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赤と黒の輪舞曲~【桜咲く国の姫君】続編・ギルフォードルート~  作者: 咲来青
第16章 すれ違いを乗り越えて

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第4話 ザックスへの手紙

 そーだ、そーだよ!

 手紙だ!!


 ザックスに、イサークとニーナちゃんのことをお願いするための手紙を、急いで書いて送らなきゃいけないんだった!


 うわ~~~っ、どーしよー!?

 今からでも間に合うかな!?



 ……最悪の場合。

 間に合わなかったとしても、シリルが一緒なんだから、そこまで困ったことにはならないと思うけど……。



「ギル、ごめん! 至急、ザックスに手紙書かなきゃいけないんだった! どこかに紙と――あと、なにか書くものない? ペンでも筆でも、なんでもいーんだけど」



 ――って言っても、この世界には、さすがに筆はないだろうな……。


 とにかく、書けるものならなんだっていーのよっ!

 紙とペン!

 早く用意してっ! 早く早くぅうーーーーーッ!!



「手紙?……ああ、そうか。そう言えば、私も忘れていた。ザックスに、書状を送らなければならないんだったね」

「うん、そう! 城に着いたら、すぐ書こうって思ってたのに、うっかり忘れてて……。ごめん。やっぱり私、相当なうっかり者だわ……」


 落ち込んで、ガックリと肩を落とす。


「まあ、そんなに落ち込まないで。大丈夫だよ。シリル達が城に着くのは、たぶん、明日辺りだろうし……。書状も、今夜中に出せば、朝には届くだろう。何も心配いらないよ」


 彼は元気付けるようにニコリと笑い、明るい声で励ましてくれる。


「ホント? まだ間に合う?」

「ああ、間に合うよ。問題ない」


「そっか。よかったぁ……」


 ホッと胸を撫で下ろしてから、改めて、紙とペンをお願いすると、彼は素早く立ち上がり、ベッド脇の机に向かった。

 引き出しを開け、一枚の上質そうな紙と、ペンとインク壺のようなものを両手に持って、こちらに戻って来ると、私の前に並べた。


「これでいいかい? 一枚では足りないようなら、また持って来るが――」

「ううん、これで充分。ありがとう、ギル」


 私は早速、ペン先をインクに浸し、セバスチャンへの手紙を書き始めた。



 こうして、当たり前のように、こっちの世界の読み書きも出来ちゃう――ってのが、未だに不思議で堪らないけど。

 ……まあ、出来るものは出来るんだから、しょーがないよね。


 たぶん、あっちの世界では、桜さんも同じような経験をしてるはずだし……。



 私が思うに。

 桜さんがこっちの世界で得た知識と、私があっちの世界で得た知識。

 それらがすっかり、入れ換わっちゃった。もしくは、記憶を共有出来てる……ってことなんじゃないかなぁ?


 だから、こっちの世界にいきなり戻って来ても、話すのも書くのも、全く不自由せずに済んでるってゆーか……。



 どんな方法を用いたら、そんなことが可能になるのか。

 仕組みはさっぱりわからないけど、これが、本当に神様の力で起こったことなんだとしたら。


 やっぱり、神様ってすごい存在だったんだなぁって、つくづく感動しちゃうんだよね。



 ……神様。あっちの世界に、無事着けたかな?

 桜さんに、ちゃんと会えてたらいいなぁ……。



 神様のことを考えたら、なんだか、しんみりしそうになっちゃったけど。

 どうにか手紙を書き終え、私はホッとして息をついた。

 それから、紙を細長く折りたたみ、ウォルフさんが来た時に渡そうと、テーブルの隅に置く。



 これで、もう大丈夫!

 ちょこっと(?)遅れちゃったけど、まだ間に合うって、ギルも言ってくれてるし。


 でも……手紙を受け取ったら、セバスチャン、ビックリするだろうなぁ……。

 いきなり二人も、ザックスに受け入れてくれ、ついでに城で雇ってあげてくれ――なんて言われても、困っちゃうだろうけど。


 ……そーだ。

 他国の人を受け入れてほしいなんて、こんな重要なこと……お父様とか、国の許可とかも、当然必要なんだろうし。

 あっちに戻ったら、セバスチャンはもちろんだけど、先生にも、こっぴどく叱られるだろうな。


 ……うぅっ。

 今から覚悟しておかなきゃ……。



 先生の顔を思い浮かべたら、背筋がヒヤッとしてしまったけど。

 私はふるふると首を振り、先生の記憶を、ムリヤリ脳内から追い出そうとした。



 ……まあ、そんなことをしても。

 強烈な先生の記憶を追い出すことなんて、出来るワケないんだけどね。

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