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赤と黒の輪舞曲~【桜咲く国の姫君】続編・ギルフォードルート~  作者: 咲来青
第17章 過去との決別

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第1話 犯人の処罰

 それから数日は、何事もなくすぎて行った。


 ……あ、いや……。

 ギルは、毎日のようにイチャイチャしたがったけど。

 適当にかわしたり、断り切れずに受け入れたりして……って、うぅ……。


 その……まあ……そんな感じに過ごしてたり……。



 それから、ギルを殺そうとしていた(いにしえ)の絆の御三家(ゴドルフィン家、アッカーソン家、オルムスウェル家)の三人の処罰だけど。

 どうやら、それぞれの家に任せる――ってことで、決着したみたい。


 どんなに重い罪を犯したとしても、これだけの力や名声、国民の支持を得ている古の絆の一族から、そんな不届き者達が出たとあっては、国中がパニックになっちゃうし。

 王族と、それを支えてくれているはずの一族との間に、大きな亀裂が入ったと思われたら、一大事(他の国から攻め込まれたりとか)になっちゃうことを危惧(きぐ)してのことらしいけど……。



「でも、それじゃあ……罰としては、ちょっと甘すぎない? 私達を殺そうとした人達なんだよ? 特にギルは、幼い頃から何度も命を狙われて、実際、大ケガしたり、生死の境をさまよったことだってあったんでしょ? なのに、処分はそれぞれの家に任せるだなんて……。自分達の親族に、そこまでひどい罰を与えるとは思えないもの。結局は、罰せられないのと同じことになっちゃうんじゃないの?」


 ギルからその話を聞いた時、思わずそう訊ねちゃったら。


「いや。それが、そうでもないらしいんだ。マイヤーズ卿がおっしゃるには、『五つの一族には、古より王家を支え、王家の方々に頼りにされて来たという(ほこ)りと、他のどの一族よりも、王家のために尽くしているという、強い自負がございます。それらを粉々に打ち砕き、一族の名を汚した者達など、もはや、名を連ねる資格すらございません。かばう価値なしと切り捨てられるか、一生幽閉されるか。結局は、そのどちらかに落ち着くでしょう。一族の援助なしに過ごした経験など一度もない能無し共が、いきなり外の世界に放り出されたところで、今更、何が出来ましょうか? 地べたを()いつくばって日々の(かて)()うか、はたまた、何も出来ずに野たれ死ぬか。結局は、そのどちらかしかございますまい。幽閉とて、(みじ)めさと屈辱の度合いは相当なものです。一族の者でありつつ、一族扱いされず、飼い殺しのまま一生を終えるのですからな。虚栄心ばかりが強い愚昧(ぐまい)な者共には、そちらの方がよほど(こた)えるでしょう』……ということらしい」



 ……うわぁ……。

 すっごい手厳しい人なんだなぁ、マイヤーズ卿って。


 かなりのキレ者らしいけど……なんか、言うこともそれっぽいわぁ……。



「それから、こうもおっしゃっていたな。『王に処罰を(ゆだ)ねようものなら、呆れるほどの軽い罰で済ませてしまうでしょうからな。それぞれの家に任せた方が、よほど重い罰を与えてくれましょう。――フッ。いい気味だ。王族に刃向う者達など、この私の目が黒いうちは、断じて許しはしませんよ』」


 腕を組んで胸を張り、ギルはニヤリと笑ってみせる。

 いつもの彼っぽくない笑い方に、


「……ねえ、ギル……。それって、もしかして……マイヤーズ卿の真似……?」


 ついつい、突っ込んでしまったら。

 彼はたちまち頬を赤らめ、


「……ああ、まあ……そんなものかな」


 などとつぶやいて、恥ずかしそうに視線を斜め下に流した。

 私はプッと吹き出し、しばらくケラケラと笑い転げていたんだけど。


「いつまで、そうやって笑っているつもりだい?……そもそも、君はマイヤーズ卿を知らないじゃないか。似ているか似ていないかの判断など、出来るはずないと思うが?」


 彼はムッとした様子で腕を組み、プイッと横を向いてしまう。

 私はそんな彼を窺いながら、『また拗ねてる。……もう。可愛いなぁ』なんて思いながら、どうにか笑いを引っ込めた。


「ご……ごめんごめん。似てないから笑った、とかじゃなくて。ギルも、モノマネなんかするんだな~って思って。……フフッ。ちょっと意外だったんだもん」


 目の縁を指で拭って謝ると、彼は、更に拗ねたように口をとがらせる。


「君は、意外だと笑い転げるのかい?……まったく、ひどい人だ。そういう人には、何かお仕置きしないといけないな」


「……え?」


 彼はいきなり手を伸ばし、私の両手を握って、自分の方へと引き寄せた。

 そしてまた、例の『魅惑的な微笑み』を浮かべて……。


「ギ――っ、……ギル?……あ……あの……」


 戸惑う私の耳元に、彼は素早く口を寄せ、甘くささやく。


「お仕置きを受けるのはどこがいい?……唇? 首筋? それとも……もっと別のところ?」

「な――っ!」


 私の顔も体も、瞬時に熱くほてり出し。

 私は慌てて後ずさって、彼から大きく距離を取った。

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