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第6話 首謀者は三人?

 イサークから首謀者の名前を聞くと、ギルは――ううん、ウォルフさんも、ほぼ同時に驚きの声を上げた。

 その様子からも、犯人は二人がよく知る人物なんだと、すぐにわかった。(私は、聞いたことすらない名前だったけど)


 でも、それじゃあ……今回のことに、アナベルさんは、一切関係してないってことだよね?


 ……よかった。

 十一年前の事件以降、何度かギルの命を狙って来たりしたのも、彼女だったりしたら……って、すごく心配だったから。



 だって。

 もしそうだったら、またフレディが傷付く。


 これ以上、彼に重荷を背負わせたくないもの。

 だから……アナベルさんが関わってなくて、本当によかった。



「イサーク、間違いないのか? 嘘偽りなく、その者がおまえに――私か、リアを殺せと命じたんだな?」


 ギルは怖いくらい真剣な表情でイサークに迫った。


「ああ、間違いねえ。――って言っても、あいつらが、偽名を名乗ってた可能性もあるが。そればっかりは、俺には確かめようがねえしな。あんた達で、どうにか確認取ってくれ」

「……そうか。わかった」


 ギルは沈んだ面持ちで、黙り込んでしまった。

 私は、なんで声を掛けていいのかわからず、ただおろおろと、彼とウォルフさんを窺っていた。


「――あ。それから、チラッと耳に入っちまったことなんだが……。どうやら、あんた達を殺そうとしてたのは、そいつだけじゃねえらしいぜ。他にも、二人は関わってるって話だ」

「なにっ!? 他に二人!?」

「まさか――!!」


 ギルとウォルフさんは、いよいよ本格的(?)に、顔面蒼白になってしまった。


「他の二人は、首謀者っつーか、協力者みてえなもんなのかもな。俺に依頼して来た奴――まあ、そいつは、その家の使用人か何かなんだろうが。そいつが、他の奴らのことを、俺の前で愚痴(ぐち)ったことがあったんだ。それで、もしかしたら単独じゃなく、複数で計画したことなんじゃねえかって……そん時、チラッと思ったってワケだ」


「その二人の名も、ハッキリ聞いたのか?」


「いや。さっきも言ったが、チラッと聞こえちまったってだけの話なんだ。声も小さかったし、絶対とまでは言い切れねえ。けど……俺は貴族様のことにゃあ詳しかねえが、俺を雇った男も、後の二人も、俺ですら知ってる有力者達の名だった。そんなすげえ奴らの名が、一度に出て来ることなんざ、滅多にねえだろ? あながち、聞き違いとも思えねえんだよな」


「有力者の名……。それは、アッカーソン、パーシヴァル、オルムスウェル、ゴドルフィン、マイヤーズ――今挙げた中にあるか?」


 ギルが、名前(ってゆーより、苗字?)みたいなのを、妙にスラスラと挙げて行った。

 私は思わずきょとんとして、彼を見上げる。



 なんかだか、やたらと言いにくそうな苗字ばっかりだったけど……。

 有力者ってだけで、そんなに簡単に、例を挙げられちゃうもんなのかしら?


 それとも……昔から、どっか問題あるとゆーか、怪しい行動取ってた人達の名前……だったり?



「俺が聞いた名は、首謀者であるゴドルフィンと、アッカーソン、オルムスウェル……だな。どれも『(いにしえ)の絆』とやらの、貴族達の名だろ? この国では、そいつらの一族だけが、名乗ることを許されてるってゆー……。だから、間違いねえとは思うんだが」


 イサークの言葉に、またまたきょとんとしてしまう。



 えっと……『いにしえのきずな』って、なに?

 その一族だけに、名乗ることが許されてる苗字……?


 何の話だかさっぱりだけど……。

 一部の貴族だけに与えられた、特別な苗字、ってことなのかな?



「アッカーソン家に、オルムスウェル家も関わっているだと!?……どういうことだ……。私はそれほどまでに、彼らから疎まれていたと言うのか?」


 片手で頭を抱えるギルに、ウォルフさんはキッパリと否定した。


「そのようなこと、あろうはずもございません! ゴドルフィン家もアッカーソン家もオルムスウェル家も、次期国王はギルフォード様にと、昔から主張しておられました! 特にゴドルフィン家などは、リナリア様とのご婚約が成立しなかった場合、是非娘をとおっしゃっ――」


 その言葉に、思わず一同が息をのんだ。


「なるほどな、それが目的か! おっかしーと思ってたんだよな。王子だけじゃなく、隣国のリナリア姫も襲えってのはよ。――つまり、そのゴドルフィン家ってぇのは、娘を王子の嫁に差し出して、一族の地位を確固たるものにしたかった……とかなんとか、つまりはそーゆーことなのか?」


 イサークの意見に、ウォルフさんはすかさず反論する。


「しかし、それが目的であるならば、リナリア様のみが襲われていたはずです。何故、ギルフォード様のお命まで、狙う必要があるのですか? ギルフォード様に死なれてしまっては、娘を差し出すことなど出来なくなります。それでは説明がつきません」


「……そりゃ、そこまではわかんねえけどよ……」


 自分の意見を真っ向から否定され、イサークは不服そうに口をとがらせた。


「……そうだな。ゴドルフィン家だけが企んでいたことなら、その目的も理解出来るが……。アッカーソン家とオルムスウェル家も、手を貸していたとなれば、その線はあり得ないということになる。確か、私の妻にふさわしい年頃の娘など、どちらの家にもいなかったと思うが……」


「はい。その通りです。アッカーソン家には、御子息三名しかいらっしゃいませんし、オルムスウェル家は、御息女が二名いらっしゃいますが、(とお)にも満たない幼子でございます。ギルフォード様のお相手が務まるようなお方など、お一人もいらっしゃいません」


「……だとしたら、何故?」


 ギルは辛そうにつぶやいて、キツく瞼を閉じた。

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