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第3話 結ばれることがないとしても

 ギルから『内乱が起こるかもしれない』と聞かされた私は、よくわからないながらも、


「だ……っ、だいじょーぶだよ! たった三家だけで、王族をどうこうしようなんて、出来るワケないし! その三家の人達が、どーしてギルの命を狙ってたのかは、わからないけど……でも、これで犯人はハッキリしたんだから、その人達さえ捕まえちゃえば、もう二度と、ギルが危ない目に遭うこともなくなるんでしょ?……ねっ? 心配いらないってば!」


 彼を安心させるため、にっこりと笑ってみせる。

 それでも、彼の顔色はいっこうに晴れることはなく……それどころか、ますます沈んで行くばかりだった。


「三家だけといっても、そう簡単に解決出来る問題でもないんだ。彼らの力は、それぞれが、王族に匹敵するほど強大だからね。一族のうち、本当に三名だけが企てていたことならば、話は別だが……。一族の半数以上が加担していたことだとしたら、それら全ての者達の力を押さえ込むのは、かなりやっかいだ」

「え……。そ、そー……なの?」



 『王族に匹敵するほど強大』って……。

 まさか、そんなにすごい力を持った人達だったなんて!



 『たった三人でしょ?』なんて、軽く考えていた私は、ヒクヒクと顔をひきつらせた。

 ギルは(うれ)い顔のまま、力なくうなずいて。


「彼ら全てを押え込むなど、とうてい不可能だ。……とすると、こちら側が譲歩するしかない。その場合、彼らが何を望むかだが。私の命を狙っていたというのだから、気に入らないのは、まず間違いなく私だろう。民衆の動揺を考えれば、さすがに、処刑まではしないと思うが……とりあえずは、病か何かに掛かったことにするとか……そうだな、今回受けた傷が原因で、寝たきりになってしまったことにするとか。そういう風にして、私の存在は、闇に葬り去られる可能性がある」


「そんなっ! そんなバカなこと、許されるワケ――っ!」

「だが、あり得ることなんだ。……もしも、そうなったとしたら……私は当然、君と引き離されることになる。私との婚約は解消され、君は……君は誰か、他の男と……」


 そこで声を詰まらせたギルは、顔を上げ、私の腕をつかんで引き寄せると、思い切り抱き締めて来た。


「嫌だッ!! 今更君を、他の男に奪われるなんて……そんなことは耐えられない!……嫌だ……嫌だ、嫌だッ!! 渡したくない……いや、渡すものか! 君は私の――私だけのものだ!!」


 背中に回された手が、寒くて堪らないというように、カタカタと震えている。

 私は掛ける言葉も浮かばないまま、ただ必死に、彼を抱き締め返すことしか出来なかった。



 ヤダよ……。私だってヤダ!!

 これから先も、ずっと一緒にいるって約束したんだもん!!

 もう離れないって……どこにも行ったりしないって、約束したんだから――!!



「ギル……。ヤダよ。ギルじゃなきゃヤダ。ギルと一緒になれないなら、私……一生結婚なんかしない!!」

「……リア……」


 彼は私から体を離すと、頬にそっと手を当てて、切なげに微笑んだ。


「ありがとう。君の立場を考えれば、そんなことが出来るはずがないとわかっていても……嬉しいよ。君の気持ちが、とても嬉しい」

「ギル!……ひどい。嘘だと思ってるの? そんなこと出来るはずないなんて、どーしてそんな――っ!……私、本気だよ? ギルと結婚出来ないなら、ずっと一人でいる。跡継ぎって人が必要なら、養子を迎えればいいんだし、それに――っ」


「リア。……いいんだ。その気持ちだけで充分だ。君と離れ離れになることになったとしても……今のその言葉だけで、私はこの先も生きて行ける」

「やめてッ! そんな悲しいこと言わないで!!……そんな……そんなこと、嘘でも言っちゃヤダ……。ヤダ――ッ!!」


 想いをぶつけるみたいにして叫ぶと、彼に勢いよく抱き付いた。

 ギュウっと、背中に服のしわが寄るくらい、強く――強く抱き締める。


「リア……。リア――っ!」


 彼もその想いに応えるように抱き締め返してくれて、私の頭上に、幾つも幾つもキスを落とした。

 私達はどちらともなく体を離し、見つめ合い――引き寄せられるように唇を重ねては、また離して……。

 お互いの気持ちを確かめ合うようなキスを、幾度も幾度も交わし合い、ベッドへと倒れ込んだ。

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