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第2話 内乱の可能性?

 長い沈黙が続き、その重苦しさに耐えきれなくなった私は、もう一度ギルに訊ねるため口を開いた。

 その気配を察したのか、彼は私から逃れるように両手を離し、体をどけてベッドの縁に腰掛ける。

 それから大きなため息をつき、太ももに肘をついて、両手で頭を抱え込んだ。


「ギル……」


 私はゆっくりと体を起こし、打ちひしがれたようにうつむく彼を、為す術なく見つめていたんだけど。

 しばらくしてから、恐る恐る手を伸ばし、その肩に触れた。

 瞬間、彼はビクッとして……ためらうかのように、何度か頭を上げたり下げたりした後、重い口を開いた。


「もしかしたら……この国に、内乱が起こるかも知れない」

「えっ?……な、内乱!?」


 物騒な話に、声がうわずる。

 彼は小さくうなずき、再びため息をついてから、私に向き直った。


「イサークとの話を、君も聞いていただろう? 私を殺そうとしていた者達の名を、覚えているかい?」


 とても寂しそうな目で――だけど、落ち着いた声で訊ねる。


「え……。ううん。覚えてない。……ごめんね。三人って言ってたのは覚えてるけど、なんだか、言いにくそうな名前ばっかりだったから……」


「いや。いいんだ。君が覚える必要もないし、こんなことに関わらせたくもない。……ただ、名前が挙がっていたのは、昔からこの国の王族に仕え、強い忠誠を誓ってくれていた一族の者ばかりなんだ。――その昔、この国の初代国王を守り、支え……共に戦った盟友とも言える者が、数人いた。彼らの子孫が、アッカーソン家、パーシヴァル家、オルムスウェル家、ゴドルフィン家、マイヤーズ家なんだが……。彼らは、総じて『古の絆』と呼ばれている。王族にとって、最も信頼出来る、有力な貴族達だ。それが……そのうちの三家の者達が、私の命を狙っていたとすると、事は重大だ。そのことが明るみになれば、国内の混乱は(まぬか)れない。民衆の、彼らに対する憧れのようなものも、一気に消え失せてしまうだろう」


「憧れ?……貴族の人達って、憧れられてるの?」



 お金持ちの人達に対する、貧しい人達の感情って、妬みとか憎しみとか、負の感情の方が強いイメージあるけど……違うのかな?

 憧れてる人も、そりゃあ……いることはいるんだろうけど。


 少なくともイサークは、貴族好きって感じには、見えなかったもんねぇ?



「五家は……『古の絆』の五家だけはね、民衆にとっては特別なんだ。王と、王を守って戦った勇者達の末裔(まつえい)は、今も固い絆で結ばれているのだと、皆信じているんだよ。どんなことがあろうとも、五家だけはずっと変わらず……この先も、王族を守り続けて行くものだと、ね」


 ギルは沈んだ口調で告げた後、自嘲するように薄く笑った。


「五家のうち三家までもが、王族に対して――いや、私一人に対してだけなのかも知れないが、表では何食わぬ顔をして忠誠を誓い、裏では暗殺を企てていたなどと知れたら……彼らに対してはもちろんだが、王族にも、民衆は失望するだろう。そこまで求心力を失っていたのか、と……」



 ……求心力……。


 えっと、つまり……。

 日本史で説明するとすれば……たぶん、徳川家がこの国の王族で、徳川に昔から仕えてた……え~っと、なんてゆーんだっけ?


 ……あ、そうそう。

 確か、譜代大名(ふだいだいみょう)


 譜代大名が三家って考えると、その……昔から忠誠を誓って仕えてくれてた、譜代大名のうちの幾つかが、一気に反旗をひるがえして、徳川家に……って、つまりは、そーゆー感じなのかな?



 ……ってことは……。



 えぇえええっ!?

 もしかして、日本で起こった、あの……明治維新ってヤツ!?

 あんなよーなことが、起ころうとしてるの!? この国でッ!?



 ……いやいやいやいや。

 さすがにそれは、大袈裟すぎ……かな?


 いくらなんでも、たった三家で国をひっくり返すなんて、出来っこない……よね?


 幕末のあれは、ほら……家ってゆーより、なんとか藩ってゆー……現代日本でいうところの、都道府県の幾つかが、まず動いて……って感じだったんだもんね?

 家じゃー無理だよね~? 国なんて動かせないよねぇ?


 ……うん。たぶん。



 ……ん? でも、待って?

 日本の歴史で例えるよりは、あっちの話の方が近いのかな?


 なんだっけ? ほら……『アーサー王と円卓の騎士』、だっけ?

 その、アーサー王を裏切った人がいたよね?


 ……ん~……。歴史とか、その(たぐい)の話には詳しくないからなぁ……誰だっけ? 確かいたよね?


 つまり、その裏切った人が、三家の人達ってことになるのかな?



 ……まあ、どっちにしろ、悲しいことではあるけど……。

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