず、私はぽかんと口を開け、彼を穴のあくほど見つめてしまった。


「おまえの望みが王の妃になることなら、僕にだって叶えてやれないこともない。兄上が隣国の姫と結ばれたら、次のこの国の王は僕だ。おまえが兄上を諦めて、僕を選びさえすれば……望みは確実に叶うだろう?」


 軽く置かれていただけだったはずの手は、いつの間にか『これから肩もみでも始まるの?』と思っちゃうくらいに強く私の肩をつかんでいて、痛いやら驚くやらで、訳がわからなかった。


「え……と、あの……。私べつに、王妃になりたいとか……そんなこと、考えたこともないです……けど?」

「――っ!……では、やはり兄上が……。兄上だからこそ、好きになったと言うのか……」


 傷付いたような顔でうつむいて、それっきり沈黙してしまったフレデリックさんに、私はますます困惑した。



 なんなの? どーしちゃったってゆーの?……なんでいきなり、こんな変なこと言い出したの?

 私の望みが、『王の妃になること』だなんて……そんなこと、一言だって言った覚えないよ?



 ……もしかして、メイドが王子を好きになる理由なんて、そんなところだろうと勝手に思い込んでる……とか?(……そー言えば、『側室狙い』がどーとか、『分不相応な夢は見るな』とか、朝会った時も言ってたっけ……)


 ……むぅ~……!

 だとしたら、それってめちゃくちゃ失礼な話じゃない? 他のメイドさん達に対してだって!


 それに、いくら私をメイドだと思い込んでるからって、そんな不純な動機でギルを好きになったなんて、思われたくないしっ。



 うん、そーだよ。失礼以外のナニモノでもないよ!


 ……あ~……、だんだんムカついて来ちゃった。

 ここはひとつ、メイドさん達の名誉のためにも、ズバッと言ってあげなきゃ!



 そう思って口を開いたところで、


「兄上には婚約者がいる! 朝も教えてやっただろう!? おまえのためにも、早く忘れた方がいいんだ! それなのにどうして――っ!……どうしてわからないんだっ!?」


 何故か突然、苦しいくらいに抱き締められてしまい、私は戸惑いを通り越し、一気にパニックに陥った。



 え……えぇえっ!?

 ……なっ、なんで……なんで私、抱き締められちゃってるのっ!?



 さっきまですっごく怖い顔で睨みつけられてて……私、殺されちゃうかも――って思ってたくらいなのに……。

 ……なのにいきなり、王の妃になりたいならどーのこーのって、失礼なこと言い出したなーと思ってたら……今度はこれ!?



 ……わからない……。

 フレデリックさんの言動全て、まるっきり理解出来ない!



「僕を選べ! そうすれば、僕がおまえを幸せにしてやる。僕なら、おまえを傷付けたりしないで済むんだ。だから……だから僕を――っ!」


 また両肩をつかまれ、少しだけ体を離すと、彼は泣きそうな顔で私を見つめた。


「……サクラ……」



 ゆっくりと顔が近付いて来て――途中で顔を傾けて……って、えっ?……ええええええっ!?



「ちょ…っ! ふ、フレデリックさ――っ!?」


 慌てて彼の肩を押しやると、すかさず後方から鋭い声が飛んだ。


「フレデリック!! 今すぐリアから離れろッ!!」

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