表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/225

第10話 食後の会話は驚愕と共に

 結局、ごちそうはすっかり冷めてしまって、ガッカリしたけど。

 『温め直して参りましょうか?』ってゆーウォルフさんの申し出は、丁重(ていちょう)にお断りした。


 散々彼を無視しちゃった上に、長いことお待たせしちゃった結果だもん。

 悪いのはこっちなんだから、更に迷惑なんて掛けられないよ。


 それに、ごちそうは、冷めてても充分美味しかったし。

 久し振りに、お腹がはち切れそうなほどの満腹感味わえて、幸福な気持ちにもなれたし。

 私としては、それでもう充分だった。


 ギルはギルで、すっかりいつもの調子を取り戻して、ご機嫌な様子だし……。



 ……まったく。人騒がせなんだから。

 勝手に一人で落ち込んで、ウジウジ考えてたと思ったら。

 なんなの、今のあの……ゆるみまくった顔は?



「――ん? どうかしたかい、リア? 私の顔に、何か付いている?」


 食後のフルーツを、上品に口に運びながら、彼は微笑して小首をかしげる。


「……ううん。べつに、なんにも付いてないけど。ギルは、つくづく幸せな人だなぁ~って思って、感心してたとこ」


 私は私で、食後のケーキを大胆に頬張り、モグモグしてゴックンとのみ込んだ後、呆れ顔でため息をついた。


「幸せ?――うん。それはもちろん、幸せに決まっているよ。愛する人と、これからも共に生きられるということが、確約されたのだからね。その上、ほら――こうして、夕食も共に出来ている。幸せでないはずがないだろう?」

「……う……ん……。そぉ……だね……」


 今や、背景にバラとかキラキラした光とかを、わんさか背負わせたくなるくらい、彼はまばゆいばかりに輝いて見えた。


 ……正直、ちょっとげんなりする。

 感情の起伏の激しさに、ついて行けないってゆーか……。



 まあ、そりゃあ……ずっとウジウジされてるのも、困りものだけど。

 かと言って、こうもわかりやすく、思いっ切り浮上されちゃうとねぇ? それはそれで、疲れるなぁ……なんて。


 ギルの中の不安要素が、完全に取り払われたんなら、喜ばしいことではあるんだけど……。


 ――ん?

 不安要素?



「そー言えば……ねえ、ギル。結局、あなたの命を狙ってた人達って、何者だったの? 予想通りの、貴族の三人? それとも、もっと別の人?」


 肝心な、事件の結末を訊いてなかったことに、今更ながら気が付いて。

 食後の紅茶(っぽいもの)が入ったティーカップを、両手で持ちながら訊ねる。


「ああ……うん。予想通りの貴族達だったよ」

「えッ!? ホントに例の三人だったの!?……だって、それじゃ……。その三人が犯人ってことなら、大変なことになっちゃうって話じゃなかったっけ?」



 えっと、確か……いにしえのきずな、だっけ?

 昔から王族を守って来てくれたってゆー、貴族さん達の集まり?


 その、すごい力を持った人達の半数だかが、今回の事件に関わってたりしたら、かなりマズイことになる……とかって……。



「それが……私を殺そうとしていたのは、本当に、その三名だけだったようなんだ。他には、誰一人として関わってはいないらしい。同一族の者達――三家にも、とっくに確認済みなんだそうだ。……どうやら、今回のことだけではなく、以前、私が狙われた事件の頃から、彼ら三名が関わっているのではないかと、怪しんでいたそうでね。水面下で調べていたらしい」


「ええっ!? 前の事件から怪しんでたの!?……国王様が?」


「……いや。残念ながら父上は……それほど頭が切れる人ではないし、頼りになる人でもないんだよ。彼らを怪しみ、秘密裏に調査を進めていたのは、マイヤーズ卿だそうだ」


「へえ~……? すごい人なんだね、そのマイヤーズ卿って人」



 国王様が頼りにならない、ってゆーのは、ちょっと残念ってゆーか、その……いろいろと不安だけど。

 側に、そーゆーすごい人が付いててくれてるんなら、心強いし、助かっちゃうよね。



「そうだね。父が国王を続けていられるのも、全て彼のお陰と言っても過言ではないほど、優れた人物ではある。その点は、この国の誰もが認めるところだろう」

「ほぇ~。そこまで切れ者なんだ?……どーゆー人なの、その……マイヤーズ卿って?」


「どういう人と言われても……。そうだな。素晴らしく優秀で、威厳(いげん)があり、全てにおいて抜かりなく、且つ、狡猾(こうかつ)なところもあり……見た目も中身も、父より、よほど国王らしく見える人だよ」


「ええっ?……ちょ、ちょっとギルってば。マイヤーズ卿って人が、いくら優れた人だからって、そこまでズケズケ言っちゃあ、国王様に失礼っても――」

「その上彼は、父の正室のアナベル王妃の兄であり、フレデリックの伯父でもある人だ」


「……へっ?……アナ……ベル……?」


 その意味を理解したとたん、私の顔はこわばり、体はピタリと静止した。



 アナベルさん……って……。


 アナベルって……あの、アナベル……さん?

 ギルと……ギルのお母様に、毒を盛っ……いや、盛らせたってゆー……あの……?



 あの人のお兄さんっ!?

 フレディの伯父さんですって――!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