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第1話 戻ったとたん

 この物語は、【桜咲く国の姫君】(2023.09.27.【桜舞う国の訳あり身代わり姫】から元のタイトルに変更)という作品の続編です。

 まずは、そちらからお読みいただくことををお勧め致しますが、どうしても、こちらから読みたいとおっしゃる方のために、下記にあらすじを載せておきます。



【桜咲く国の姫君・あらすじ】


 女子高校生の神木桜は、幼い頃に一日だけ『神隠し』に遭い、それ以前の記憶を失くしてしまっていた。

 ある日、幼なじみの晃人と訪れた神社(神隠しに遭った場所)で、御神木の桜に取り込まれ、異世界へ飛ばされてしまう。


 異世界では、その国の第一王女(リナリア)とそっくりだったため、成り行きで身代わりを引き受けることになるのだが。

 リナリアも自分と同じように、幼い頃に神隠しに遭っていたと知り、桜はある疑問を抱く。


 桜は、こう考えた。


 〝幼い頃に、自分とリナリアは入れ替わってしまったのでは?〟

 〝今回も入れ替わりが起こり、リナリアは、自分がいた世界に飛ばされてしまったのでは?〟

 〝つまり、もともとは自分がリナリアで、リナリアが桜なのでは?〟


 その後、〝神様〟との出会いにより、桜(リナリア)は自分の予想が全て真実だったことを知らされる。 


 ショックを受けつつも、爺や(兼執事)であるセバスチャン(見た目は巨大なオカメインコ)や、周囲の人々の支えもあり、少しずつザックス王国に馴染んで行く。


 そしてリナリアは、生まれて初めての恋を経験することになる。

 相手は、隣国の王子であるギルフォードと、騎士見習いで、リナリア専属の護衛でもあるカイルだ。


 それまで恋とは無縁だったリナリアは、一度に二人も気になる人ができてしまったことに混乱し、戸惑う。


 だが、リナリアの気持ちなどお構いなしに、二人の求愛は加速して行き、彼女の悩みは深まるばかり。

 最終的には、〝神様〟の助けもあり、自分が求めているのは誰なのかを、知ることになるのだった。



 ――ここまでが、【桜咲く国の姫君】のあらすじです。


 お話のラストで、リナリアは神様から二つの扉を示され、『選んだ扉の先に、本当に好きな人との未来が待っている』というようなことを告げらます。

 リナリアは覚悟を決め、どちらかのドアを開くのですが……。


 これから始まる物語は、右側にあった扉の先にある、『ギルフォードとリアの未来』を描いたお話です。(要するに、乙女ゲームで言うところの〝ギルフォードルート〟というわけですね)

 こちらのお話には、カイルは一切出てきませんので、その点を充分ご理解の上、お読みくださいますようお願い申し上げます。



 ちなみに、この作品は前作同様、自力で電子書籍化し、Amazon(Kindle ダイレクト・パブリッシング)で販売させていただいていた作品(【赤と黒の輪舞曲~『桜咲く国の姫君』続編・ギルフォードルート~】)の加筆修正版です。


