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第3話 過去

「四、度……? 四度も命を狙われ……って……」



 どーゆーこと?

 どーしてギルが……そんなに何度も、命を狙われなきゃいけないの?


 どーして――っ!?



「ウォルフさん、お願い! もっとちゃんと、私にもわかるように説明して? ギルは何故、命を狙われてるの? どーして、そんなひどい目に遭わなきゃならなかったの!?」


 ウォルフさんは何も言わず、私をじっと見つめていた。

 しばらく経ってから、小さくうなずくと、


「かしこまりました。ギルフォード様には、リナリア様がお心を痛められるといけないからと、それら全ての事情は、伏せておくよう命じられているのですが……。このようなことになってしまった以上、秘密にしておく方が、あなた様を深く傷付けてしまうことになるでしょう。――全てお話し致します。ですが、もう少々お待ちいただけますか? ギルフォード様を、ベッドにお移しせねばなりませんので」


 そう言ってから、ウォルフさんはギルの体を軽々と抱え上げ、『体つきは、ギルの方がたくましく見えるくらいなのに、ウォルフさんって、結構力持ちなんだな……』と、私を心底感心させた。



 ギルをベッドに落ち着かせてから、私に向き直ったウォルフさんは、


「リナリア様、お待たせ致しました。長い話になりますので、お座りになってお聞きください。しかし、途中で来訪者があった場合は、即座に中断させていただき、隣室にお隠れいただきます。その点だけ、お心置きください。よろしいですね?」

「はい。わかりました」


 私は勧められるまま椅子に座り、こくりとうなずいた。


「それでは――まずは、ギルフォード様の置かれている状況から、ご説明させていただきます。ギルフォード様は、この国の第一王子であらせられますが、母君のセレスティーナ様は、陛下のご正室ではございませんでした。ですので、一部の者達からは、よく思われていないと申しますか……ギルフォード様の存在を、苦々(にがにが)しく思われている方々が、ごく少数ではございますが……残念なことに、いらっしゃるのです」

「え……。苦々しく思ってる人達――って、もしかして、正室の人とか、その周囲の人達とか……そんな感じですか?」

「はい。しかし、それらの方々が、ギルフォード様のことを、悪しざまにおっしゃっている場面に、私が直接遭遇(そうぐう)したことはございません。ですので、噂にすぎないと言ってしまえば、それまでなのですが……恐らく」



 ……そっか。

 昔の日本とかにも、よくあったってゆーもんね。

 世継ぎを産んだのが側室だからどーとか、その場合の、正室側からの圧力や嫌がらせがどーの、って話……。  



「じゃあ、ギルを殺そうとしてるのは……正室さんの周辺の人達、ってことになるのかな?」

「証拠はございません。ですが、ギルフォード様を亡き者にしようとする存在など、その方々以外には、思い当たらないのです。ギルフォード様は、臣下(しんか)にも民にも(した)われておられますし、その一部の方々以外からの支持も、充分に得ておられます。そして何より、城外からの侵入者が、たびたび忍び込めるほど、この城の警備体制は脆弱(ぜいじゃく)ではございません」

「……そう……だよね。ギルが何度も危険な目に遭ってるのなら、犯人はこの城内にいる人か、その人達に手引きされて入り込んだ人か……。やっぱり、そのどっちかって考えるのが普通だよね」


 そう言って、何気なく視線を横に移すと、苦しげなギルの顔が目に飛び込んで来て、キュッと胸が締め付けられる。



 正室側の人達に(うと)まれてるとしたら……それはきっと、生まれて来た時からだよね?

 そんな昔から、ドロドロとした人間関係の中で、気の休まらない日々を過ごして来てたなんて……。



 つくづく思い知る。

 私はギルのこと、本当に何も……知らなかったんだなって。



「ギルフォード様が、初めてお命を狙われましたのは、(よわい)九つの頃でございました。母君のセレスティーナ様と共に、昼食時に毒を盛られたのです。ギルフォード様は、奇跡的に一命を取り留められましたが、セレスティーナ様は、そのままお亡くなりに……」

「えっ!? ギルのお母様って、ご病気でお亡くなりになったんじゃ……?」


 確か、カイルから指輪渡してもらった時、そんなことを言ってたはず。


「表向きは、そのようなことになっております。王室内で殺人が発生したなどということが外部に漏れますと、大変な騒ぎになってしまいますし、他国に付け込まれる原因にも、なりかねませんので」

「あ……そっか。そーだよね……」



 王室内のいざこざは、この国を狙ってる国があったとしたら……攻め込むいい機会、ってことになっちゃうかもしれないんだ……。



「……ん? じゃあ、もしかして……正室って、弟さんの――フレデリックさんのお母様……?」

「はい」

「そのお母様が、不治(ふじ)の病で隔離されてて――ってゆーのも、表向きの話?」

「……はい。ご正室のアナベル様は、セレスティーナ様暗殺の首謀者(しゅぼうしゃ)であるとのお疑いで、この城のある部屋に……今も幽閉(ゆうへい)されております」

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