 Amazonからは出版も取り下げており、Kindleも退会しておりますが、複数の小説投稿サイトで公開していたこともございます。

 ですので、既に、どこかでお読みになられたことがあるという方も、いらっしゃるかもしれません。その点も、どうかご注意くださいませ。


※以前、アルファポリスでも公開しておりましたが、現在は小説家になろうとカクヨムでのみ、公開させていただいております。

 扉の外へ、一歩足を踏み出した瞬間。

 体は空中へ投げ出され、私は真っ逆さまに落下した。


「ひゃあっ!?」

「ピギャッ!!」


 ぼふんっという弾力のある感触と、ふわふわもふもふの肌触り……。


「セバスチャン!」


 初めてこの世界に落ちてきた時と同じだ。

 私はまたしても、セバスチャンの上に落下してしまった。



 慌てて体を起こして立ち上がると、セバスチャンはゆっくりと顔を上げ、


「ピ……? 姫様っ!……ああ、ようございました。ご無事でお戻りになられましたのですなぁ~」


 私の顔を見たとたん、じわりと瞳を(うる)ませる。



 ……う。マズい。

 このままじゃ、まーたメソメソ泣き出しちゃう。



 焦った私は、あえて返事をすることなく、両手でセバスチャンを抱き起こした。

 彼の体についた汚れを払ってから、何気なく辺りを見回す。


「……ありゃ? だいぶ暗くなっちゃってるね。神様と一緒にいた時間って、そんなに長かったっけ?」


 森の中ってこともあるのかも知れないけど、予想以上に薄暗くなってしまっていることに、まず驚いた。


 こりゃーヤバイぞ。早く城に戻らなきゃ。

 この辺り、夜は野盗やらがいて危険だって、何度も注意受けてるし。


 ……んー……。

 戻ったら、神様の話もしてあげよーって思ってたんだけどなぁ。

 それはまた、城でゆっくりするしかなさそう。



 急いで戻ろうと伝えるため、顔を元に戻すと、心配そうにこっちを窺っている、シリルの姿が目に入った。


「シリル!……うわー、シリルも待っててくれたんだ? ごめんねー、長いこと待たせちゃって?」


 謝りつつ近付くと、シリルはふるふると首を横に振った。


「いっ、いいえっ! だ、大丈夫ですっ、平気ですっ! ひ、姫様のためならぼ――っ、い、いえっ、私は、いつまでだって待ってます!」

「……シリル……」



 もう。可愛いことを言ってくれちゃって……。



「ありがとうっ、シリル! 私もシリルのためなら、なんだってしちゃうからねっ」


 キュンとして、思い切り抱き締める。

 シリルはしきりに恐縮して。


「そ――っ、そ、そそっ、そんなっ!……も、ももももったいないお言葉でごっ、ござ――っ、ござざざいまっ、す!」


 どもりまくりののシリルの頭を、いいこいいこするように撫で、


「うんうん。シリルはホントに可愛いねー。……っと、シリルに何かあったら大変だし、そろそろ戻らなきゃ。――ねっ、セバスチャン?」


 言いながら振り返ると、セバスチャンはのんびりと相槌(あいづち)を打つ。


「はい。さようでございますなぁ。急がねば、日が暮れてしまいますし……」


 ――その時だった。

 シリルはハッと息をのみ、私をかばうように片手を横に出して、辺りの様子を窺い出した。


「姫様、急いで私の後ろに!」


 普段はおっとりしているシリルの、聞き慣れない鋭い声に、私はビックリして目を見張る。


「えっ? ど、どーしたのシリル?……なあに? まさか怪しい人影でも――」

「シッ!……申し訳ございません、姫様。しばらくの間、静かにしていてくださいますか?」

「へっ? あ――、う、うん……」


 いつになく深刻な表情のシリルに、私の心臓はドックンと跳ね上がった。



 こんなにピリピリしたシリル、初めて見た……。


 まさか、ホントに?

 ホントに野盗か何かが、どこかに(ひそ)んでたりするの?



「……姫様、セバス様。私が合図を出しましたら、城に向かって全力で走ってください。いいですね?」

「えっ?……で、でも、シリルは?」

「僕は大丈夫です。こう見えても、姫様の護衛役ですよ? 大丈夫です。信じてください」

「シリル……」

「姫様、シリルの指示に従いましょう。――よろしいですな?」


 セバスチャンに(うなが)され、すごく迷いはしたものの……。

 心配ないと言うように、にっこり笑うシリルを見て、私は渋々うなずいた。



 しばらくは三人とも、周囲の様子を窺いながら、その場でじっとしていた。


 シリルが何かの気配を感じたって言うなら。

 私にも、ちょっとくらいは感じることができるんじゃないかと思って、ずっと耳に意識を集中してたんだけど……。


 全然ダメ。

 私には、風に揺れる木々のざわめきと、どこかで聞こえる鳥の声くらいしか、捉えることができなかった。



 シリルってば、普段はほわ~っとしてるのに……。

 やっぱり、天才剣士――って言われてるだけのことは、あるのかもしれない。



 すぐ目の前にある、シリルの華奢(きゃしゃ)な背中を、(こう言っちゃ悪いけど)私は初めて頼もしく感じた。

お読みくださりありがとうございました!


かなり長いお話(書籍4巻分ほどの字数はあります)ですが、どうかよろしくお願いいたします!

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